第203話「鳩時計」
放映日:1976/6/4
ストーリー
三上と田口は、資産家未亡人宅に押し込み強盗を行った犯人の新倉を追跡し、格闘の末に逮捕した。
一係室には、時計職人の中丸六太郎(大村崑さん)が、強盗犯として自首していた。山村と野崎は中丸と対応した。
強盗犯は16日の午後11時頃、マンションのベランダより室内に侵入していた。
三上と田口が一係室に入り、午後3時25分に新倉が全面自供したことを報告した。
中丸はしきりに自分が犯人であると主張した。
三上は中丸に時計の修理代を前払いで差し入れた。
一係室に、今日の午後4時30分に新宿駅の西口コインロッカー368で爆弾が爆発するという脅迫電話が入った。
山村は爆弾処理班の出動を要請し、三上と田口は午後4時20分に新宿駅に到着した。
爆弾処理班はまだ到着していなかった。
三上は田口に全員の避難を指示させた後、コインロッカー368番を開け、黒い袋を取り出した。
茶色い紙袋の中にも小箱が入っており、時限爆弾が入っていた。
三上は時限爆弾を解除しようと、コードを1つ1つ抜いて行った。
三上は赤いリード線、黄色いリード線を順に抜いたが、時限爆弾は解除されなかった。
三上は3本目の白いリード線を引き抜き、ようやく時限爆弾を解除することに成功した。
午後4時30分の9秒前だった。
時限爆弾は時限装置こそ精巧に作られていたが、ダイナマイトの部分がボール紙の偽物だった。
山村は犯人が警察を慌てさせるだけなら精巧な時限爆弾を作らず、場所も教えないことから、今回の爆破予告がデモンストレーションで、犯人がもう1度予告すると推測した。
時限装置からは指紋が採取できず、爆破予告の声から年齢や訛りが不明だった。
藤堂は犯人が爆弾マニアか、警察への嫌がらせか脅迫ではないかと考えた。
山村は東京近郊のダイナマイトのチェックに、野崎は容疑者のリストアップに向かった。
午後4時45分頃一係室に、午後5時に多摩川の土木工事現場で爆弾が爆発するという脅迫電話が入った。
野崎と三上は午後4時59分に土木工事現場に到着した。
野崎は諦めようとしたが、三上は爆弾が小屋にあると思い、激走した。
三上は小屋の前で遊んでいる子供を抱き抱え、坂の下に落ちた。小屋は小爆発を起こし、ガラスが破損した。
野崎と三上は小屋の中に入ったが、爆弾は時計と直結した発煙筒だった。
発煙筒の発火には電気ライターを使っており、発火の時間に1秒の狂いもなかったため、野崎は手強い相手ではないかと思った。
1度目の爆破予告と2度目の爆破予告の声は同一犯であり、点火に使われた時限装置はコインロッカーから発見された爆弾と同一のものだった。
中丸が一係室に入り、コインロッカーと土木小屋の時限爆弾を仕掛けたのが2件とも自分であると自首してきた。
中丸はむしゃくしゃして、皆を驚かせようとしたと述べた。
藤堂は犯人が中丸ではない証拠がないとして、中丸を留置するように命じた。
三上は中丸に、1度目の爆破予告のときに、自分が一係室にいたのにどうやって外から電話をかけたのかを質問した。
中丸は質問に答えず、壊れている時計があれば、道具を留置場に放り投げるように頼み、修理すると告げた。
三上は2ヶ月前、七曲署の中庭の時計が、中丸がかつて修理した古い大時計からデジタル時計に変わってから、中丸の自首癖が急増したと直感した。
大時計は署長命令で、藤堂の知らないうちにスクラップ屋に渡されていた。
昨日の午後4時頃、工事現場をうろついていた男が中丸に似ているという情報が入った。
山村は1ヶ月前、郊外の工事現場でダイナマイトが5本盗まれていること、中丸と工事現場に繋がりは無いが、中丸は他の工事現場でダイナマイト工事の経験をしているという情報を得た。
藤堂は中丸を、田口の監視付きで釈放した。
中丸は七曲署の対応を疑問に思ったが、そのまま帰宅した。
三上は帰宅した後、わざと自分の目覚まし時計を床に落とし、破損させた。
中丸は公園で子供相手の野球の監督をしていた。
渡米した中丸の息子は野球好きだった。
中丸は野球のルールを知らなかったため、審判の誤判定で子供と口論になり、公園から去って行った。
三上は破損させた目覚まし時計を中丸の時計修理店に持っていき、修理を依頼していた。
三上は中丸に脅迫されて自首しているのかと尋ねたが、中丸は否定した。
三上は中丸のそばに、田中眼科から処方された薬があることに気づいた。
中丸は三上の目覚まし時計を無料で修理した。中丸は時計の修理を暇つぶしと思っており、他人が廃棄した時計を拾って帰り、修理していることもあった。
三上は中丸が修理中の鳩時計の部品を見て、小学校時代の思い出を語った。
中丸は時計を念入りに製作された独立した生き物と思い込み、昔の職人が一生懸命作った時計を古くなったというだけで、邪険に使われることに怒りと悲しさを感じていた。
三上は中丸に腕時計を見せたとき、中丸が喜んでいたことを思い出していた。
三上は田中眼科に赴き、医師(中江真司さん)と会話した。
医師によると、中丸は職業病で、中丸のように若い頃から目を酷使している人は、年を取ってから視力の減退することが当たり前だった。
医師は中丸に目を使う仕事を辞めるように警告していた。
三上は藤堂に電話をかけ、視力の悪化している中丸が思い詰めているように見えることを連絡し、田口とともに張り込みを続行した。
三上は再び電話をかけ、電話を切るように指示した。
三上は電話が切れる音を聞き、脅迫電話に電話の切れた音が聞こえなかったことを思い出した。
三上は電話をかけ、脅迫電話のときに相手が受話器を置いた音が聞こえたかを尋ねた。
三上は脅迫電話の声が中丸のアリバイ工作ではないかと察知し、電報電話局に向かった。
電話局の局員の話では、自動的にダイヤルが回り、留守番電話に吹き込んであった要件を伝えることは困難だが、プッシュホンであれば3つボタンを押すだけで通話が可能なので、機械に詳しい人なら可能かもしれないというものだった。
三上は局員からプッシュホンと留守番電話を併用している世田谷区の所帯のリストを入手し、捜査した。
田口は中丸時計店を張り込んでいたが、中丸が風呂敷を持って外出した。田口は中丸を尾行した。
中丸は七曲署に入って行った。
三上は犯人を中丸と断定し、中丸の逮捕状を申請した。
鑑識の結果、アリバイ工作に利用したテープはゆっくり正確に喋ったものを早回しして録音したものだった。
中丸の出入りしている時計収集家が1週間、家族旅行に出かけており、その間に中丸に留守番電話のテープ交換を頼んでいた。
山村は中丸の自首が容疑を外すための芝居と思っていた。田口が一係室に入り、中丸の所在を尋ねた。
午後6時50分、一係室に中丸が来ていなかったため、捜査員は七曲署内を捜索したが、中丸は見つからなかった。
裏口から逃げるように出た中丸は何も持っていなかった。
一係室に中丸から三上を指定して電話が入った。
中丸は爆破予告犯が自分であることを認めた。中丸は爆破のとき、現場で三上を偵察し、必死に子供を助けたのを目撃していた。
中丸は母親に買ってもらった古い腕時計を大事にする三上に対し、申し訳ないと思い、最後の計画を教えた。
中丸は七曲署に爆弾を仕掛けており、爆発が午後8時であることを伝えた。
逆探知の結果、中丸は新宿駅西口の公衆電話からかけていたことが判明した。
藤堂は三上以外の捜査員に署内の捜索を命じた。
三上は公衆電話に直行したが、中丸は不在だった。三上は巡回中の警察官に中丸の捜索を命じた。
警察官が新宿西口地下道入口付近で中丸を発見した。
中丸はパトカーを見て逃走したが、別のパトカーとともに取り囲まれたため、わざと倒れ込み、わざと轢かれた。
中丸は爆弾を仕掛けた場所を言おうとしなかったが、動機が老人の言うことを聞いてほしいというものであることを告げた。
中丸は救急車で救急病院に搬送された。
中丸は搬送される途中、七曲署内の大時計がスクラップになってしまったことを情けなく思っていた。
三上は中丸が自殺を図ったものと思い、仕掛けたのはダイナマイトではないと確信していた。
午後7時56分、田口が署長室に不審な時計があることを報告した。三上は署長室に急行し、続けて島、藤堂達が駆けつけた。
署長室に飾られていたのは鳩時計であった。残り1分となり、三上は他の捜査員に退避を命じたが、全員退避しなかった。
午後8時になり、鳩時計から鳩が現れた。
三上は病床の中丸に、病院の壊れている時計を渡した。
署長が鳩時計を気に入り、買い取ることになったため、藤堂は鳩時計の代金を中丸に支払った。
メモ
*大村氏は当時45歳だが、60代後半に見える。
*今回の時限爆弾処理の担当はテキサス。
*アッコがいよいよ可愛くなってきた。
*爆発まであと1分しかなくても、急行し、子供の命を助けるテキサスはまさしくヒーロー。
*テキサスは熊本の小学校時代、鳩時計の鎖を引っ張るのを面白がっていたことがあったという。
*中丸の気持ちは分かるような気がする。私はデジタル時計よりアナログ時計の方が、味があって何となく好き。
*今回は3件とも爆破予告が全て偽物だったため、珍しく凶悪事件は全く起きていない。ダイナマイトの強奪は中丸とは無関係だったよう。
*今回は「ジョーズ探偵の悲しい事件簿」と同時撮影。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
三上順:勝野洋
田口良:宮内淳
野崎太郎:下川辰平
矢島明子:木村理恵
中丸六太郎:大村崑
田中眼科医師:中江真司、高橋芳樹、久本昇
大宮幸悦、新井一夫、荻原紀
石塚誠:竜雷太
島公之:小野寺昭
山村精一:露口茂
脚本:小川英、四十物光男
監督:児玉進