第192話「2・8・5・6・3」

放映日:1976/3/19

 

 

ストーリー

資材置き場にて、滝田甲造(北原義郎さん)は故買屋(松本敏男さん)と宝石の取引を行っていた。

滝田はアタッシェケースの中身を鑑定書付きの、1億円を下らない宝石と偽り、報酬の5000万円を入手した。

故買屋は念のためにアタッシェケースを開けたが、中身は小石であった。

滝田と故買屋は格闘になり、滝田は故買屋を角材で滅多打ちにして殺害してしまった。

滝田は車で逃走したが、現場に居合わせたトラック運転手が車のナンバープレートを目撃していた。

事件が七曲署捜査一係に通報され、捜査員が出動した。

野崎と田口は、トラック運転手の目撃した車のナンバープレートから、車の割り出しを急いでいた。

滝田は自宅の団地に戻ったが、団地には野崎と田口が待ち構えていた。

滝田は団地の屋上に向かって逃走したが間もなく逮捕された。

一係室に小石の入ったアタッシェケースが押収された。

滝田は小さな貴金属輸入商社の販売係長で、勤務態度は真面目だった。

滝田は現金の入ったアタッシェケースについて完全黙秘を貫いていた。

滝田はアタッシェケースを所持していなかった。

藤堂は滝田がとっさに現金を隠していたものと考えていた。

藤堂は滝田の所持品の手帳に目を通した際、「28563」という謎の数字の走り書きが気になった。

三上は謎の数字がメモ用紙の最後に描かれていたことから、現金の隠し場所ではないかと思っていた。

駐車場にて、出勤直後の藤堂と三上のもとに、滝田の夫人である滝田美也子(奈良岡朋子さん)が尋ねてきた。

美也子は藤堂に滝田との面会を要求したが、藤堂に断られた。

美也子は滝田の事件について知らなかった。

藤堂は喫茶店にて美也子に、滝田が大金を強奪した容疑もかかっていることを告げた。

美也子には謎の数字に覚えが無かった。藤堂は美也子が洗面所に入ってから戻ってこないことから、洗面所を確認したが、美也子はいなかった。

藤堂は喫茶店の1階で美也子のハンドバッグを拾い、2人の男に拉致されかかる美也子を発見した。藤堂は別の男に拳銃を突きつけられた。

三上と田口は午前10時になっても藤堂が帰ってこないことから、藤堂を探しに出かけた。

藤堂と美弥子はアイマスクを付けられたまま、飯田治(信実恭介さん)と部下の大杉徹(戸塚孝さん)と酒井賢太郎(小坂生男さん)により、近日に分譲が開始され、モデルルーム公開中の「ホテルライクマンション キャッスル新宿」の702号室に監禁された。

美弥子は車に押し込められたとき、左足を負傷していた。

702号室のテラスに通じる扉は施錠され、窓も開かず、電話線が切られ、外部との通信が遮断されている状態だった。

藤堂は浴室の状況を確認し、「キャッスル新宿」が無人である状況があまり長くないと断定した。

藤堂は美也子に事件との関わりがあるのではないかと考えたが、そこに治から電話が入ってきた。

治は美也子を人質に七曲署を脅迫する計画だったが、美也子が係長の藤堂と共に監禁されたことを幸運と思い、手帳の謎の数字を尋ねられた。

藤堂は謎の数字を忘れたと言ったが、治は「キャッスル新宿」が完全に無人なのが今日の夕方までであることを伝え、タイムリミットを午後4時に設定した。

電話機は受信専用の電話機だった。藤堂は滝田が隠した大金の場所を聞き出すために、自分と美也子を監禁したと断定し、脱出方法を考えた。

藤堂は部屋中を探し回り、ブレーカーの電源を入れた。藤堂は窓を割り、美也子に大声を出して救助を呼ぼうとしていた。

突然、隣のビルから何者かがスコープ付きのライフルで窓に向けて発砲してきた。藤堂は狙撃者がどこかを特定できなかった。

滝田は山村から美也子が何かあったことを聞かされたが、黙秘を通していた。

藤堂は扉をピッキングで開錠しようとしたが、磁気を通した鍵で施錠されていたために開錠が不可能だった。

1時間経過した頃、再び部屋が狙撃され、電灯が破壊され、美也子は激しく動揺していた。

治から電話が入り、タイムリミットが来れば藤堂と美也子を殺害すること、2人が時限爆弾を抱えていると警告した。

電話中に藤堂は電灯に盗聴器が仕掛けられていることに気づき、盗聴器を破壊した。

藤堂は美也子と共に部屋の捜索をしようとしたが、そこに3度目の電話がかかった。

しかし、電話の主は酔漢であり、酔漢は夫人の初恵を出すように呼びかけた。

藤堂が自分の身分を名乗った直後に、酔漢は電話を切った。午後11時35分頃、一係室は明子を除いて誰もいなかった。

美也子は部屋を捜索中に不審な瓶を発見したが、藤堂は貼り紙からニトログリセリンであると察知した。

ニトログリセリンは僅かな衝撃や摩擦で爆発し、瓶1本で2~3つの部屋を吹き飛ばす威力があった。

藤堂はタイムリミットには治達が部屋を狙撃してニトログリセリンを爆発させるのではないかと推理した。

田口は交番で藤堂が消息を絶った地点を調査していたが、成果が出なかったことを報告した。

交番には藤堂に間違い電話をかけた酔漢が保護されており、藤堂に聞き覚えがあることを田口に知らせた。

藤堂はニトログリセリンを染み込ませた布をドアノブの鍵穴に通した後、ニトログリセリンの瓶を冷蔵庫の製氷機に保管した。

ニトログリセリンは摂氏8度以下になると氷結し、危険度が低下する性質があった。

藤堂が布を鍵穴に通している最中に電話が鳴ったが、藤堂は無視した。

藤堂は布をマッチで燃やし、扉を爆破した。

藤堂と美也子は部屋を脱出しようとしたが、脱出しようとした矢先に美也子が足を痛めて転倒してしまい、さらに通路の先の防火シャッターが閉まろうとしていた。

藤堂はシャッターを開けようとしたが、失敗してしまった。

七曲署捜査一係の捜査員は酔漢の自宅の電話番号によく似た番号をリストアップして調査することにした。

山村は石塚と島と三上に電話番号の家を足で捜索するように、野崎と田口に滝田の自宅に向かうように命じた。

山村は滝田が謎の番号をメモしたのが野崎に追跡されていたときしかないと思っていた。

野崎と田口は滝田が団地の行き止まりに逃げたとき、何かを隠し、メモに数字を書き写したものと直感した。

山村と明子は手分けして電話番号を1件1件かけていた。

治から藤堂に電話が入り、メモの内容を尋ねられたが、藤堂はそれでも黙秘を通した。

治からニトログリセリンの瓶が1本ではないという警告が入った。藤堂は鍵で通風孔を開けたが、中の木箱にはニトログリセリンの瓶が10本入っていた。

藤堂は合計3つの木箱をそっと取り出した。藤堂は木箱の中からニトログリセリンの瓶を1本取り出し、蓋を開けて匂いを嗅いだが、瓶の中身はただの水だった。

藤堂は木箱の中に本物が紛れていると推測した。突如、部屋に暖房が入った。

ニトログリセリンは温度が上がると危険な性質があることから、藤堂は木箱を冷蔵庫に入れた。

野崎と田口は滝田の団地を調査していたが、ダストシュートが開いていることに気づき、下から東都貸金庫のトランクルーム預かり証を発見した。

藤堂はニトログリセリンと偽物を仕分けていたが、仕分け中に突然電話が入った。電話は明子がかけていたものだった。

美也子は治達に貸金庫の番号を速く教えるように取り乱し、治に電話をかけようとしたが、失敗した。

午後3時30分になり、暖房も止まり、藤堂は殺害しても得にならないことから、治達が犯行を諦めるのではないかと思った。

そこに美也子は治達が犯行を諦めないと宣告し、ニトログリセリンの瓶を持って、藤堂に滝田のメモの数字を教えるように脅迫した。

滝田夫妻は中年になっても夫婦共稼ぎでやっとの思いで、団地生活になったが、近所の人々がマイホームを建てて引っ越し、自分達がいくら働いてもその夢を持てないことに怒りを覚えていた。

藤堂は謎の数字「28563」を自白した。石塚と三上は「キャッスル新宿」に向かおうとしていた。

通路の防火シャッターが上がり、藤堂と美也子はライフルを携えた治と対面した。治は美也子の弟で、うだつの上がらない医大の事務員だった。

大杉と酒井は守衛室で殺害されていた。藤堂は治と美也子に車に乗せられた。

石塚と三上は一足違いで「キャッスル新宿」に到着し、守衛室で大杉と酒井の射殺遺体を確認した。

治達は東都貸金庫トランクルームの地下駐車場に直行した。

治はトランクルームに入ったが、トランクルームには既に大金を回収した野崎と島と田口が待機していた。

治は逮捕された。美也子は駐車場に出てきた山村と田口の姿を見て、刑事であることを察知し、車を降りた。

美也子はニトログリセリンを見せ、治の釈放と金の引き渡しを要求した。

野崎と島が美也子に接近し、石塚と三上が地下駐車場に到着した。

藤堂は美也子に、瓶を落としたら殺人犯になってしまうとして、犯罪者として死亡するか、生きて人生をやり直すかの選択を委ねた。

藤堂は美也子に接近し、美也子からニトログリセリンの瓶を取り上げた。

藤堂はニトログリセリンの瓶を落としたが、中身は水だった。

藤堂は瓶の中身をすり替えたのは、午後4時になって治達が部屋に入り、ニトログリセリンを使用すると考えたからだった。

藤堂は美也子が自分の正体を明かすまで、美也子の本性に気づいていなかった。

藤堂は自分が見事に騙され、女性を怖いと思ったのは初めてだった。

藤堂は一係捜査員が28563の番号に気づいたと思い、美也子に番号を教えていた。

 

 

メモ

*後に「太陽にほえろ! PART2」で篁係長を演じる奈良岡朋子氏が出演。奈良岡氏は石原裕次郎氏が最も尊敬する女優であったという。「太陽」内での石原氏と奈良岡氏の競演は入れ違いだったため、今回のみとなる。

*「人形の部屋」、「冬の女」に続き、「良い人を装った女性」に騙される一係の刑事。ボス曰く、人生で初めて女性に見事に騙され、女性の怖さを実感したという。

*奈良岡氏演じる滝田美也子の弟が「オサム」。偶然なのだろうが、PART2関連で因縁めいたものを感じる。

*石原氏が台詞を噛んでいる。

*なぜかニトログリセリンに関してやたら詳しいボス。爆発物処理の免許を持っているのだろうか?

*密室サスペンスとして非常に面白い出来となっている。

*ニトログリセリンを浴槽から流すということは出来なかったのかな?

*葬儀屋に電話をかけ、縁起でもないと思うアッコ。「俺の血をとれ!」にも似たようなシーンがあった。

*ボスが脂汗をかいている。

*サブタイトルの「28563」は貸金庫の番号だった。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

田口良:宮内淳

野崎太郎:下川辰平

 

 

矢島明子:木村理恵

滝田美也子:奈良岡朋子

滝田甲造:北原義郎、飯田治:信実恭介(後の信実一徳)

平田守、故買屋:松本敏男、大杉徹:戸塚孝、酒井賢太郎:小坂生男

 

 

石塚誠:竜雷太

島公之:小野寺昭

山村精一:露口茂

 

 

脚本:中村勝行、小川英

監督:児玉進