地方創生が立ち上がった大きなきっかけをつくったのが、人口減少問題が日本の根幹を揺るがす大問題であることを正面から問題提起した、平成26年のいわゆる「増田レポート」。
本書は、人口問題から始まったはずの地方創生が、いつのまにか経済財政対策になってしまっていることを指摘したうえで、
「私たちがいま、都市や東京を基準にして当たり前と思っている価値観こそが、東京一極集中を推し進め、人口減を止まらなくしているものの正体だ。」(P5)
と、人口減の本当の原因に正面から向き合うべきことを問題提起する1冊。
人口減少に向き合っていないことを端的に示すものとして著者が指摘しているのが、国の総合戦略におけるKPIの検証だ。
それぞれのKPIが達成されているかどうかの検証はされているが、KPIの達成が婚姻や出生につながっているかというところまでの検証が行われていないことを著者は指摘する。たとえKPIが達成されていたとしても、それが人口減の抑止につながっていないのであれば、戦略やKPI自体を見直す必要があるが、そういう当たり前のPDCAサイクルが回っていないことを指摘している。
以下、本文から気になった個所を引用しつつコメント
「PDCAは試行錯誤であり、失敗はつきものである。」
「おそらくPDCAは競争とはもっともかみ合わないものだろう。」(P58)
指摘はごもっともなれど、一方であわせて指摘している
・地方創生関連の取り組みで、KPI等のPDCAのための仕組みが、自治体間競争や「選択と集中」のための道具とされている
という点については、本当にそうなのかやや疑問を持っている。
地方創生推進関係交付金を見る限り、きちんと必要な見直しを行っているかどうかも交付金採択の判断材料となっていることや、予算獲得の競争率もそれほど高くなくちゃんと設計している事業なら問題なく採択されていると理解しており、KPIの達成度合いが地域間競争の材料に使われているという印象は持っていないのだが、そういう実態もあるのだろうか?
地域活性化のための攻めの投資は、地域で投資の財源をまかなえるようにし、交付金がいらない状態を実現するのが目的のはずなので、動機づけという点では問題だが、KPIを達成すればするほど交付金がつかなくなるというのが本来の在り方だと私は思う。
「農産物は基本的に安くなくてはならない。それはこの国の安定に関わることである。それゆえ、そこにどんなに付加価値をつけられたとしても、それほどの高額にはならない。なってはいけないのである。(P139)」
高付加価値化はいいけれど、誰がそれを買えるんだろうというのは、ずっと感じていた疑問。良質なものが潤沢に供給され、あまねく日本人の口に行き渡るのが理想で、本当に特別なものはともかく、普通の安全で質のよいブランド農作物は、誰でも食べられるものであってしかるべきだと私も思う。
食の価値がもっと認められて、食の支出の優先順位が高まること、また、それを現実に選択できる程度に所得の底上げがなされることがまずは必要と考えるが、著者がいうような低価格を前提とした生産者への税の再配分というアプローチも必要なのかもしれない。
「利潤追求の回路がいったん成立すれば、地元の意思とは関係なく、それを食い尽くし、すべてをカネに換えねばすまない強力な力が世界中から入り込んでくる。その圧力を抑え、国土を守って地域を持続可能な開発へと誘導するのが国の仕事なのに、むしろそうした資本を積極的に導入しようというのが今の政策なのだ(P166)」
うまくいって稼げるようになったら、そこに大小の色んな資本が入ってきてひっかきまわされてしまう。地域のことは地域に住む人が自分たちで決められるようにするにはどうすればいいのだろう?
「まず私たちが確認しなければならないのは、基本的に私たちは働き過ぎだということだ。「働き過ぎ」というのは、別に時間の問題ではない。結婚や子育てをふつうに考えることができないほどに、働くことが暮らしのすべてになってしまっているということである。働くことが最優先される一方で、子育てはどうも特別なこと、道を外れたことになってしまっているのだ。(P241)」
私も、対社会の活動を何もしなかった日など、料理その他の家事で充実していても「今日は何もできなかった」と思ってしまうことがある・・・。もっと素直に満足できればいいのですが。
「多様なものが、それぞれに依存しあいながら関係を保ち、その内部の各単位が自治を行い、互いに協働し、さまざまなアイデアが構想され、実践されることで、さらなる多様性が生まれてくる。多様なものが多様な社会をつくり、互いに依存し合って全体の活力を絶えず再生産していく。(P206)」
「国家を、国民を、そして社会にある様々な機関や集団を、経済から社会へと戻すこと。これをどう具体的にバランスよく実現していくかが現在の大きな政策課題である。(P274)」
まさにこういう方向性での取り組みが今重要だと思う。
先日発刊した「地方創生の本棚」が、そういう取り組みを後押しできればうれしいです。


