「一芸は道に通ずる」という先人の言葉があります。

私は、不動産の法律を扱う仕事をしておりますので、

法律で例えますと、不動産に関する法律として主となるのは、民法と不動産登記法でしょう。

しかし、実際の事案を担当し検討するには、民法と不動産登記法だけでは全く足りないことに気付くことになります。

民事執行法、民事訴訟法、民事保全法、破産法などなど・・・

不動産に関する法律という狭い分野を、専門的に扱うためには、結局、様々な法律の知識が必要となり、それを理解しなければ、問題解決に至らないこととなります。

一つの事を専門に極めるという事は、少しずつ周辺の知識を加える必要があり、結果的に、高いレベルの法律家になる、つまり、「道に通ずる」ということだと思います。

 

これを異動を通して、実現しようとする組織があるようです。

色々なな部署に2~3年ごとに異動させ、様々な仕事を体験させるという方法です。

自分の専門分野をどれにするのかの経験としての異動なら、興味のある分野を、その人の専門にした方が良いでしょうから、その方法は間違っていないでしょう。

しかし、その意味での異動も20代まででしょう。

30代、40代になっても、そのような他の部門への異動を繰り返すのは、どうなのでしょうか?

専門的に取り組んでいる人と、2~3年ごとに異動する人とでは、担当する仕事をとらえる深さが全く異なると思います。

しかも、大抵の組織では、2~3年ごとに異動する人を有能な人と位置づけ、だからこそ色々な分野を体験させているように思います。しかし、その人を受け入れる部署では、あの人はそういう路線に乗っている人だから、失敗させないようにと気を使って、お客様として対応しているのが現実なのではないでしょうか。そこに組織としての発展はあるのでしょうか。幹部の方々の自己満足なのでは・・・

 

そもそも、1人の人が全てにおいて深い知識を得る事など不可能なのではないでしょうか。だからこそ、先人たちは、「一芸は」と言っているのだと思います。

 

いや、最近の技術革新の速さは凄まじいものがありますので、私の考え方も既に先人の古い考え方になっているのかも知れません(笑)