第225話「疑惑」

放映日:1976/11/5

 

 

ストーリー

滝は城北署で先輩刑事だった倉田良平が射殺される悪夢を見ていた。

1年前(1975年頃)、滝と倉田刑事(二瓶秀雄さん)は拳銃を持ったチンピラ(吉中正一さん)を追跡し、追い詰めた。

チンピラは助けを乞いながら絶叫し、錯乱して倉田を射殺した。

滝はチンピラに発砲し、すぐに倉田に駆け寄った。

午前6時15分頃、滝は悪夢から目を醒ました。

自宅に田口から、矢追町3丁目のスカイマンションで男の変死体が見つかったという電話が入った。

被害者は江本浩三(43歳)で、インスタントコーヒーに毒物を混入され、毒殺されていた。

江本は自分の発行している三流週刊誌のネタで強請りとたかりを行っていたため、恨みを持つ人物が多数いた。

第一発見者は差し回しの運転手で、江本は得意先のゴルフの招待を受けていた。

滝は江本の姿を見て、江本の出版社が城北署管内にあると発言した。

死亡推定時刻は昨夜の午後8時から午後9時、現場に遺されたインスタントコーヒーから検出された薬物と、江本の体内から検出された薬物反応が一致した。

薬物は青酸カリで、独身の江本は夕食後に必ずコーヒーを飲んでいたため、犯人はその習慣を知っていて、インスタントコーヒーの瓶に青酸カリを混入したものと思われた。

江本の部屋からは犯人の指紋は検出されなかった。

田口は江本の部屋に出入りした人物から容疑者を絞ろうとした。

山村は毒殺事件の場合、死亡時刻と犯行時刻に時間のずれがあり、犯人がコーヒーに毒を混入させた時が犯行時間であると述べた。

その場合、江本が存命していた一昨日の夜から昨日の夜までの24時間に江本宅を訪ねた人物が容疑者となった。

滝は城北署で、恐喝と詐欺と文書偽造の容疑者として江本と面識があったが、どれも証拠不十分で釈放となっていた。

藤堂は滝に、田口を連れて城北署に行くように、野崎と島に江本の部屋に入った人物の聞き込みを、山村と石塚に江本を恨んでいた人物のリストアップを命じた。

滝は城北署捜査一係刑事(多田幸男さん)に、江本をずっと追っていた倉田のメモの所在を尋ねた。

倉田は警察手帳とは別の手帳に江本のメモを付けていた。

刑事は倉田夫人の倉田加代が所持しているのではないかと述べた。

滝は田口を連れて倉田宅を訪ね、加代(安田道代さん)と再会した。

加代は昼間だけ古物商の手伝いをしていた。

滝は加代に、倉田の背広の内ポケットにいつも入れていた緑色の手帳の所在を聞いた。

加代は倉田の棺に入れてしまったと答えた。

倉田と加代の息子である倉田一郎(松田洋治さん)が帰宅してきた。

一郎は滝に対して軽蔑の視線を送り、奥に行ってしまった。

捜査員らの聞き込みの末、犯行可能な24時間までの間に江本の部屋を訪ねた人物として、男が5人、女が1人浮上した。

その5人の男のうち、江本出版の社員の証言で3人まで身元が割れたが、いずれも知人や友人関係で容疑者ではなかった。

しかし、女性の方は見当がつかなかった。

女性は午後4時頃に現れ、部屋の番号を知っていたのかまっすぐに江本の部屋を訪れていた。

証言者はビルの管理人と5階の住人の女性だったが、判明しているのは背格好と身なりだけだった。

5階の住人は久留米絣を上品に着こなしていた女性であったと証言していたが、水商売風の女性でないとのことだった。

滝は久留米絣という単語を聞き、加代のことを思い出した。

田口は滝に加代の着物も久留米絣だったと伝えたが、滝は激怒し、聞き込みに向かった。

石塚と田口は古美術「柳川」に赴き、加代に江本の写真を見せた。

加代は江本に心当たりが無かった。

加代は午後4時から午後5時頃までの行動について、日本橋の料亭「福寿」に届け物があり、「柳川」を出たのが午後2時30分、届け物を済ませて近くの大丸デパートで骨董店を見て、帰ったのが午後5時30分と述べた。

滝は「柳川」に来ていなかった。

石塚と田口が「柳川」を後にした頃、滝も「柳川」の近くに到着し、加代を張り込んでいた。

滝は倉田の葬儀の際、加代が緑色の手帳を倉田の副葬品にしていないことをはっきり覚えていた。

加代が「柳川」から出たため、滝は加代を尾行した。

山村は区議会議員立候補者の及川光雄(森幹太さん)のもとを訪れていた。

及川はかつて、1年前に車で人身事故を起こしていたが、被害者に賠償金を支払い、示談を成立させていた。

山村は人身傷害が刑事犯になると指摘し、江本に事故を嗅ぎ付けられ、毎月30万円ずつ強請られていたのではないかと尋ねた。

及川は昨日が江本の金の支払日だったため、江本のマンションに出かけて行ったことを認めた。

及川は江本の部屋に行こうとしてエレベーターを6階で降りたが、背の高い黒沢(阿藤海さん)という男が部屋から飛び出してきたため、顔を見られたくないという理由でそのまま帰って行った。

滝は加代を尾行していたが、加代は帰宅していた。

江本の部屋から飛び出した黒沢は情報屋だった。

滝は藤堂から、黒沢を見つけ次第逮捕するようにという命令を受けた。

加代は滝の尾行に気付いていた。滝は加代が犯人でないと信じていた。

野崎と滝と田口は黒沢を追跡し、格闘の末逮捕した。

黒沢は江本の部屋を訪れた際には、既に江本は死亡していたと主張し、疑われると思って逃走したと伝えた。

滝は黒沢を執拗に疑っていた。

黒沢はゴルフ会員権の出物を江本に知らせるため、江本の部屋を訪れていた。

黒沢は江本の部屋の扉が施錠されていなかったことには違和感を持っていなかった。

黒沢は江本の遺体を発見した直後、そばに100万円があったため、盗んで逃走していた。

黒沢は100万円を2万円ほど使った後、自宅のベッドの下に隠していた。

滝は黒沢の供述に懐疑的だったが、山村は黒沢の供述を信じて捜査を開始した。

山村は黒沢の部屋から98万円を入手したが、封筒はドブ川に捨てられていた。

藤堂は98万円を鑑識に調査させたが、98万円から加代の指紋が検出された。

藤堂は滝に、加代を重要参考人として連行するように命じた。

島と滝は「柳川」に赴き、加代を江本殺害の重要参考人として同行するように宣告し、加代は電話を取りやめて承諾した。

加代は江本と会ったこと、100万円に指紋が付着したことについて否認し、一切黙秘した。

滝は加代に、殺人の容疑者である以上徹底的に追及すると宣言した。

加代は一郎を隣人に預けていた。

滝は出動直前の山村と石塚から、1年前の倉田が殉職して間もない頃、加代が江本に200万円を払っていること、加代の通帳に約1000万円の預金があることを知らされた。

去年の11月10日、加代は銀行の預金から200万円を下ろし、江本の口座に200万円を振り込んでいた。

加代はどうしても事実を答えようとしなかった。

滝は加代の同窓生から、2月4日に加代がホテルニューポートのロビーで江本と会っていることを突き止めていた。

滝は江本との関係を答えようとしない加代に激情し、加代に掴みかかったが、山村と島に制止させられた。

滝は屋上で一服した後、一郎が真実を知っている可能性があるとして、聞き込みに回ろうとしていた。

藤堂は滝に、子供でも心を開かない相手には正直に何も話そうとしないと教え、信じたい相手なら信じたらどうだ、心を開きたい相手なら心を開いたらどうだと説得した。

滝は倉田宅を訪れていた。一郎は滝の質問に知らないとしか答えなかった。

滝は一係室の田口に、張り込みの交代のために倉田宅にすぐ来るように連絡した。

一郎は一係室に戻ろうとする滝に、帰らないように促した。

一郎が滝に冷たかった理由は、滝が、倉田が殉職する前は積極的に遊んでくれたのに、殉職してから遊んでくれなくなったためだった。

滝は倉田の警視総監賞の額の裏から、1枚ページが破かれている手帳を発見した。

手帳には3年間の江本の犯罪容疑の、恐喝と乗っ取りと詐欺、相手の住所と名前が克明に書かれていた。

滝は手帳から、加代より江本殺害の動機を持つものが4,5人いると思っていた。手帳には加代のことが書かれていなかった。

滝は手帳のページを破ったのが倉田ではないかと推測していた。

山村は倉田が犯罪事実を掴んでいて江本を逮捕しなかったことを疑問に思っていたが、滝は江本に対する絶対的な逃げられない証拠を掴むために慎重に動いていたと推理していた。

滝は加代を自宅まで送迎した。滝は手帳で事件が解決することを願っていた。

滝は加代を張り込んでいた。山村と田口は城北医科大学の外科医である松永浩という男から事情聴取を行った。

2年前(1974年頃)、松永の手術後に患者が死亡する事件が起きていたが、松永は死因と手術には因果関係が無いと主張した。

患者の遺族の代理人は江本だった。

病院は非を認めず、患者に一銭も支払っていなかったが、山村は松永が翌月から江本の口座に10万円ずつ振り込んでいることを指摘した。

松永は江本と闇取引を行っていたが、松永には助教授昇進の話があり、2年前の医療ミスが明るみになると、念願の助教授昇進が消えてしまうため、江本は強引に金の値上げを要求していた。

1週間前、薬剤室から微量の青酸カリを持ち出されていた。

松永は観念し、山村と田口に連行された。松永は江本こそ死ぬべきだと怒った。

滝は加代に手帳のおかげで事件が解決したことを伝えたが、江本に払った300万円と預金の1000万円の謎が残っていると述べた。

滝は加代に、手帳のページを破りとった理由の説明を要求した。

滝は手帳に埃が付着していなかったことから、加代が警視総監賞の額の裏に手帳を隠していたと断定した。

1000万円の内訳は倉田の弔慰金と退職金と毎月の恩給であり、加代は自分が死亡した場合、全額を慈善団体に寄付するつもりだった。

加代は倉田が江本から金を貰っていたことを打ち明けた。

加代の弟が会社の金を横領しており、それが露見した場合、倉田が刑事でいられなくなると切羽詰まったとき、江本が倉田に300万円を手渡していた。

倉田は一時的に借りるつもりで300万円に手を出し、いつか返済するつもりでいた。

300万円は、生命保険の中から200万円を返済し、あとの100万円を返済するのに1年かかっていた。

倉田は金を返すことだけを願っていた。

加代は倉田が江本を憎む気持ちに嘘が無く、江本を逮捕するための手帳をつけていたと涙ながらに伝えた。

加代は警察から貰った金を全部返済するつもりだった。

滝は加代に、倉田が立派な刑事であると思っていると告げ、倉田宅を去った。

滝は倉田の墓参りに向かっていた。

 

 

メモ

*スコッチの先輩で、射殺されてしまった倉田刑事について掘り下げられる話。

*スコッチと倉田が犯人を追いかけるが、逆に倉田が犯人に殺害されてしまう回想は、「スコッチ刑事登場!」のものとは異なる。

*今回のスコッチは寝間着でベッドに寝ているが、「鍵のかかった引出し」では、なんと上半身裸で寝ていた。

*後期の「太陽」で暴力団の組長を多く演じる森氏が「太陽」初出演。森氏の選挙ポスターに全く違和感がない。

*「指紋は嘘を吐かない」と堂々と言うスコッチだが、「ニセモノ・ほんもの」で特殊なケースとはいえ、その発言は覆ってしまう。

*一郎こと松田氏の演技が凄い。

*一郎に心を開き、倉田が殉職する前の明るさと優しさを一時的に取り戻すスコッチ。

*加代は江本殺害の犯人ではなかったが、同時に、倉田が汚職刑事であることも判明し、微妙に苦いラストとなった。

*ラストは「彼は立派な刑事だった」を思い出す。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

滝隆一:沖雅也

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

倉田加代:安田道代(現:大楠道代)

及川光雄:森幹太、倉田良平:二瓶秀雄

菊地勇一、倉田一郎:松田洋治、城北署刑事:多田幸男

黒沢:阿藤海(現:阿藤快)、渡辺巌、倉田を射殺した男:吉中正一(現:吉中六)

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、四十物光男

監督:斎藤光正