第202話「手紙」

放映日:1976/5/28

 

 

ストーリー

島はアパートの2階の5号室に帰宅し、郵便受けから郵便物を持って行った。

島は手紙の確認の際、自宅を出たときと比べ、机の上の万年筆が横になっていることに違和感を覚えていた。

しかし、扉が施錠されていた上に何も盗まれていなかったため、思い違いと感じていた。

島は家を出たが、何者かが島の自宅に接近していった。

島は非番の日、藤堂から山中の殺人事件の連絡を受け、出動した。

遺体には全身打撲の跡があり、鉄パイプのような鈍器で殴られたものと思われた。

遺体には身元を証明する物が分からなかった。

鑑識の話によると死後約14から15時間、犯行推定時刻は昨日の午後8時前後と思われた。

石塚は遺体の致命傷が後頭部の打撲であるが、致命傷だけは石のようなもので殴られていることに不審感を持った。

島が現場に到着した。島は遺体の身元が三浦則夫であることに気づいた。

島はかつて港北署に在籍していた7年前(1969年頃)、強盗未遂で逮捕したことがあった。

三浦は窃盗と空き巣の常習犯だったが、最近真面目に暮らしていた。

島と三上は三浦の自宅を訪れ、三浦の妻の三浦正子(結城美栄子さん)と会った。

三浦は正子に時々島のことを話し、7年前に島に逮捕されたおかげで、自分が真面目になれたと思っていた。

三浦は島に何度か手紙を送っていた。正子は島と三上から三浦が殺害されたことを聞かされ、号泣した。

正子は三浦を狙っていた者に心当たりが無かった。

野崎はかつて三浦が事務員として勤務していた会社の社長(陶隆司さん)と会った。

三浦は取引先の寄付金を2度横領し、免職になりかけたが、三浦が泣いて謝罪し、横領金を正子がバーで働いて返すと言ったため、保留していた。

三浦は意思が弱く、ギャンブルになると抑制できない性格だった。

島と三浦が最後に出会ったのは4年前(1972年頃)で、以降は手紙を貰うだけだった。

正子が一係室を訪れ、藤堂に360万円を提出した。

正子は今朝に、三浦の遺品を整理中に、三浦の背広の内ポケットから新宿駅のコインロッカーの鍵を見つけていた。

正子は三浦の荷物と思ってコインロッカーから回収したところ、360万円を発見していた。

正子は三浦が大金を持っていると思わず、三浦の勤務先の会社に問い合わせていたが、知らないという返答を得ていた。

正子は三浦が悪事をして大金を得たために殺害されたものと思っていた。

大金の金額は1週間前に城北署管内で発生した、光ストアの強盗事件の強奪金額の360万円と一致していた。

事件の概要は5月20日、3人組の男が店内に侵入し、金庫をこじ開け、翌日に従業員に払われる給料と売上金を強奪しようとした。

しかし、警備員に発見され、360万円だけ強奪して逃走していた。

3人組の1人が三浦と断定され、三浦が360万円を独占しようとして殺害された可能性が出てきた。

島は三浦が大金を独占するとは思えなかった。

三浦は半年前から島に手紙を渡していなかった。

島は昨日、手紙の配達の方が速いのにもかかわらず、郵便受けの中で夕刊の上に新聞が載っているのが気になった。

島は三浦の麻雀仲間(東条甚太さん)から事情聴取を行おうとした際、背広の右ポケットに警察手帳が入っていることが気になった。

三浦の麻雀仲間は抵抗したが、あえなく三上に取り押さえられた。

帰宅した島のもとに、正子から思い出したことがあるという電話が入った。

島は外出する際、扉の上にマッチを挟んでいた。島と正子は喫茶店で会話した。

正子は大金を届けたとき、藤堂から三浦が強盗の一味だったことを聞かされたが、間違いと信じていた。

正子はかつて、三浦が麻雀に負けて払えなくなった金を届けるために、自分が雀荘に行ったことがあった。

正子はそのとき、大きな儲け仕事を三浦に唆した者がいることを思い出した。

正子は男の名前を知らなかったが、左目の下に傷があることを覚えていた。

島は正子に、三浦の殺害犯を逮捕するように懇願された。

三浦の麻雀仲間は山村に取り調べられていた。

三浦の麻雀仲間は自分が強盗に関与していないと主張し、三浦の共犯者が矢追町3丁目のガソリンスタンドに勤務している阿部一郎であることを自白した。

阿部(小林尚臣さん)は島と三上から阿部のことを聞かされた途端に激情し、逃走したが、島と三上に取り押さえられた。

阿部は共犯者の宮崎が三浦宅に家探しに行ったことを自白した。

宮崎は石塚と田口に包囲され、逮捕された。正子は不在だった。

何者かが島宅を鍵で開け、郵便物の内容を確認し、去って行った。

阿部と宮崎は三浦に金を独占されたと思い込み、激怒して、鉄パイプで襲撃していた。

阿部と宮崎は2人とも石を使ったことと殺意については否認した。

三浦(北条清嗣さん)は屋根裏に大金を隠していたが、無くなっていた。

阿部と宮崎は無実を主張する三浦を無視し、山中に連れて行った。

阿部と宮崎は三浦を鉄パイプで殴り付け、逃走した。

三上と田口は阿部と宮崎が三浦の殺害犯と思っていたが、山村は阿部と宮崎の自供に食い違いが無いこと、現場に数メートル這った跡があったことを指摘した。

三浦は阿部と宮崎が逃走した後も生存しており、必死に這ったが、引き返した阿部と宮崎のどちらかに殴り付けられたか、第3の犯人が現場に現れ、三浦にとどめを刺したということが考えられた。

島は帰宅し、マッチが落ちていることから誰かに侵入されたことを確信した。

島は鍵屋を捜査し、自宅の合鍵を作った鍵屋を探し当てた。

鍵屋の主人(久保晶さん)は夫人が鍵を紛失したと困っているのを見て、遠いと渋っていたが、夫人はタクシーで一緒に行くと頼んでいたため、承諾していた。

鍵屋の主人は夫人が買い物籠を持っていたこと、30歳前後、ブラウスにチョッキ、紺のパンタロンを履いていたことを思い出した。

夫人の特徴は正子と一致した。島には正子が、島宅に侵入して手紙を捜索する理由が分からなかった。

島は石塚に、理由を言わずに、三浦宅に行くことを連絡した。

島は三浦宅に直行したが、正子が飛び出してきた。

正子は三浦について伝えたいことがあるため、付近の廃工場に行くようにという匿名の電話が入ったことを伝えた。

正子は島を閉鎖中の工場へ案内した。島は正子に廃工場の前で待機するように指示し、工場へ突入した。

島は工場の入り口の扉に目印として手錠をかけた。島は正子の悲鳴を聞きつけ、冷凍室を捜索していた。

島は正子によって冷凍室のドアを閉められ、監禁させられた。

島は三浦が正子に殺害されたこと、三浦が何かを手紙で伝えようとしていたため、正子が三浦の手紙を島に読まれる前に回収しようとしていると直感した。

島は冷凍室の扉を銃撃したが、どうにもならなかった。

石塚は午前9時20分になっても一係室に来ない島を心配し、島宅に電話をかけたが、島は不在だった。

石塚は島が三浦宅に行ったことを報告した。

山村は第3の犯人が360万円を持ってきて、警察を騙した正子ではないかと怪しんでいた。

山村と三上は三浦宅に電話をかけたが、正子はいなかった。

捜査員は島の捜索のために急行した。島は生存するために息を潜め、床に転がった。

派出所で地図を確認していた野崎と田口のもとに、主婦が現れた。

主婦の息子は廃工場で手錠を発見し、遊んでいたら取れなくなってしまっていた。

野崎は主婦の息子を救出し、山村と石塚と三上が廃工場に到着した。

山村達は島を救出し、救急車に搬送した。

しかし、島は正子が行方不明だと知り、行先を知っているとして、救急車を出た。

正子は島のアパートで待ち伏せし、郵便配達員が島宅に郵便物を入れるのを待った。

正子は島宅に侵入し、三浦が島に宛てた手紙を入手したが、隠れていた島に手を掴まれた。

正子は三浦の良妻になろうと一生懸命働こうとしたが、三浦の博打の悪癖はどうすることもできなかった。

正子には癌で入院している田舎の叔父があり、叔父が3000万円の土地を正子に残すと約束していた。

正子は3000万円を三浦が入手したら、博打で消えること、三浦が離婚しても、警察に逮捕されても、自分に付きまとうことを危惧していた。

正子は三浦のために尽した5年間を取り戻そうとしていた。

正子は三浦が泥酔して帰宅したときを狙い、三浦をガスで殺害しようとしたが、未遂に終わっていた。

三浦は正子の、自分への殺意に気づいて疑い始め、島に手紙を出していた。

正子は自分のものを守りたかっただけと思っており、自分のしたことを悪事と自覚していなかった。

三浦が島に宛てた最後の手紙には、自分が強盗をしたこと、正子のために自首すると書かれていた。

三浦は正子の殺意に気づいていなかった。島は正子を殺人罪で逮捕した。

 

 

メモ

*結城氏は「愛と殺人」でも動機は違うものの、夫を殺害する妻の役を演じている。

*粗暴な知能犯役を得意とする北条氏だが、今回は悲運な役を演じている。

*北条氏は回によってクレジットが「北条清嗣」と「北條清嗣」の2通りあるが、当ブログでは「北条清嗣」表記で統一することとした。

*今回の事件の発端は三浦のギャンブル狂の性格。根っからの悪人で救いようのない性格とは到底思えなかったため、その点を直せれば…

*正子は殿下の自宅への侵入の手口も、監禁の手口もかなり巧妙で悪辣。

*致命傷を与えたのは正子だが、阿部と宮崎のせいで三浦が重傷を負い、死亡するのは時間の問題ともいえそうなので、実質の殺害犯は阿部と宮崎と正子ともいえる。

*廃工場のシーンは暗闇で分かりにくい。

*冷凍室に監禁させられる殿下。廃工場のため、「初恋への殺意」や「生と死の賭け」のような体温低下の心配は無かったが、密室による窒息の危険性があった。

*雰囲気は少し「出口のない迷路」を思い出す部分がある。

*ラスト、ボスの机の物の配置を変えるも、あっさり看破される一同。しかし、ボスはタバコの箱の中身にまでは気づかなかったようだ。

*今回は「厭な奴」と同時撮影。

 

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

三浦正子:結城美栄子

三浦則夫:北条清嗣、阿部一郎:小林尚臣、宮崎:三浦伸一

三浦の麻雀仲間:東条甚太(後の東条貴誉嗣→東条きよし)、三浦の元上司:陶隆司、鍵屋主人:久保晶

安藤純子、野村光絵、野本正晴、秋山京子

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:杉村のぼる(後の杉村升)、小川英

監督:木下亮