第100話「燃える男たち」
放映日:1974/6/14
ストーリー
白昼、政財界を網羅したと言われる豪勢な結婚披露宴会場の控室にて、男2人(清水紘治さん、手塚しげおさん)が乱入した。
男2人は滝川家の令嬢である滝川由利子と、美容師の池野弘子(嘉手納清美さん)を人質にとった。
捜査本部は本庁に設置されたが、極秘裏に捜査員を人質救出に当たらせるつもりだった。
警察幹部(鈴木瑞穂さん)は藤堂を呼んだ。
幹部は極秘裏に捜査員を動かして人質の救出にあたろうとしていた。
しかしその捜査員は捜査本部と関係なく独断で行動したとみなされるため、いかなる結果が出てもその個人が責任をとらなければならなかった。
藤堂は自分の独断で行動すると宣言した。
捜査本部長の北見警視だけはこのことを知っているため、必要な情報を随時提供してくれるはずだとして、藤堂が連絡係を担当することにした。
誘拐犯の目的は明日の正午までに、米ドルで500万ドル(15億円)の用意と、逮捕された爆破犯の丸山と土井の釈放であった。
丸山と土井は1ヶ月前に七曲署捜査一係が逮捕したデパート爆破犯人であった。
捜査一係は丸山と土井を過激派と全く繋がりのない欲求不満型の犯人であると結論付けた。
丸山と土井の資料を貰いに北見警視(垂水悟郎さん)が一係室に入った。
北見は、自分が事件に一切関係ないと断言した。
藤堂は山村と島に丸山と土井の捜査を、石塚に過激派の調査を、柴田と伸子に2人の被害者の捜査を命じた。
藤堂は野崎を本庁の情報キャッチ係に任命した。
山村と島は拘置所にて丸山(西田健さん)と土井(遠藤征慈さん)の面会に向かった。
土井は来週の公判で、証拠不十分の無罪と主張するつもりだった。
山村は丸山に仲間の逮捕が時間の問題と告げたが、土井は激怒して面会を中止した。
山村は2人を、気の小さな人物で何か隠していればすぐに表情に出るとして、仲間もいないし釈放要求のことも知らないと察した。
空き地にて、誘拐犯の捨てた盗難車が発見された。
北見は盗難車を調査中、座席にて時限爆弾を発見し、捜査員に伏せろと命じた。
車は爆発し、重傷者は病院に搬送された。
北見は駆けつけた藤堂に、現場の本部捜査員以外の立ち入りを禁じた、
爆弾が丸山と土井の使用した鉄パイプ爆弾とは全く違う缶爆弾であり、誘拐犯は丸山と土井とは全く関係のない連中である可能性が出た。
矢追町1丁目の松田ビルの地下駐車場に誘拐犯らしき男が住み着いているという密告が入り、山村と島が向かった。
山村は島に撃ち合いにならないために、銃の使用を禁じた。
料金所に人はいなかったが、島がクラクションを鳴らしたところ、誘拐犯の一人が料金所に入ってきた。
山村と島は車を停車させた。
山村は誰もいないのに部屋を消灯させる者がいないとして、人質が料金所内にいると断定した。
山村は423に駐車している車の中に誘拐犯の一人を発見した。捜査本部に野崎が滞在していた。
藤堂は野崎に誘拐犯の居場所が掴めたことを連絡したが、北見警視は野崎を不審に思った。
野崎は松田ビルに到着し、藤堂たちはビルの前で作戦会議を行った。
藤堂は誘拐犯を管理人室から追い出さない限り救出が難しいと思い、CO消火器の使用を提案した。
CO消火器は一酸化炭素ガスの消火器で、警報ベルが鳴ったらすぐに飛び出さないと、消火するが人間が危ないというものであった。
山村と島が中に入り、ベルだけ鳴ってガスが噴出しないように消火器のコックを捻るというものだった。
山村と島は撃ち合いになるとして藤堂に拳銃を預けた。
松田ビルの前に無線を傍受していた北見と機動隊が到着した。
柴田は無理やり事件を自分に引き受けようとする北見に抗議した。
北見は機動隊を使って完全包囲し、自分が中に入って誘拐犯を説得するという作戦を立てていた。
山村と島が消火器のコックを捻ろうとした矢先に、北見の車が駐車場に強引に突入し、続いて藤堂たちも入った。
車で待機していた誘拐犯が北見に発砲し、もう一人の誘拐犯が二人の人質に拳銃を突きつけて姿を見せた。
車で待機していた誘拐犯は島の手錠を見て刑事と気づき、島に発砲した。
島は腹を撃たれ、重傷を負った。
石塚は藤堂の命令で強引に島のいる場所まで突っ込み、島を救出した。
誘拐犯が人質の女性に銃を向けて警告したため、北見たちは銃を捨てた。
誘拐犯は北見の要求を無視し、人質を連れて逃走した。
北見警視は本庁と連絡を取っていればこのようなことにならなかったと注意した。
柴田は猛烈に抗議したが、藤堂に殴られた。
山村は拳銃の未所持を激しく後悔した。
柴田も病院に来ていた。
テレビのニュースでは、人質救出の失敗が七曲署の抜け駆け捜査の影響と報道されていた。
柴田は島を激しく心配していた。
野崎と柴田は北見警視から、誘拐犯から由利子が池野とともに釈放されたということを聞かされた。
滝川が2億円を誘拐犯の指定通りに払ったためであった。
北見は誘拐犯の逮捕が時間の問題だとして、事件の解決を安堵した。
野崎は藤堂の助言から聞き込みを再開した。
百合子と池野はインタビューにて、誘拐犯より警察の方が怖かったと答えた。
伸子は池野が原宿のスナックにて、誘拐犯と度々会っているという情報を得た。
滝川邸では、由利子と夫人(上野綾子さん)が池野に拳銃を向けられ、誘拐犯2人に侵入されていた。
池野は誘拐犯との共犯だった。
誘拐犯は滝川(見明凡太朗さん)に対し、2億円で誤魔化そうしたために、滝川邸にいるもの全員を人質にすることを提案したと述べた。
滝川が役人で、由利子の夫の父親が政界の大物であるため、誘拐犯は15億円が入手できると確信していた。
藤堂が滝川邸に入ったが、時既に遅しだった。
誘拐犯は警察が人命優先の方針であるため、自分たちの勝利を豪語した。
藤堂は自分が人質になることを提案したが、誘拐犯は拒否し、要求を伝えた。
要求は爆破犯2人の釈放と3000万ドル(90億円)の支払い、ジェット旅客機で指定国まで人質を同行するもので、期限は明日午前10時であった。
石塚は焼鳥屋にいる柴田に、明日午前6時にマンションプレジデントに集合するという連絡をした。
島はまだ危険な状態が続いていた。
柴田は島が死亡したら完全な犬死になってしまうと心配した。
焼鳥屋に山村も入店し、動揺するようだったら刑事を辞めるように宣告した。
山村は藤堂がこの指令を引き受けたのが、人間一人の命の重さに比べれば全てどうでもいいことだからと伝えた。
山村は北見も藤堂と同じ生粋の刑事でないかと考えていた。
機動隊と警官が滝川邸を包囲していた。
藤堂は警察幹部に電話をかけ、午前10時に丸山と土井を滝川邸に連れて行って人質救出を決行する際、機動隊に邪魔をしないよう指示してもらうように連絡した。
成功の確率は60%で、丸山と土井が思惑通りに動けば80%に上がると思われた。
藤堂は誘拐犯を外国に送った場合、人質が殺される確率が高いと危惧した。
警察幹部は同じ意見を提案した北見警視と相談をすることを許可した。
北見警視は決行の指揮権を藤堂に譲り、本庁のライフル隊員と本部員を派遣しようとしたが、藤堂は自分の部下を信じ、拒否した。
丸山と土井は世界破壊の同意者は仲間と考えていたが、山村は人質が誘拐犯から手が離れたら誘拐犯を射殺すると宣言し、もしも誘拐犯と行動するならば丸山と土井にも銃口が向けられると警告し、警察への協力を促した。
丸山と土井は同意し、機動隊で包囲されている滝川邸に向かった。
一係室に伸子から、島が助かったという報告が入った。
野崎は全員に知らせた。
藤堂は庭にて、丸山と土井を誘拐犯と人質のもとに連れて行き、ジェット機と90億円を羽田空港に用意したと伝えた。
藤堂は丸山と土井に、誘拐犯の拳銃に飛びつくように指示を出した。
丸山と土井は誘拐犯に接近し、拳銃に飛びついた。
誘拐犯の1人は石塚により、池野は野崎により逮捕され、丸山と土井も山村によって取り押さえられた。
誘拐犯の1人は拳銃を乱射し、弾が機動隊員に当たってしまった。
北見警視は誘拐犯を逮捕した。
撃たれた機動隊員が殉職してしまった。
由利子は無傷で精神状態も良く、結婚式は執り行われることになった。
記者会見にて警察幹部は人質救出作戦を大成功だと発表したが、藤堂は機動隊員が殉職したため作戦を大失敗と評した。
死亡した機動隊員も半月後に結婚する予定であり、藤堂は人質の命も機動隊員の命も命の重さには変わりがないと考えていた。
メモ
*「太陽」100回記念作品。記念作のチーム主演作には、300回記念の「男たちの詩」、500回記念の「不屈の男たち」がある。
*瀕死の重傷を負う殿下。恐らく同時撮影の「愛の殺意」の影響と思われるが、そちらでも女性に重傷を負わされてしまう。
*誘拐犯B(手塚しげお氏)とゴリさんが最後に格闘するシーンで、カメラが回転している。
*遠藤征慈氏は600回の「七曲署事件No.600」にも主犯で出演している。
*500万ドルで15億円なので、1ドルが30円。
*久しぶりにジーパンの父親の話題が登場。
*予告ナレーションは小林氏ではない。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
柴田純:松田優作
内田伸子:関根恵子(高橋惠子)
島公之:小野寺昭
野崎太郎:下川辰平
永井久美:青木英美
北見警視:垂水悟郎
滝川:見明凡太朗、警察幹部:鈴木瑞穂
誘拐犯A:清水紘治、丸山:西田健、池野弘子:嘉手納清美
滝川夫人:上野綾子、石川真知子、久本昇、誘拐犯B:手塚しげお、土井:遠藤征慈
ノンクレジット 機動隊隊長:大宮幸悦
石塚誠:竜雷太
山村精一:露口茂
脚本:小川英
監督:竹林進