第97話「その子に罪はない!」

放映日:1974/5/24

 


ストーリー
一家4人皆殺し事件が発生した。

凶器は短刀か刺身包丁かと考えられた。

野崎は庭で煙草の吸い殻を発見した。

犯行は昨夜の10時前後に、夫婦に息子、家政婦の老婆の一家全員が居間にいるところを襲撃されていた。

凶器は未発見だったが、土地を売って得た金の4000万円が消失していた。

捜査会議中に一係室に本庁から電話がかかった。

野崎が現場から拾った煙草の吸い殻から、市川勝(石橋蓮司さん)の指紋が検出された。

前科5犯の殺人犯である市川は、恐喝と強盗容疑で指名手配中の身であり、3ヶ月前に千葉で質屋に強盗に入り、老夫婦に重傷を負わせていた。

市川は自分の叔父を殺害したこともある凶悪犯だった。

捜査本部が本庁に移行され、七曲署は協力体制にあたることになったが、柴田は抗議した。

一係室に本庁の島田警部(伊藤孝雄さん)が入り、柴田に協力を要請した。

島田警部は市川の指名手配写真を現在の髪型に書き換え、柴田とともに出動した。

野崎と石塚と島はドブさらいを行っていた。

山村と伸子は、市川の幼馴染で保母をしている今寺良子(服部妙子さん)を張り込んでいた。

今寺は市川が恐喝と傷害で服役中に、見舞いの葉書を出したことがあった。

市川に身寄りはなく、子供の頃から「刑務所生まれ」と呼ばれており、スリの常習犯である母親が服役中に市川を出産して亡くなっていた。

市川の父親は分からず、叔父に引き取られていた。

島田と柴田は市川を発見し、逮捕した。

七曲署に新聞記者が詰め寄った。市川の身柄は本庁に護送されるまで七曲署が預かることになった。

市川は千葉の犯行を認めたが、一家四人惨殺事件に関しては否認した。

しかし市川は惨殺事件のアリバイを言いかけたが、すぐに打ち消した。

市川は本庁に護送された。

山村は取調室にて、市川が落とした安産祈願のお守りを拾い、市川に渡したが、市川は素っ気ない態度をとった。

山村は市川がアリバイを打ち消したことと市川が持っていたお守りが気になった。

山村は高子の心臓病の手術の見舞いに行っていた。高子は心臓の発作が治まったが、発作のショックで死産してしまった。

山村は帰宅し、高子(町田祥子さん)と会った。高子は隣人の赤ん坊を預かっていた。

深夜、山村は藤堂に、市川に人間らしい心が残っているのではないかという電話をかけた。

藤堂は市川が4000万円について供述しないことが気になり、島に犯行現場の捜索を、石塚と柴田に市川の昔の仲間の捜索と犯行前後の捜査を命じた。

山村は島田警部に市川との面会を要求したが、島田警部は個人プレーとして断った。

島田警部は市川が千葉での事件後の3ヶ月間をドヤ街に潜伏していると推測していたが、山村は市川の顔がドヤ街に知れ渡っているとして、女に1ヶ所に匿われていたと推測していた。

しかし、島田警部によると、市川に女はいなかった。

伸子は山村に電話をかけ、今寺の勤務している保育園に呼び、市川と今寺の過去を話した。
市川は働かされていて学校を休んでいたが、今寺が時々学校のことを話しに市川のもとを訪ねていた。
しかし、その日に市川はおらず、市川の叔父が酒を飲み、今寺を乱暴しようとしたが、逆に市川に殺害されていた。
市川は事件の日まで、「刑務所暮らし」と呼ばれても笑っているような、おとなしい内気な少年だったが、事件後から変化していた。
山村は今寺が市川に葉書を出していることから、今寺が市川を匿っていると推理し、伸子に今寺から目を離さないように命じた。

山村は今寺の自宅である富士アパートを訪れ、捜査令状なしに今寺の部屋を捜索した。

アパートの管理人の高田によると、今寺に男はいなかった。今寺は犯行当日の午後10時頃に、いつもの時刻に帰宅していた。

藤堂から、凶器の刺身包丁が市川の供述どおりに犯行現場付近で発見されたが、包丁で遊んでいた5歳の子供が重体になったという連絡が入った。

山村は未だに市川がアリバイを打ち消したことを気にしていた。

言いかけたアリバイを打ち消すことは、アリバイの証明が可能な人間との関係を知られたくない場合以外にはないと考えていたためであった。

市川が自分の子供を身籠っている女を隠していると推測していた。

今寺は産婦人科に向かっていたが、入る勇気が無く戸惑っていた。山村は本庁に赴き、留置中の市川を取り調べた。

山村は市川に今寺の存在と事件当日に今寺の自宅で一緒にいたのかと尋ね、殺害を認めれば死刑になると警告した。

島田警部が取調室に入り、凶器の刺身包丁を出して、厳しく取り調べた。

山村が市川に、殺人鬼が自分の子供の安産を願う資格はないと厳しく指摘した途端、市川は子供に関係ないと激情した。

島田警部は山村の主張を認めた。山村は富士アパートの管理室に入り、ラジオのイヤホンを付けていた高田に接触した。

山村は島田警部が持ってきた捜索令状をもとに、今寺の部屋を捜索した。

山村は畳についていたタバコの跡が気になったが、高田は今寺が喫煙していないと告げた。

山村が押し入れを開けると、中には13階段と絞首刑された人が描かれた落書きが描かれていた。

山村が七曲署に帰ろうとしたとき、七曲署に入ろうと躊躇している今寺を発見した。

山村は今寺を取り調べた。今寺は市川が質屋を襲撃してから3ヶ月間、市川を匿ったことを認めた。

雨の日に今寺は市川と会い、自首を促したが、市川は一晩だけ今寺宅で眠りたいと言っていた。

今寺は市川が自分のために殺人を犯し、市川を救ってくれる人もいないことに責任を感じていた。

今寺は市川から一生刑務所で暮らすという言葉を聞いたときに自首を奨める気持ちを失い、市川を匿う決意を固めていた。

惨殺事件当日、今寺は出産すると言い張ったため、市川は反対して部屋を出て行っていた。

市川は自分の子供が凶悪犯の子供であることを知られたくなかった。山村は今寺に市川が持っていた安産のお守りを手渡した。

市川にも人間らしい心が残っていた。山村と石塚と柴田は管理人室に入り、イヤホンの機械が盗聴器であることを確認した。

高田は盗聴器で市川が今寺の部屋に潜入していることを知り、市川を利用したと断定された。

山村は高田を発見し、逮捕した。獄内で市川は山村に、今寺に子供を産むなと伝えてほしいと言った。

山村は島田警部と会い、釘を刺された。今寺は市川の面会に行く決心を付けた。

 

 

メモ
*「危険を盗んだ女」に引き続き、ゴリさんはドブさらいが嫌いなようだ。
*子供にガムをあげるジーパン。「蒸発」や「子供の宝・大人の夢」など、ジーパンは子供好きの部分が見られるようだ。
*高子が約1年ぶりに登場。持病のショックで残念ながら死産してしまった。(なお、この後の「男の斗い」でも高子は妊娠するが、「非情な斗い」で流産してしまった)
*前回に引き続き、中期や後期に使われるSEが使用されている。
*凶器の包丁で遊んでいた子供はその後死亡してしまったようだ。
*今作は播磨氏の「太陽」初執筆作。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
柴田純:松田優作
内田伸子:関根恵子(現:高橋惠子)
島公之:小野寺昭
野崎太郎:下川辰平

 

 

永井久美:青木英美
島田警部:伊藤孝雄
市川勝:石橋蓮司
山村高子:町田祥子、今寺良子:服部妙子
平田守、小高まさる、清水吾郎、山田禅二

 

 

石塚誠:竜雷太
山村精一:露口茂


 

脚本:播磨幸治
監督:斎藤光正