第194話「兄妹」
放映日:1976/4/2
ストーリー
午前5時45分頃、当直の三上のもとに死体発見の通報が入り、三上は京浜倉庫東名トラックターミナルに出動した。
女性の死体は停車中のトラックの荷台の中に入っていた。
発見者のトラックターミナル係員(市原清彦さん)は昨日の朝に大阪から夜行で東名トラックターミナルに帰還し、明け方に積荷を降ろす際に死体を発見していた。
死体の女性はバッグの中の定期券で身元が割れ、照会したところ、京都府警に失踪届が出ていた。
死体の女性の名前は町田喜美江といい、京都から東京へバス旅行の途中、昨日の早朝に行方不明になっていた。
バスとトラックは同じ昨日の午前3時頃に浜名湖のサービスエリアで停車しており、町田が失踪したのも同時期だった。
バス旅行のメンバーは昨夜に都内のホテルで一泊し、今日の午前9時に、京染展覧会が開催されている矢追会館に集合し、帰途に就く予定になっていた。
バス旅行の乗客の一覧表には、島の妹の島京子がいた。京子は上京することを島に連絡していなかった。
藤堂は島に、田口とともに矢追会館への直行に、野崎と三上に京都に直行して町田への聞き込みをするように命じた。
島と田口は京染春の新作発表会が開催中の矢追会館に赴き、京子(中田喜子さん)と会った。
島は京子に町田が殺害されたことを告げ、公表されるまで黙秘を通すように命じた。
京子は町田とバスの隣の席だったが、旅行まで町田と会ったことが無かった。
バス旅行の矢追会館の出発時間になり、島は田口を京子に同行させた。島は田口を、急用で京都に行くことになった京子の友人であると旅行社に説明していた。
京子は幼少期に島に甘えていた反動か、兄弟を血が繋がっているだけの関係と割り切っていた。
京子は刑事という職業を、人間の繋がりが入る余地のないものと思っていた。
町田は誰からも愛される性格で、怨恨の線は出ず、所持していた現金も盗まれていなかったため、行きずりの犯行とも思えなかった。
島は町田の写真を見て、町田が身に着けていたスカーフが、自分が京子の誕生日にプレゼントしたものと似ていることに気がついた。
京子が町田に自分のスカーフを貸した可能性があった。京子と町田の身長と体重はほとんど同じで、着ていたコートも似ていた。
暗い上に顔もはっきり見えなかったことから、狙われたのは京子の可能性が出てきた。
藤堂は野崎と三上に乗客のチェックを、山村と石塚と島にバスの追跡を指示した。
バスは牧之原サービスエリアで止まり、休憩時間となった。
田口は定期連絡を行い、藤堂から犯人がバスの乗客ではないかということを聞かされた。
藤堂は田口に京子を乗客から引き離し、乗客をバスの中に乗せてバスを停留させるように命じた。
田口は京子に、町田にスカーフを貸したか尋ねた。京子は強風を理由に町田にスカーフを貸していた。
田口は京子を事務所に避難させ、島が来るまで待機するように指示した。
田口はツアーの引率者(坂口芳貞さん)と乗客にバスの停留を指示し、場が騒然となったが、警察手帳を見せ、事件の捜査であることを明かした。
田口は乗客の一人に展覧会で島と京子と密会していることを指摘されたが、田口は島が京子の兄であること、島がすぐに来ることを発言した。
突如、乗客の一人の武上誠(堀内正美さん)が、スイッチを押すと爆発する仕組みの爆弾を取り出し、30人の乗客を脅迫した。
武上は京子と交際したかったが、京子と間違えて町田に声をかけてしまい、町田が大きな声を出したため、自分から逃げ出そうとしていると思い、殺害していた。
田口は拳銃を取り出したが、爆弾のスイッチを押すと脅迫し、拳銃を渡すように要求した。
田口は拳銃をバスの窓から放り投げた。武上は運転手にバスを出発させ、スピードを出させるように命じた。
藤堂は京子が牧之原サービスエリアの事務所に保護されたが、バスの中に乗客と田口がいるという連絡をした。
武上は染物工場の従業員だった。島は牧之原サービスエリアに急行し、京子と合流した。島はサービスエリアの職員から田口の拳銃を渡された。
県警の橋本刑事(勝部演之さん)が島のもとに現れた。
バスは料金所を突破した。田口は武上から爆弾を奪い取ろうとしたが、失敗に終わった。武上の目的は京子と会話することだった。
浜名湖観光ホテルにて、橋本刑事は京子に事情聴取を行っていた。
京子は武上の働いている染物工場に何度か行ったが、武上に会ったことがないと述べた。
野崎と三上は武上宅を捜索していた。野崎は机の引出しからダイナマイトと時限爆弾を、三上は京子の盗撮写真を発見した。
三上は盗撮写真の1つに、京都府警に捜査本部が置かれている、半年前の女子大生殺人事件の被害者が映っていることに気づいた。
女子大生の死因は絞殺で、町田殺害と同一犯人と見られた。
天竜川近辺の道路で武上からバスを突き落とされた田口は、車を停めようとしていたが、停まる車はいなかった。
田口は付近を通った山村と石塚に合流した。
武上の要求は運転手と乗客30人の解放と引き換えに、午後4時までに京子とジープ1台を高浜駐車場まで送り届けるというものだった。
藤堂は浜名湖観光ホテルの橋本に、武上の要求を連絡した。
藤堂は捜査員が乗客30人救出に懸命になっているため、島に要求を伝えないように頼んだ。
橋本は藤堂の指示通りに島兄妹にこのことを伝えないまま、ホテルを退室した。
バスは高浜駐車場に待機していた。引率者や乗客は自分を降ろすように懇願したが、武上は取り合わなかった。
バスは接近しづらい位置に停車していた。
午後3時25分頃、高浜駐車場に警官隊と機動隊、山村と石塚と田口が到着した。
直後に橋本が到着し、石塚は橋本からライフルを受け取った。
石塚は自分からバスまでの距離では武上を狙うことはできるが、着弾した瞬間に武上が反射的に起爆装置のスイッチを押す可能性があると説明した。
橋本は京子を差し出す方法も提案していたが、石塚と田口は反対した。
現場に島と京子が現れた。島は山村から残り時間が28分しかないことを聞き、事情を京子に話すことを決意した。
島は京子に武上の要求を話し、最後の最後まで命を粗末にせず、諦めるなと忠告した。
午後3時55分、山村が京子をジープに乗せ、バスの横に停車させた。
山村はバスの乗降口付近で、武上に乗客を解放するように要求した。
武上は警察が自分を騙していないと確認してから、乗客を解放すると宣言し、山村は立ち去った。
武上はジープに乗り、京子をジープの助手席に乗せ、乗客を解放した。
武上はジープを発進させ、車で走ることのできない砂丘に入り込んだ。武上は砂丘に逃走するためにジープを用意させていた。
武上は砂丘の中でジープを停車させ、京子に無理心中を頼んだ。京子は武上に自首するように説得した。
砂丘の上空を毎朝新聞のヘリコプターが旋回していた。ヘリコプターには島が乗っていた。
京子は武上に自首を奨め、説得に成功し、爆弾を取り上げた。
ヘリコプターの接近を見た京子はジープから飛び降り、武上から離れたが、武上は京子から爆弾を取り返そうとした。
2人の手から爆弾の離れるのを見た島は、ヘリコプターから飛び降りた。島は武上を取り押さえる最中に、足をジープのステップに強打した。
島は武上と格闘になったが、爆弾を放り投げ、爆破させた後、武上を逮捕した。
京子は武上が更生したら、友達になると約束した。
島のもとに山村と石塚と田口が駆けつけ、武上は橋本により連行された。
島は足を負傷して入院していた。京子は京都に帰ることになった。
京子は島を誤解していたことを謝罪した。京子は「もしも自分が他人だったら一人で行かせたのか」と考え、島が妹だから行けと言えたこと、兄妹という物を初めて理解していた。
メ
モ
*今回のサブタイトルの正しい呼び方は次回予告より「あにいもうと」。
*今回から撮影方式の変更の為か、画質がより鮮明に、クリアになっている。
*中田氏と堀内氏は「真夜中に愛の歌を」でも共演しているが、そちらでは相思相愛の仲だったのに対し、今回は片思いという設定になっている。堀内氏は女子に話しかけられない奥手な性格をリアルに演じるのが上手すぎ。
*「刑事の指に小鳥が……」以来、久々に殿下の妹の京子が登場。役者が三谷文乃氏から中田喜子氏にチェンジし、設定も音楽関係から染物関係に変更された。
*京子は2年前(1974年頃)から京染の勉強のために京都に移住しているという設定だったが、「一枚の名刺」では京子と同居している設定になっており、矛盾している。
*ボンが4人姉弟(姉が3人)の末っ子であることが判明。
*乗客の中では、京子に感謝する関西弁の中年女性と、ボンが殿下と京子と密会したのを指摘するほんこん氏似の中年男性が印象に残った。
*ロケに参加していない長さんとテキサスは京都に行ったことになっているが、恐らく東京のスタジオ撮影と思われる。
*ジープを運転する山さん。
*京子が武上に自首してほしいと頼んだのは本心からではないかと予想。しかし、武上は2人殺人し、バスジャックまで犯している以上、刑の重さは計り知れない。
*殿下のヘリコプターの飛び降りはスタントだとのこと。
*殿下と爆弾魔の武上との砂丘での格闘。殿下は爆弾魔と戦うとき、なぜか難所での格闘になっている。(「ある運命」での泥沼、「島刑事よ、永遠に」での海辺)
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
三上順:勝野洋
田口良:宮内淳
野崎太郎:下川辰平
矢島明子:木村理恵
島京子:中田喜子
武上誠:堀内正美、橋本刑事:勝部演之
市川夏江、バスツアー引率者:坂口芳貞、大原百代
京浜倉庫東名トラックターミナル係員:市原清彦、曽根秀介、酒井郷博、室生芙紗子
石塚誠:竜雷太
島公之:小野寺昭
山村精一:露口茂
協力:晴着センター丸福、弁天島温泉、浜名湖観光ホテル、はとバス
脚本:小川英、四十物光男
監督:竹林進