第206話「刑事の妻が死んだ日」

放映日:1976/6/25

 

 

ストーリー

山村は自宅にて、高子(町田祥子さん)と静かな時間を過ごしていた。

常東銀行新宿支店のロビーにて、城東建設経理課長の大島光男(45歳)という男が大金を引き出していた。

銀行内にいた若者(高橋英三郎さん)は曽根隆(21歳)(高木門さん)と仲間(福井友信さん)の車に入り、大島を尾行した。

曽根達は大島が細い路地に入ったところで、車を降りて大島をスパナで殴り殺した。

曽根達は現金を強奪して車に乗る直前、宮田佳子(新海百合子さん)という女に犯行を目撃された。

曽根達は啓子を車で轢こうとしたが、啓子に避けられた。

曽根達は啓子に証言した場合に殺害すると警告した。

曽根は啓子に見覚えがあった。大島の上司(入江正徳さん)によると、被害金額は650万円だった。

給料日で銀行が混雑していたため、犯人を記憶していた者はいなかった。

高子は隆を乳母車に乗せて、街を歩いていた。

乳母車に結び付けた赤い風船が落ちてしまったため、高子は乳母車の車輪のストッパーを下げて風船を取りに来た。

子供が投げたサッカーボールが乳母車のストッパーに当たり、乳母車は急勾配を下り始めた。

高子は風船を捕らえたときに事態に気づき、乳母車を走って追いかけた。

通りがかりの主婦2名が隆の乳母車を止めたが、高子は心臓病の発作で倒れてしまった。

一係室に、高子が城東医科大学附属病院の318号室に搬送されたことが通報された。

藤堂は高子の件を山村に無線連絡しようとしたが、山村は宮田宅で啓子を説得していた。

山村は自分達が到着する前に啓子が何を話そうかあらかじめ決めていたことから、啓子が何者かに脅迫されていると指摘した。

山村は啓子に対し、凶悪な強盗殺人犯である曽根達を野放しにさせないと説得したが、啓子は怯えて信用しなかった。

山村は啓子をどんなことをしても守ると説得し、啓子は曽根を目撃したことを証言した。

宮田宅の前に三上と田口が駆けつけ、田口は高子のことを山村に報告した。

山村は犯人が3名であること、曽根が矢追町5丁目のクリーニング店「市川商会」店員、22から23歳、身長165cmぐらい、長髪で色黒であることを連絡した。

啓子は先月まで現住所のアパートに引っ越すまで矢追町に住んでおり、曽根が何度か御用聞きとして出入りしたことがあるようだった。

藤堂は山村に、啓子のガードを三上と田口に任せ、すぐに病院に行くように命じた。

啓子は宮田が出張で不在ということもあり、怯えていた。

山村は病院からすぐに戻ることを告げ、病院に急行した。

曽根は一昨日から旅行に出ると言って市川商会を休んでいた。

曽根の住所は松川町2-3-8 松川荘アパート3号室だった。山村は石塚の連絡を聞いていた。

病室には明子が見舞いに来ていた。山村は病に苦しむ高子の額の汗を拭いていた。

山村は高子の診療録を見て、城東医大附属病院の所在地が東京都渋谷区松川町1-2-3であることを知った。

山村は病院と松川荘の距離が近いことに気づき、松川荘に直行した。

曽根は自宅を出た直後に山村に見つかり、逃走したが、石塚と島に挟み撃ちにされて逮捕された。

明子は藤堂に、高子の容態が不安定であることを報告し、山村がなぜ高子のそばにいてやらないのかを質問した。

隆は隣人の主婦が預かっている状態だった。

山村は石塚とともに曽根を取り調べていた。

曽根は共犯2名とは一昨日に新宿のゲームセンターで初めて会ったため、住所も名前も知らなかった。

野崎は取り調べを自分に任せ、山村に病院に行くように頼んだ。山村は承諾した。

曽根の共犯2名は、啓子にモンタージュ写真を作らせないため、啓子を殺害しようとしていた。

曽根は共犯2名の人相と背格好を自白したが、取調べを休ませるように懇願した。

山村は曽根に、共犯2名が逮捕されるまで、啓子に気の休まる時間がないことを厳しく言い聞かせた。

山村は宮田宅を張り込んでいる田口と合流した。

田口は新聞に啓子の名前が報道されたことを心配していた。

啓子の夫の宮田一彦(柴田昌さん)が自宅に電話をかけてきた。

宮田は山村に対し、啓子に無理やり証言させたことを抗議した。

宮田は明日の昼まで帰宅できないため、山村に啓子の側を離れないように強要した。

山村と田口は、啓子の職場であるデパートの紳士服売り場を張り込んでいた。

田口が藤堂に連絡している間に、勤務中の啓子宛に、曽根の共犯から脅迫電話がかかってきた。

啓子は取り乱し、外に飛び出した。明子は高子の看病をしていた。

明子は看病に来ない山村を心配していたが、高子は昔から心臓病を患っていたため、山村が自分の看病に来ないことを覚悟していた。

高子の病状が急激に悪化し、意識不明となった。

明子は野崎に、山村を至急連れてくるように電話した。

山村はデパートの屋上にて、啓子に必ず命を守ることを約束した。

曽根の共犯2名が山村と啓子を監視していた。

田口は山村に高子の意識不明のことを伝えたが、山村は高子が自分のことをよく知っているとして気にとめなかった。

啓子は曽根の共犯と目が合い、犯人であると証言した。

田口は曽根の共犯を追跡したが、共犯はエレベーターに乗った。

田口は階段を全速力で降りたが、1階に到着したエレベーターには、曽根の共犯はいなかった。

藤堂は夕刊の締め切り時間がぎりぎりであることを確認し、夕刊に啓子の証言でモンタージュが作成されること、曽根の共犯が指名手配された記事を掲載した。

曽根の共犯は、刑事が啓子から離れた隙に啓子を殺害しようとしていた。

山村と田口は宮田宅の張り込みを続行していた。

田口は石塚を応援に呼ぶ代わりに、高子の看病に行くように要求した。

山村は拳銃や法律という大きな武器を持たされているのに、自分の都合の良いときだけ格好良く武器を振りかざし、都合の悪いときに逃げ出したらどうなると教えた。

山村は啓子の保護を自分の義務と認識していた。

藤堂は山村に部屋に入るように、田口にアパートから500m以上離れて車で待機するように命令した。

藤堂は石塚と島と三上に、宮田のアパートの裏の駐車場に待機するように指示した。

藤堂も駐車場に駆けつけ、捜査員の配置を決めた。

宮田宅に無言電話がかかってきた。山村は犯人の目的が、啓子が自宅にいることを確認することだったと思っていた。

山村は病床の高子を心配し、心の中で励ました。

島から、曽根の共犯が運転する車が、アパートの近くを通過したという報告が入った。

藤堂は捜査員をアパートに接近させた。

曽根の共犯は刑事が張り込んでいないことを確認し、宮田宅に入ろうとしたが、宮田宅から山村が現れた。

曽根の共犯2名は石塚と島と三上と田口に逮捕された。

宮田が夜通し運転でアパートに戻り、啓子と事件解決を安堵した。

藤堂と山村は城東医科大学附属病院に急行したが、高子の病室の前には号泣した明子が待機していた。

高子は藤堂と山村が病院に行く10分前に息を引き取ってしまった。

高子は亡くなる寸前に意識を取り戻し、犯人が逮捕されたのかという言伝を明子に残していた。

山村は高子の遺体と面会した。石塚達が病院に駆けつけた。

藤堂は石塚達に、山村を一人にするように頼んだ。

山村は藤堂に休暇を申請した。

 

 

メモ

*山さんを長らく支えてきた妻の高子が、ついに心臓病で帰らぬ人となってしまう…

*高子の町田氏はセンタークレジット扱い。

*高子が倒れるものの、山さんが事件に熱を入れたせいで病院に行くことができないのは「愛すればこそ」と同じ。そちらは何とか助かった。

*当時は新聞に事件の目撃者の名前が公表されたのだろうか。

*山さんと高子は結婚10年目(1966年に結婚)。

*アッコが全編に渡って、山さんの代わりに高子を見舞った。

*啓子も事件の目撃者では比較的物分かりの良い方。

*山さんのポリシーは「医師の仕事は病人の面倒を見ること、刑事の仕事は善良な市民を凶悪犯から守ること」。山さんの刑事魂は熱く固く、そして大きい。単なる仕事馬鹿にはとても見えない。

*事件を解決し、病院に急行したボスと山さんだったが、そこには号泣したアッコと、10分前に死亡した高子が…

*高子は最後に「犯人は捕まったでしょうか。捕まったんですね。あなたが来てくださらなくても刑事の妻ですもの。覚悟はしておりました。それで、一般市民の方の命が守られたんですものね。私のこの病気のために、あなたに、あなたのお仕事にどれだけ迷惑をかけたことか。すいません。刑事の妻としては失格だったのかもしれません。でも、そんな私を誰よりも優しく労り、愛してくださったあなたに、感謝の気持ちでいっぱいです。本当に幸せでした。坊やをお願いします」と言い残した。高子は最後まで立派な刑事の妻であった。

*この後、高子は「執念」で新撮の回想シーンにて登場。また、今回は「エーデルワイス」にて回想シーンで使われている。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

山村高子:町田祥子

宮田佳子:新海百合子、宮田一彦:柴田昌(後の柴田昌宏)

曽根隆:高木門、曽根の共犯:福井友信、曽根の共犯:高橋英三郎

大島の上司:入江正徳、矢野宏、医師:片山滉、石橋幸、小沢マユミ、工藤美智子

ノンクレジット 山村隆:小椋基広

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

協力:新宿ルミネ、新宿ルミネ店TAKA-Q

 

 

脚本:鴨井達比古、小川英

監督:竹林進