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扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

身近で関心は高いのに複雑・難解と思われがちな日本の医療、ここでは、医療制度・外科的治療などを含め、わかりやすく解説するブログです。

胃・十二指腸潰瘍とは
胃は、強い酸を含む胃液から胃壁の粘膜を守るため、粘液を分泌している。胃液と粘液とのバランスが崩れ、胃壁が胃酸に痛められ傷ができる疾病が胃潰瘍だ。
初期には粘膜の表面がただれる程度だが、進行すると粘膜に穴があき、重症になると胃壁を突き抜ける場合もある。十二指腸でも胃と同様の潰瘍が起こる。
胃や十二指腸はデリケートな臓器で、肉体的・精神的ストレス、薬剤等の影響で、粘膜の血液循環が悪くなり、またヘリコバクター・ピロリ菌が発症に関与している。この菌は胃の粘液中にあるが、これがつくるさまざまな物質が粘膜を刺激し、炎症を起こして、胃潰瘍発症の下地となる。
胃潰瘍と十二指腸潰瘍はよく似た病態だが、できる場所以外に違いもある。胃潰瘍は胃酸の分泌が少なく、十二指腸潰瘍は胃酸やペプシンなどの消化液の働きの過剰が原因で起こる場合が多い。胃潰瘍は40-50歳代に、十二指腸潰瘍は比較的若い人に多く見られる。胃潰瘍のできやすい部分は胃角部付近、十二指腸潰瘍は十二指腸球部。欧米では十二指腸潰瘍が多く、日本ては胃潰瘍が多いが、生活の欧米化が進み、日本でも十二指腸潰瘍は増加。
主な掌上は激痛、胸やけ、げっぷ、吐血、下血、また十二指腸潰瘍では空腹時の痛みが多いのが特徴である。
また最近では、薬剤や内視鏡的止血が進み、切除術は減少している。

胃がんとは
胃の粘膜、胃の内側にある粘膜から発症する悪性腫瘍で、好発年齢は50歳代後半-60歳代。男性に多く日本人に最も多い。
早期には無症状のことが多いが、軽い胃部不快感や胸やけ、げっぷ、食欲不振等が見られる場合がある。進行胃がんでは食欲不振、衰弱、腹部膨満感、痛み、コーヒー色の吐血、下血等の症状が現れる。さらに転移が起こり、がん細胞が血液等に入り込んで肝臓、脳、肺など他の臓器に侵入していく。
がんの進行度
早期がんの場合、今は開腹することなく、内視鏡で手術を行うこともできる。
粘膜筋板 粘膜がん
粘膜下層 早期がん、進行がん(Ⅰ型)
固有筋層 進行がん(Ⅱ型)
漿膜下層 進行がん(Ⅲ型)
漿膜 進行がん(Ⅳ型)

胃切除術
【幽門側胃切除術の手順】幽門付近を2/3以上とリンパ節を取り除き、がんが胃の噴門に近い部分にのみの場合、噴門側胃切除術が行われる。
【ビルロートⅠ法】胃残部と十二指腸をつなぐ。
【ビルロートⅡ法】胃残部と小腸をつなぐ。

【胃全摘術の手順】他の腹腔内臓器、腹壁、腸間膜等の転移を確認、がん巣や周囲リンパ節を切除し、消化管を再建する。がんが胃全体に広がる場合、胃全摘術が行われる。がんが他臓器へ及ぶ場合、食道、肝臓、大腸等も切除する拡大手術が行われる。
・切除前
食道下部から十二指腸前部を切り、胃を摘出する。
・切除後
十二指腸は閉じる。
小腸を切開し食道とつなぐ。
十二指腸から続く小腸はもう一方の小腸につなぐ。

※胃潰瘍では食事に注意が必要である。定刻に食べ、蛋白質を十分とり、繊維の多い野菜はよく煮て、肉や魚は細かく切り、揚げ物は控え、刺激するものは避け、柑橘類を控えるようにする。
胃がんは東アジアに多く、欧米の白人に少ない。米国では日系、韓国系、中国系移民の罹患率が高い。日本では、東北地方の日本海側で多く、南九州、沖縄で少ない「東高西低」の傾向がある。
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