第73話「真夜中に愛の歌を」

放映日:1973/12/7

 

 

ストーリー

石塚と柴田は張り込み中、車内でラジオを聞いていた。

ラジオのDJであるM・M / 牧美恵子(森みつるさん)のもとに植村学という男から、何度電話してもかけてもらえなかったこと、切ったら殺すという脅迫電話がかかってきた。

植村はリクエストとして牧が作詞の「男の子から女の子」へという曲を要求した。

植村の要求の理由は、恋人である坂本洋子の20歳の誕生日のプレゼントとして送りたかったのであった。

柴田は一連のやりとりを台本として一笑に付したが、石塚は気にしていた。

一係室に帰った石塚は、柴田が事件のことを話したために捜査員全員からからかわれていた。

石塚は牧と面会した。

牧は脅迫電話のことを全く気にしていなかった。

牧は植村のことを知らないと述べた後、アシスタントの坂本(中田喜子さん)に書類の整理を要請した。

牧はプライバシーが無い状態で、ファンが知っていても自分が知らないことがいくつかあった。

ラジオ局の職員によると、植村は何年か前にスタジオでギターを弾いたことがあり、そのことが縁で作曲家のマイケル中江に弟子入りしていた。

植村がリクエストした「男の子から女の子へ」は3年前(1970年頃)のヒット曲で、作詞が牧、作曲家が中江であった。

石塚は「男の子から女の子へ」をプロデュースしたセントラルレコードの女性プロデューサーにあたった。

プロデューサーは中江と牧がコンビを組んでいるヒットメーカーで、現在の曲が10曲目であること、植村が文句を言っていることを伝えた。

石塚は中江(渥美国泰さん)を訪ね、中江は植村のことを話した。

植村は牧の熱烈なファンで、自作の楽譜を送って放送局に押しかけていたので、牧の紹介で中江に弟子入りしていた。

植村は中江のもとに1年弟子入りしていたが、結局才能が無いという見込があって辞めていた。

坂本が中江宅に原稿を届けに来た。石塚は中江に植村の書いた譜面の提出を要求したが、中江は処分してしまっていた。

石塚は牧と中江に不満を持っていた。一係室に坂本から電話が入った。

内容は植村が殺人をするかもしれないから止めてほしいということ、植村のほとんどの曲が中江と牧に盗作されたということであった。

坂本は植村の住所が渋谷区高坂町5番地 アパート平和荘であることを伝え、電話を切った。

石塚はアパートの近くの河原で植村(堀内正美さん)と会った。植村は3年前のことを話した。

植村と坂本は3年前まではお互いを励まし合う仲間であり、坂本は作詞家志望で牧のもとに通っていた。

植村はかつて父親の町工場の手伝いをしており、牧の曲は高校時代からよく聞いていた。

植村が牧に自作の曲を贈ったところ、牧は曲を誉め、スタジオからギターを弾かないかと言われていた。

植村はスタジオに初めて行ったときに坂本と出会い、しばらくしてラジオ局の近くのスナックで話し合うほどの仲になっていた。

しかし1年後(1971年頃)、植村と坂本で作詞作曲した「男の子から女の子へ」を中江と牧に盗作され、中江に破門されていた。

牧には作詞の才能が無く、中江はもう過去の人で新しい曲が浮かばない状態だった。

牧と中江には味方がたくさんいたため、音楽業界から放り出されたも同然の状態であり、盗作で訴えようにも譜面が抑えられているためどうしようもなかった。

石塚は坂本が植村を心配していることを伝え、植村は石塚に新宿のバー「森」でバーテンをしていることを伝えて去った。

中江が頭を殴られて意識不明の重傷を負った。

犯行時刻は午後5時で、植村が石塚と別れたのが午後4時15分であった。

石塚はスナックで植村と再会した。植村は中江を恨む人がたくさんいると話した。

スナックに坂本から電話が入った。坂本は中江の机から植村の楽譜を取り戻そうとして中江を殴ってしまっていた。

石塚が強引に電話を代わったために坂本は電話を切り、植村は逃走した。石塚は柴田と合流し、植村のアパートを張り込んでいた。

ラジオで「女の子から男の子へ」という投稿者が「小さなスナックへ」という曲をリクエストしていた。

石塚はリクエストが坂本の呼び出しの暗号と直感し、植村のアパートに踏み込んだが、植村はスナックに向かっていた。

石塚は、植村の部屋にあったマッチ箱のコレクションを探した。植村はスナック「ファニー」で坂本と再会していた。

坂本は植村に楽譜を渡した。

坂本は現在でも植村が好きであり、ラジオのリクエストで植村の好意を知って勇気が出たために、犯行に及んでいた。

坂本は中江宅から譜面を持ち出していた。植村は牧への復讐を実行しようとしていた。

石塚と柴田が「ファニー」を探し当てた頃には、もう植村と坂本はいなかった。

牧は捜査一係に電話をかけ、自分の保護を要請したが、既に藤堂は部下を牧に張り込ませていた。

牧のもとに植村から電話がかかった。

植村は牧と中江が盗作した楽譜を公表するとして、100万円を持って矢追町二丁目の取り壊し中の学校に行くように脅迫した。

坂本は殺人をするなと説得したが、植村は無視して走った。

野崎と石塚と柴田は牧の赤い車を尾行したが、赤い車には東日ラジオのディレクター(石井宏明さん)と身代わりの女性が乗っていた。

牧はディレクターの車を借りて学校に向かっていた。

坂本は一係室に電話をかけたが、何も言わずに切った。

山村は背後に流れた小田急線の特急の警笛を聞いた。

牧は植村と合流し、急いで作った20万円を渡したが、植村はナイフを持って殺害しようとしていた。

坂本の居場所が小田急線の駅の近くであることが判明した。

石塚は坂本から植村の居場所を聞き出し、野崎と柴田が廃校に駆けつけた。

植村は廃校の屋上に追い詰められたが、牧を殺そうとしていた。

石塚は騙されて何が悪い、人を信じることは若者の特権と説得した。

植村は観念して連行された。

現場に駆けつけた藤堂は中江が助かったことを報告した。

 

 

 

メモ
*ジーパンは声が良い人に美人はいないと思っているらしい。
*ラジオネーム「ゴリラくん」を聞いて爆笑するジーパン。
*ゴリラが好きと語るM・M。ゴリラは良い動物と語っていたが、後の吉野巡査も同じようなことを言っていた。
*カツ丼をやけ食いするゴリさん。
*「M・M=マリリン・モンロー」が時代を感じさせる。
*今回のジーパンはゴリのことをからかっており、妙に軽い。
*小田急の警笛の音がすぐに分かる山さん。電車マニアか?
*植村の堀内氏と坂本の中田氏は「兄妹」でも共演している。今回が恋人同士の役に対し、「兄妹」では堀内氏の演じる犯人が中田氏の演じる島京子(殿下の妹)をストーカーするという内容であった。
*ラストの雰囲気は何となく「俺の拳銃を返せ!」や「雨の中の女」に近い雰囲気がある。
*今回は「海を撃て!! ジーパン」と同時撮影。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
柴田純:松田優作
島公之:小野寺昭
野崎太郎:下川辰平

 

 

永井久美:青木英美
マイケル中江:渥美国泰
植村学:堀内正美、坂本洋子:中田喜子
牧美恵子:森みつる、東日ラジオディレクター:石井宏明、小貫瑞恵、「ファニー」マスター:鹿島信哉
内山朋子、西村一正、佐藤靖、生方中、遠藤義徳、中楯富久子

 

石塚誠:竜雷太

山村精一:露口茂

 

脚本:小川英、中野顕彰
監督:竹林進