第150話「わかれ」

放映日:1975/5/30

 

 

ストーリー

島はレストランを訪れ、かつての恋人である寺岡理江(真野響子さん)のピアノの演奏を聞いていた。

寺岡理江がレストランでピアノを演奏して第一日目、島と三上はレストランのチンピラ(吉中正一さん)を逮捕した。

寺岡は帰り際に店の前で待っていた島と会った。

島は寺岡に、危険な男なのですぐに逮捕しなければならなかったことを話し、寺岡の演奏を妨害してしまったことを謝罪した。

寺岡は、ピアニストである自分の気持ちを本気で考える島に、新鮮な驚きを感じていた。

島と寺岡はデートを重ねていた。

寺岡は島にドレスの仮縫いを手伝わせるために、洋装店を訪れた。

店主の高畑幸三(新田昌玄さん)はパリのファッションコンクールでグランプリを取っており、ファッションの有望株だった。

島は高畑のアシスタントデザイナーの西伶子(三条泰子さん)と顔を合わせたが、互いに驚きを隠せなかった。

西は寺岡に島のことを尋ね、寺岡から、島が自分の婚約者であると返された。

西はパリで高畑と知り合っていた。

寺岡は島と別れた後、忘れたイヤリングを回収するために再び洋装店を訪れた。

寺岡は高畑と会い、西の所在を尋ねたが、西は何者かからの電話により、「ニッシン」という喫茶店で待機していた。

寺岡は洋装店を出る際、沢田一郎(38歳)(矢野宣さん)という男に尾行された。

寺岡は「ニッシン」を訪れたが、西は島と話していた。

寺岡の前に沢田が再び現れた。

沢田は週刊事実の記者であり、寺岡から西について質問しようとしていた。

寺岡は何も知らないと言って沢田から離れようとしたが、沢田に島について質問された。

沢田は西を、殺人を平気でする女と評した。

沢田は突然現れた赤いコロナマークIIに乗り、寺岡と別れた。

寺岡は一係室を訪れ、島の所在を尋ねたが、島が外出中で不在だった。

一係室に野崎と石塚と島と三上が帰還した。

島と寺岡は向かいのスナックで会話をした。

寺岡はつまらない用事について聞こうとしたが、島は話そうとしなかった。

スナックに、藤堂から矢追町1丁目の高田荘で殺人事件発生の通報が入り、島はスナックを出た。

死亡していたのは沢田であり、死因は睡眠薬の飲み過ぎであった。

ドアのノブにも睡眠薬の瓶にも指紋が付着しておらず、週刊事実では沢田が面白いネタを掴んで張り切っていたという情報があったため、他殺の疑いが濃厚だった。

週刊事実の編集長は、沢田が秘密主義で、単独で執拗に取材する性格だったために沢田が何を探そうとしていたかを知らなかった。

寺岡は洋装店を訪れたが、西が不在だった。高畑によると、西はコロナマークIIを所有していた。

島は週刊事実社のゴミ箱から、大友道子が西と同一人物であることを示した紙を発見した。

西の本名である大友は5年前(1970年頃)、ドラマーの夫を殺害して逮捕されていた。

大友の夫は強度の覚醒剤中毒者であり、覚醒剤が切れると殺人も躊躇わなくなるほど狂暴になり、拳銃を振り回すようになった。

大友は夫に殺人をさせないために射殺していた。

情状酌量により、大友は懲役2年の実刑に服していた。

高畑は大友の過去を知らなかった。

大友は高畑のデザインがグランプリを獲得したとき、自分の過去が露見した場合、高畑の名声に傷がつくと思っていた。

大友は喫茶店で島と話したとき、高畑の発表会を成功させるために、自分のことを話さないように懇願していた。

島は大友が高畑を愛していると思っていた。

島は洋装店を訪れたが、高畑も西も不在だった。

高畑は伊豆に狩猟のために出かけていた。

島は店員から、赤いコロナマークIIが西の私物であることを確認した。

寺岡はニュースで自分を尾行した男が沢田であることを確認した。

寺岡は一係室に、沢田の死が他殺ではないかということ、沢田がコロナマークIIに乗った女性と一緒にどこかへ行ったことを電話した。

沢田と同じ理由で寺岡が殺害される可能性が出てきたため、島はレストランに急行した。

寺岡は帰宅したが、自宅に不審な無音電話が数回かかってきた。

島はレストランから寺岡宅に電話しようとしたが、寺岡は警戒して電話に出なかった。

寺岡は両親がヨーロッパ旅行中であったため、独り身の状態だった。

寺岡の家が停電状態になった。

山村は島に、高畑がグランプリを受賞したデザインが西の独特のデザインであるという情報を連絡した。

寺岡は西が持っている自分のイヤリングを発見した。

寺岡宅に電話がかかり、電話の主を西だと思って激情したが、主は藤堂だった。

藤堂は寺岡に、島と西の関係を説明した。

寺岡は自分の行いを反省した。

寺岡は自宅の呼び鈴が鳴り、島だと思って扉を開けたが、入ってきたのは西だった。

西は寺岡に猟銃を突きつけ、高畑が寺岡を殺害すると宣告した。

西は高畑に殺人をさせないために、寺岡に家を出て行くように強要したが、高畑がナイフを持って寺岡宅に侵入し、寺岡を人質に取った。

高畑は、グランプリが前科者の大友の作品だと露見したくないために、大友を沢田の殺人者に仕立て、寺岡を偽装自殺させるつもりだった。

高畑は西に山荘で休養するように言っていた。

沢田を車に乗せたのは、大友の髪型に似た鬘を被った高畑だった。

大友は高畑を救うために猟銃の引金を引こうとしていた。

寺岡宅に島と三上が駆けつけた。

島は高畑を庇い、西を説得した。

大友は一度銃口を降ろした。

島は高畑を逮捕したが、西が自分に向けて発砲してしまった。

西は人を愛する自信を失ったと言い残し、死亡した。

寺岡は島と別れの乾杯を交わした。

寺岡は島を今でも愛していた。

寺岡は島を刑事と認識し、島と自分が本当に信じあえていたら、西が死なずに済んだと後悔した。

 

 

メモ

*殿下の2番目の恋人、寺岡理恵が登場。しかし、事件の影響で訣別。

*物語の始まりは、既に殿下と寺岡は訣別して10日後のことであり、事件は殿下と寺岡の回想シーンという異色の構成となっている。

*シリーズ中でも特に幻想的な雰囲気が漂う回。寺岡が演奏する曲は小野寺氏の持ち歌である「風よ」と「白いページ」。「白いページ」はこの後も「回転木馬の女」でそのまま流れ、「バラの好きな君へ」と「虹」の予告編でピアノバージョンが流れている。

*人間関係が複雑な回。大友(西)は愛した男に殺人を犯させたくないために殺人を行うという女性であり、最後は人を愛していく自信を失い、自殺してしまった。

*ラストに「風よ」が流れ、まるで2時間サスペンスのエンディングのような雰囲気に。

*予告編では殿下がギターを持って歌うシーンがあるが、劇中では未使用。

 

キャスト、スタッフ(敬称略)

藤堂俊介:石原裕次郎

三上順:勝野洋

島公之:小野寺昭

野崎太郎:下川辰平

 

 

寺岡理江:真野響子

高畑幸三:新田昌玄

大友道子 / 西伶子:三条泰子

沢田一郎:矢野宣、芦葉京子、峰恵研、チンピラ:吉中正一(現:吉中六)

 

 

石塚誠:竜雷太

山村精一:露口茂

 

 

脚本:小川英、四十物光男

監督:竹林進