第219話「誘拐」

放映日:1976/9/24

 

 

ストーリー

宮田明(17歳)(高橋淳さん)は矢追公園前の停留所でバスを降り、レストラン「サンドリア」に入ろうとした寸前、阿部(藤井つとむさん)と柴田(みやけみつるさん)に身柄を取り押さえられた。

明は逃走を試みたが、阿部と柴田に暴行を加えられ、乗用車の車内に押し込められた。

阿部は排水溝の近くに腕時計を落としていた。

牧早苗(高間恭子さん)は歩道橋を通行中に誘拐事件を目撃し、電話ボックスから通報した。

非番の山村は自宅で、養子の洋一と遊んでいた。

山村は藤堂から誘拐事件のことを告げられ、洋一の世話を家政婦に任せて自宅を出た。

山村は現場に到着した。

牧は高校2年生で、明と「サンドリア」で待ち合わせることになっていた。

牧は歩道橋の上から事件を目撃したため、乗用車のナンバーと、阿部と柴田の顔を目撃していなかった。

田口は明が落とした腕時計を拾った。

牧は腕時計が明の物ではないと証言した。

山村と島と滝は宮田の邸宅を訪れ、待機していた。

主人の宮田誠(田中明夫さん)が邸宅に帰還した。

宮田は明が牧をびっくりさせるつもりで実行したと思い、誘拐とは考えていなかった。

山村は宮田に、現場から回収した腕時計を見せた。

山村は宮田夫人の宮田孝子(島田妙子さん)から、宮田の長男の宮田信也(19歳)(南条弘二さん)が似たような腕時計を所持していることを聞いていた。

信也はアパートに一人で住んでいた。

信也は浪人2年目で、邸宅からは通学している予備校が遠距離にあるため、予備校付近のアパートに住んでいた。

信也は今日に予備校を欠席しており、アパートにも不在だった。

山村は現場に信也の腕時計が落ちているのが気になった。

信也は最近予備校にほとんど来ておらず、模擬テストも欠席していた。

野崎は信也の高校時代の親友で、現在は医大生の男から話を聞いていた。

信也と親友は同時に医大を受験しており、親友は合格し、信也は補欠合格だった。

信也は入学金1500万円を払えば入学できる状態だったが、大会社の部長である宮田が払わず、不合格となっていた。

信也は大学に不合格となった頃から性格がおかしくなっていた。

山村と宮田は信也の部屋に入ったが、部屋にはタバコと酒と競馬新聞が置かれ、散乱としていた。

信也はアパートに転居するまでは、酒もタバコもしない性格だった。

山村はゴミ箱から、信也と明が一緒に写った写真を見つけた。

宮田宅に、誘拐犯から宮田の所在を尋ねる電話がかかってきた。

宮田夫人が電話に出たが、誘拐犯は明を誘拐したことを宣告した。

誘拐犯は午後5時までに現金500万円を要求するように伝え、警察に口外しないように警告した。

島は藤堂に誘拐犯から電話が入ってきたことを報告した。

山村は宮田に、明の医大の入学金を払わなかった理由を質問した。

宮田は補欠入学という負い目を信也に背負わせたくなく、どんなときでも実力で堂々と生きてもらいたいという自分の願いからであると返答した。

山村は区役所に行き、信也の戸籍を確認した。

信也の両親は御沢幸之と御沢保子の夫妻となっており、信也は宮田夫妻の養子だった。

山村は洋一を養子にとったことを思い出した。

山村は信也が、宮田が入学金を払わなかったことを恨み、宮田の実子の明を誘拐し、宮田から金を取ろうとしたという可能性を立てた。

宮田家に、2度目の電話が入っていた。

電話の内容は午後6時30分に新宿サブナードの地下駐車場で、宮田一人で金を持ってくるようにというものだった。

午後6時25分、石塚と滝、野崎と田口は地下駐車場にてそれぞれ車で待機していた。

山村の車が地下駐車場に到着した。

石塚は野崎と田口の車の横のマークIIの隣の車を不審に思った。

車は石塚が到着したときには既におり、車の中の帽子の男が誘拐犯である場合、張り込みに気付いていると推測した。

宮田が鞄を持って、地下駐車場に立った。

帽子の男が車を急発進させ、宮田の鞄を強奪したが、石塚達の車によって進路を妨害された。

帽子の男は逃走したが、石塚と滝と田口によって逮捕された。

帽子の男は会ったこともない男に頼まれただけで、何も知らないと叫んだ。

山村は帽子の男に信也の写真を見せたが、依頼主は信也ではなかった。

藤堂は事件を公開捜査に踏み切った。藤堂は山村に帰宅を促した。

信也の母親の保子は亡くなっており、明の母親は孝子だった。

明が誘拐され、犯人が500万円を要求したことが報道された。

滝は張り込み中、信也が宮田の邸宅に戻ってくるのを目撃した。

滝は信也に任意同行を奨め、信也は宮田に話があるためと断られた。

滝は信也を殴った。

山村は信也に、明が誘拐された現場の駐車場に落ちていた腕時計を見せた。

信也は腕時計が私物であることを認め、1週間前にどこかで落としたと述べた。

信也は腕時計を落とした日の行動を忘れていた。

石塚と田口は雀荘の店主に信也の写真を見せた。

信也は先月末まで雀荘を頻繁に訪れ、麻雀仲間の阿部と柴田と麻雀を行っていた。

藤堂は阿部と柴田の徹底的なマークを命じた。

山村は信也に阿部と柴田のことを尋ねた。

信也は阿部と柴田と10日ほど会っておらず、スナックで知り合って何度か麻雀を行っただけなので、2人の住所と職業を知らなかった。

信也は取調室を出ようとしたが、山村に引き止められた。

山村は信也を宮田の邸宅まで送迎した。

信也は宮田のいる書斎に入っていった。信也は宮田に、黙って身代金の500万円を渡すように要求してきた。

宮田は信也に、500万円を渡せば明が無事に戻るのかを質問した。

信也は宮田の質問に答えず、自分のために金を出さなかったのに、明のためなら確実でなくても金を出すのだろうと強く言った。

宮田は信也を殴り、それだから明を誘拐したのかと怒った。

信也は書斎を飛び出した。

宮田は山村に、信也の逮捕を要請した。

信也が宮田の養子であることを知ったのは、大学受験で戸籍抄本を取りに行ったときだったが、そのときは何も言わず、態度にも変化が無かった。

宮田は信也の態度に安堵を覚えていたが、入学金の件から、自分の気持ちを説明しても信也は理解しようとしていなかった。

宮田は信也としばらく別れていた方が良いと思い、アパートを借りさせていた。

宮田は血の違いを恐れ、信也のことが理解できなくなっていた。

信也は街を歩いていたが、滝が信也を尾行していた。

石塚と田口は、パチンコに熱中になっている阿部と柴田を尾行していた。

阿部と柴田は呑気に遊びまわり、人の目を全く気にしていなかった。

藤堂は阿部と柴田が信也と接触するかもしれないとして、石塚と田口に目を離さないように指示した。

信也はバーで酒を飲んでいた。

明の監禁場所である廃ボウリング場では、誘拐犯のリーダーである松山(金井進二さん)が阿部と柴田に電話をかけていた。

阿部と柴田は石塚と田口のマークに気付いていた。

松山は500万円をうまく入手するので、阿部と柴田に知らん顔を通すように命じた。

明は松山に諦めるように言い放ったが、松山は明を拳銃で脅迫してきた。

明は宮田が警察を裏切り、誘拐犯に金を払うようなことは絶対にしないと思っていた。

松山は明を蹴ったことから、明のズボンから電話番号が書かれた手帳が出てきた。

松山は明に全部の電話番号を言うように強要した。

孝子の姉の文江(東郷晴子さん)が宮田の邸宅を訪れた。

松山は宮田の邸宅に電話すると張り込み中の刑事に筒抜けになることから、文江に電話していた。

孝子と文江は松山の要求に従うように懇願し、宮田は承諾した。

宮田は刑事に食事を振る舞わせ、その隙に支度しようとしたが、書斎に山村が入ってきた。

山村は宮田が誘拐事件の性格をよく知っていることから、宮田が地下駐車場に身代金を運ぶとき、手を出すなと言わなかったことを指摘した。

山村は宮田がどんな時でも感情に溺れず、自分の信念どおりに行動できる人と思っていた。

宮田は自分には明しかいないと抗議した。

宮田は信也が自分に500万円を要求した理由を分かっていなかった。

山村は宮田に、信也にとって宮田は唯一の「父親」であるのに、なぜ信也を信じないのかと尋ね、信也が宮田の「子供」であることを強調した

宮田は観念し、要求の内容は自白した。信也はディスコにて座っていた。

阿部と柴田はゲームセンターで遊び歩いていた。

松山の要求は午後9時に、ステーションビルの屋上で金を持っていくことだった。

阿部と柴田は石塚と田口を騙すための囮だった。

藤堂は石塚と滝にステーションビルへの直行を命じた。

ディスコに信也のマークを滝と交代した山村が入った。山村は信也を連れ出した。

ステーションビルの屋上では野崎と石塚と島が待機していたが、宮田が到着した。

山村は信也を叱咤し、明が信也を一人の兄と思っていると説得した。

宮田は信也がぐれ始めたころ、明に養子のことを話していた。

信也は腕時計が現場にあった理由と、誘拐犯の正体を自白していた。

信也は阿部と柴田と松山と麻雀をしていた際、負けて腕時計を取られていた。

阿部は信也に20万円の借金の返済を要求していた。

信也は松山達に、宮田が自分のためなら金を出さないが、明のためなら金を払うと口外していた。

松山達は宮田なら警察に連絡せず、すぐに金を払うと思い、誘拐を実行していた。

信也は事件を直感し、500万円を入手して明を救出しようとしていた。

山村と田口は阿部と柴田を誘拐容疑で連行し、明の居場所を尋問した。

屋上に宮田を指名する電話が入った。要求の内容は角から金網越しに鞄を投げるというものだった。

野崎は2分後に鞄を投げるように指示した。松山は車で待機していた。

野崎と石塚と島、連絡を聞いた滝は裏通りに急行した。

松山は宮田が放り投げた鞄を回収して車に戻り、逃走した。

松山は廃ボウリング場に戻った。松山を追跡していた石塚と島と滝は廃ボウリング場に突入した。

松山は明を射殺しようと拳銃を取り出したが、明は既に山村と信也によって救出されていた。

山村はボウリングのピンを投げて松山を威嚇し、松山の腕に発砲した。

松山は石塚達によって逮捕された。信也と明は絆を取り戻した。

滝は山村の子供が貰い子であることを知らなかった。

 

 

メモ

*今回のサブタイトルは571話のものと同じだが、両話に接点はない。

*山さんの養子の名前が初めて明言されたが、今回のみ「洋一」となっている。

*山さんの主演作で初めて「養子」がテーマとなった作品。

*洋一(隆)は昭和50年(1975年)12月5日(「海に消えたか三億円」放映日)に山さんの養子になったようだ。生年月日は昭和50年9月10日。

*山村高子の生年月日は昭和19年(1944年)6月1日。

*隆の両親は西尾晴夫と西尾ひろみの夫妻と明記されているが、「さらば! 山村刑事」では秋元正久(清水章吾氏)と前夫人との夫妻となっている。

*バーで「スコッチ」と注文するスコッチ。

*「どこの子供だって、一度や二度は親に心配をかけることがあります。そういうとき、その子は、本当は心の底で父親の名前を大声で呼んでいるんです。私はそう思う。」

*「(明が信也を実兄でないと知ったとしても)変わりはしない。それが兄弟というものじゃないか。それが一緒に暮らしてきた家族じゃないか。親子というものじゃないか」と説得する山さん。「山さんとラガー」の黒田、「山村刑事の報酬なき戦い」の友成(両方とも辻萬長氏)も、自分の子供に血の繋がりがないことを恐れていた。

*ラスト、かつて「親と子の条件」のラストでボスが買った靴を洋一(隆)が履けるようになったことが、山さんの口から語られた。

*牧役の高間氏は高見恭子氏の本名。

*今回は「蝶」と同時撮影。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

滝隆一:沖雅也

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

宮田誠:田中明夫

宮田信也:南条弘二、宮田孝子:島田妙子、松山:金井進二、文江:東郷晴子

阿部:藤井つとむ、柴田:みやけみつる、牧早苗:高間恭子(現:高見恭子)、山村家の家政婦:関悦子、宮田明:高橋淳

湯浅順之、石橋幸、鳥井忍、関虎実、小林淳一、上地宝

ノンクレジット 山村洋一(隆):小椋基広

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、鴨井達比古

監督:児玉進