第59話「生命の代償」

放映日:1973/8/31

 

 

ストーリー

野崎と柴田は勤務明けで酒を飲もうと思っていた。

二人は、赤信号であるのに横断歩道を渡った井村太一(52歳)(小山田宗徳さん)という中年の男を目撃した。

野崎と柴田が酒の自動販売機でビールを買って飲んでいるときに、再び井村を発見した。

井村は缶ビールを買って飲んでいた。

野崎は井村の不審さが気になったが、柴田は気にしていなかった。

野崎は井村が強引に中央分離帯や車道を歩き、車に撥ねられそうになったのを見た。

野崎は井村の尾行を決意した。

井村は喫茶店でコーヒーを注文した後、屋上に上がり、フェンスを上って自殺しようとしていた。

井村は野崎により自殺を阻止された後、逃走したが、追いつかれた。

井村は自殺を冗談だと言い張って去った。

野崎は井村が落として行った封筒を帰宅中の電車内で見ていたが、その中には自殺を仄めかす遺書が入っていた。

野崎は一係室にて藤堂に、井村のマークを要請した。

藤堂は承諾し、柴田を同行させた。

野崎と柴田は井村の勤務している中光商事の人事課長を尋ねたが、井村を知らない様子であった。

井村は中光商事の輸入部第三係長であり、住所は中光商事社宅の38号棟の307号室であった。

野崎は井村と会うのを躊躇っていたが、偶然に井村の息子である井村稔と夫人の井村和代(幾野道子さん)の会話を目撃した。

柴田は井村宅に上がり、自分の身分を名乗った。井村は体調不良で会社を休んでいた。

井村は誤解だと述べた。

井村は窓から帰り際の野崎と柴田を見ていた。

井村は夜に、散歩と言って外出しようとしたが、稔も同行した。

しかし、稔は井村が一流大学に入りなさいと言われたため、すぐに帰宅してしまった。

井村は踏切前で野崎と会い、居酒屋に誘われた。

井村は自分の将来が無いと語った後、トイレに行くふりをして脱走した。

井村は踏切で自殺しようとしていたが、結局自殺はしなかった。

柴田は子供を残して自殺しようとしている井村を批判した。

藤堂は本庁の二課が中光商事を内定している節があることを伝え、井村を危ないポストだと話した。

井村は出勤後に中光商事輸出入促進課の課長(佐原健二さん)と挨拶した後に、倉持部長(杉江広太郎さん)によって常務室に呼ばれた。

倉持部長は井村に対し、自殺すれば中光商事が存在する限り和代と稔の一生を保障すると忠告した。

常務室に本庁二課の刑事(小笠原弘さん)が入り、捜索令状を見せた後に、輸出入に関する贈賄容疑として、帳簿の拝見を命じた。

井村は連行された。柴田は連行される直前に井村を発見した。後日、中光商事の汚職事件が新聞の一面を飾った。

新聞には井村が十数億円を横領していると書かれていたが、野崎は井村が窓口ではないかと推測していた。

井村は黙秘を続けていた。柴田は仕事を休んで稔と遊んでいたが、団地の住人は稔が来ただけで逃げていた。

井村は釈放されたが、中光商事幹部の車に乗った。

幹部は井村に対し、逮捕が時間の問題であること、会社に出勤しなくていいことを忠告し、井村を社宅に帰した。

柴田は野崎の静止を振り切って井村を尾行していた。井村は団地の住人から奇異の目に晒されていた。

井村は会社や自分を批判した稔を殴り、稔は自宅を飛び出した。

柴田は井村宅に上がり、稔の気持ちを代弁して、父親は息子にとって憧れでなくてはならないことを伝えた。

井村は倉持部長と常務(加賀邦男さん)に電話をかけ、会社の犠牲になりたくないので辞職し、死んだ後に中光グリーンタウン分譲住宅3000坪分をいただくと脅迫した。分譲住宅は井村の死後に井村の家族に譲渡される予定のものであった。

井村は午後4時に新宿中央公園、倉持部長1人で持っていくよう指定し、刑事の尾行がついているので、始末しようとは考えるなとも脅迫した。

井村はタクシーに乗り、新宿中央公園に向かった。

野崎と柴田は井村を張り込んでいたが、途中女性にちょっかいをかける男たちを注意していた。

その間に、中光商事の回し者に井村を誘拐されてしまった。

野崎と柴田は井村を誘拐した外車を追跡したが、渋滞にあってしまった。柴田が車を降り、井村を誘拐した車に張り付いた。

中光商事の回し者は柴田を車から降ろそうとしたが、車が一瞬動かなくなった隙にドアから柴田に侵入された。

中光商事の回し者は野崎と柴田に蹴散らされ、逮捕された。

後日、野崎は一係室にて、井村を家庭の行く末を考え、家族を愛した立派な父親だと讃えた。

柴田は稔に会うために去った。

 

 

メモ

*今回は「蒸発」と同時撮影。

*ジーパンの身長は185cm、体重は76kgらしい。

*井村が下駄を履いているのが時代を感じる。

*危うく会社の犠牲にされかけた井村。恐い話である。最後の恐喝は「したたかな目撃者」や「ラスト・チャンス」を思い出す。

*ジーパンが車のボンネットを飛び越えるシーンがかっこいい。

*ゴリさん、殿下、山さんが空気。

*長さんの奥さんと娘はクレジットされているが未登場。

*今回は脚本の石松氏の「太陽」最終作。

 

 

キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
柴田純:松田優作
島公之:小野寺昭
野崎太郎:下川辰平

 

 

永井久美:青木英美
井村太一:小山田宗徳
中光商事輸出入促進課課長:佐原健二、本庁二課刑事:小笠原弘、久野征四郎
井村夫人:幾野道子、中光商事常務:加賀邦男、倉持部長:杉江広太郎(後の杉江廣太郎)
野崎康江:西朱実(未登場)、野崎良子:井岡文世(未登場)、佐瀬陽一、野口英行

ノンクレジット 中光商事の回し者:戸塚孝、中光商事の回し者:新井一夫

 

 

石塚誠:竜雷太
山村精一:露口茂

 

 

脚本:石松愛弘
監督:斎藤光正