医師への謝礼 | 扶氏医戒之略 chirurgo mizutani

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身近で関心は高いのに複雑・難解と思われがちな日本の医療、ここでは、医療制度・外科的治療などを含め、わかりやすく解説するブログです。

日本の医療費は社会が考えているほど高くない、という私の見解に対して、統計に含まれていない医師への謝礼を考慮すれば高い、という反論が起きるかもしれません。しかし、謝礼についてよく考えると、そもそも外来では一般的に渡されませんし、入院の場合も毎日渡すわけではなく、通常、手術の後あるいは退院を控えて渡すというのが習慣です。その際も、いわゆる差額ベッドの患者からは相応の謝礼がありますが、一般病棟の患者からはあっても盆暮れのあいさつ程度の金額の品物が通常です。
しかし、医師への謝礼についての疑惑が大きいことから、最大に見積もってどの程度であるかを推計しました。大学病院の差額ベッドの場合は30万円、それ以外の病院の差額ベッドの場合は10万円、一般の病棟からは退院に際して3万円を謝礼として払うことを前提として、1990年当時の全国における差額ベッド、大学病院の割合および退院患者数から推計すると、その金額は4000億円程度でした。
これはOECDが推計した日本の医療費の1.5%です。したがって、謝礼を含めても日本の医療費は低い水準にあります。
なお、医師への不透明な謝礼は道義的な観点からも問題になっています。しかし、患者は「名医」に診てもらいたいと願っており、「名医」の数は定義上多くないので、公正な取引にするには「名医」の診療時間を競売にするか、くじ引きにするしか方法はありません。
こうした方法も受け入れがたいので、結局全体の水準を上げて、専門領域ごとの医師の技能を標準化するように努力する以外には解決方法はないでしょう。
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