「根拠に基づく医療」と訳されており、これまでの医師の経験と勘による医療から、エビデンス(根拠)によって裏打ちされている医療への転換が世界的に推奨されています。エビデンスとは、患者の治療成績のことであり、動物実験などにおける有効性ではありません。
治療成績を出すことは容易なように見えますが、実際には患者の性,年齢,病気の重症度,合併症の有無などによって成績は大きく異なります。したがって、信頼度の最も高いエビデンスは、こうした相違を相殺したランダム化比較試験の結果です。つまり、一定の条件を満足する患者に対して、新しい治療方法を実施する群と、そうでない群に無作為に振り分け、統計的に有効性を検証する方法です。
しかし、この場合も治療効果の指標として何を選ぶか(延命,機能,状態,検査値,QOL,患者の満足度など)によって結果は異なり、総合評価する場合は各指標の重みづけの仕方によっても異なります。また試験の対象となった合併症などのない患者について効果が検証されても、ほかの病気などもある高齢な患者等では必ずしも効果があるといえません。さらに医師・医療機関の技能レベルなども異なるので、EBMの結果をそのまま適用できるとは限りません。したがって、EBMによって「灰色」部分は確かに縮小しますが、なくなるわけではありません。
いずれにせよ、エビデンスに基づいた治療指針を作成する際、支払う側は常に費用を意識するのに対して、医師・医療機関は最高のレベルを追求します。こうした課題に対して、EBMは一般にコストを考慮しませんので、QOLの経済評価を行わなければいけません。
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