昨日の続きです。

父の友人の遺稿集

タイトルは「ご意見無用」

今でいうイケメンだった彼を、周囲は放って置かなかったようですが、プライベートに口を挟まれた時、この言葉を残したようです。

本の半分は、新聞社時代に彼が書いた文章をまとめたものです。

その中には、山について書かれたものも多く残されています。

どの話も、自然や山への愛情が感じられ、こういう文章を「珠玉」と言うのかな、と思います。

彼の後輩に「沢田義一」という人がいました。

やはり山岳部で、大学生活最後の冬山で遭難し、命を落としました。

雪崩に呑み込まれ、その雪の下で、しばらく彼は生きていました。

何とか脱出を試みようと雪を掘り続け、やがて力尽きます。

亡くなるまでに、その絶望的な闇の中、地図の裏に彼は遺書を綴ります。

彼もまた文章力のある人で、遭難した状況下ながら、冷静に状況を捉え、今まで世話になった人への感謝や思いを綴っていきます。

発見された時、残されたその遺書を見て、誰もが泣き崩れたそうです。

遺書の最後に「せっかく背広も誂えたのに、もうダメだ」と有りました。

当時、大学を出て就職をする際、お祝いにスーツを仕立ててもらうのは、大学生にとっては特別な出来事だったそうです。

期せずして、父が紳士服の仕立て屋であった事も有り、この話は強烈でした。

義一の遺書には、この人への感謝の言葉が書かれていました。

そしてそんな彼の話を、後に「わりなき山の話」という随筆で残しています。

「義一」という遺稿集を、後に彼の両親が出版しました。その本もウチにあります。