第154話「自首」

放映日:1975/6/27

 

 

ストーリー

午前3時、田川幸三(前田吟さん)という男がサラリーマンを棒で袋叩きにし、追い剥ぎをした。

田川は3丁目の交差点を歩行中にぶつかって転倒させてしまった少女を介抱し、ガムを与えた。偶然に車中の島が目撃していた。

野崎と石塚と三上は、追い剥ぎ事件の現場に急行していた。事件の被害者の命に別状は無かった。

藤堂は強盗犯の狙いが衣服や靴であることに疑問を持った。

西署から、5年前(1970年頃)に西署で逮捕した田川という殺人犯が、昨日の午前12時頃に甲府の刑務所を脱獄しているという連絡が入っていた。

田川の住所は七曲署管内だった。

田川の事件は身代わり自首である可能性があった。

西署では、田川が囚人服に裸足のままだったため、甲府管内で逮捕されると踏んでいた。

島は田川の前科者カードを見て、今朝に少女にガムを与えた男であることを思い出した。

野崎と島は代々木病院に急行し、盗まれた背広と田川の背広が一致するという結果を得た。

藤堂は野崎と島に、3丁目をパトロールするように命じた。

島は田川が少女に接したときの人の良さそうな顔が忘れられなかった。

山村は田川の実家を訪れていたが、実家には母親(原ひさ子さん)と娘しかいなかった。

田川の夫人の田川明子は、田川の元兄貴分の大沢と1丁目のバー「桂」2階に同棲し、店を手伝い、娘を田川の母親に預けていた。

山村は田川の母親と娘を尾行し、石塚と三上はチンピラに聞き込んでいた。

野崎と島は「桂」を探し当て、2階に明子(真山知子さん)がいるのを発見した。

野崎と島は外出した明子を尾行した。

明子はタバコ屋で島に気づいた。

明子はスーパーマーケットで買い物中に、待機していた田川を発見した。

田川は明子から大沢の居場所を聞き出そうとしていた。

明子は田川の母親が急病になってしまい、大沢から借金をして病院の紹介をもらっていた。

大沢は田川の脱獄のニュースを見て、黙って逃走したため、明子は大沢の居場所を知らなかった。

田川は大沢を殺害しようとしていた。

島は単独でスーパーマーケットに入り、田川を発見した。

明子は買い物カゴを落として島の追跡を妨害させ、その隙に田川は逃走した。

島は田川を追跡し、田川はビルに逃げ込んだ。

島は一時的に田川を見失ったが、階段を駆け下りる音に気づき、地下のボイラー室に入った。

田川はナイフを出した。

島は3丁目の交差点で田川を転んだ少女を救出したところを見たということを伝えた。

田川は少女に同い年ぐらいの娘を思い出しただけだと答えた。

島は田川を逮捕しようとしたが、ナイフを振り回して抵抗した田川に左腕を刺されてしまった。

同時期にビルで火災が発生して非常ベルが鳴り出し、島は退避しようとしたが、田川に妨害された。

ビルの警備員が防火シャッターを閉じたことで、島と田川は閉じ込められてしまった。

島は自分と田川の存在を呼びかけようとしたが、田川は逮捕されたくないとして島をボイラー室に連れ戻した。田川は休戦体制をとり、島は自分の傷を治療した。

藤堂は島が連絡を絶って2時間になることを疑問に思い、捜査員に島と田川の情報を集めさせた。

山村は一係室に、拾い屋の鉄(木田三千雄さん)という老人を連れてきた。鉄は昨夜に矢追公園のゴミ箱から拾った、田川の囚人服を着ていた。

鉄には七曲署の作業着が進呈されることになったが、山村は囚人服の後ろに葡萄のシミが付着しているのが気になった。藤堂は、田川が甲府で葡萄を運送する深夜便のトラックに乗って東京に行ったものと断定した。

石塚が島と田川の目撃者を発見した。島は寝ている田川からナイフを奪おうとしたが、服役中に足音に敏感になっていた田川が起きてしまい失敗に終わった。

ビルの火災が鎮火したことで、田川は島を殺害してからビルを脱出しようとしていたが、ビル火災の煙が逆流してダクトが爆発し、煙が充満してきた。

煙には有毒ガスが含まれていたため、島はダクトを塞ぐように命じた。田川は島を手伝い、踏み台を与えた。島はダクトに物を詰めて、煙の噴出を止めた。

山村は、田川に脅迫されたトラックの運転手(和久井節緒さん)を探し出した。運転手は田川が「自分が殺人をしたことはないが、逆らう者は殺す」と脅していたことを思い出した。

5年前の殺人事件の犯人が大沢で、田川が身代わり犯人であることが断定された。石塚と三上はビルを片っ端から捜索していた。

島は防火シャッターを叩き続けてシャッターを開けさせようとしていた。島は田川と格闘したが、腕を負傷していたために田川に叩きのめされた。

田川は罪人がいつも陰湿な気分になっていると思ったら大間違いで、これほど気楽なものはないと語り、大沢を殺害すると予告した。

田川は煙のガスの有毒物質で体調を崩していた。当日は日曜日で、明日は月曜日だが休日であり、2日続きの連休なので、シャッターが開くのは2日後になりそうであった。

島は田川を説得しようとしたが、田川は島を殺害しようとしていた。田川は島が拳銃を持っていながら使わなかったことに驚き、号泣した。島は田川を悪人と思っておらず、拳銃を使用したくなかったと伝えた。

島はシャッターを叩き続けた。警備員により島と田川が救出され、ビルに藤堂たちが駆けつけた。

島は田川のおかげで自分が助かったこと、ビルに入ってから田川が自首してきたことと伝えた。

藤堂は大沢を指名手配した。ビルの前に明子が来ていた。

田川は島に一礼してパトカーに乗った。

 

 

メモ

*殿下の優しい一面が発揮された作品。田川がどんなに悪党ぶろうが、田川の心優しい一面をひたすらに信じ、不利な状況に追い込まれようが拳銃を使わなかった。何となく「護送」の原形になった作品のようにも思える。

*長さんのサングラス姿が似合っていない。

*刑事と犯人が脱出できない密室で四苦八苦するシチュエーションは「勝利者」、「不良少年」、「生と死の賭け」にもある。

*ボスがラーメンを食べている。

*叩きのめされる殿下。殿下は受難編が多いが、この直後にも「回転木馬の女」で犯人に痛めつけられてしまう。

*いつの間にか救出されている殿下と田川。殿下は日曜日だからシャッターは開かないと諦めていたが、どうやって気づいたのだろうか?

*大沢は本編に登場せず、指名手配されることになって本編が終了した。

*今回は無音エンド。この後も「朝顔」と「死」などでも使われる。(3作とも児玉監督作品)

*OPのハイライトシーンには明子が一係室を訪れるカットがあるが、本編ではカット。

*なぜか予告のBGMがクラシックで、サイレンが鳴る不気味なものに。シャッターが閉まるカットも劇中とは異なる。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

島公之:小野寺昭

野崎太郎:下川辰平

 

 

田川幸三:前田吟

田川明子:真山知子、拾い屋の鉄:木田三千雄

亀井三郎、朝野和信、トラック運転手:和久井節緒

大宮幸悦、塚田未人、桜井奈美、長藤尚子

ノンクレジット 田川の母親:原ひさ子

 

 

石塚誠:竜雷太

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、大山のぶ代

監督:児玉進