ホアキン・フェニックスが主演するとあって、映画「ナポレオン」を楽しみにしていた。「グラディエーター」の、あのローマ皇帝が忘れられない。

 

だが期待が過ぎたのか、正直言ってがっかりした。

私は、世に英雄とうたわれている一人の男の人生の「ドラマ」を見たかったのだ。

苦悩や喜びや愛や憎しみや・・・英雄としての表の顔と他人には見せない裏の顔。

名優ホアキンなら、それを惜しみなく表現できただろうに。

 

それなのに、映画は「いついつ何の戦いがあって、いついつ何の戦いがあって、いついつ戴冠式があって・・・」と、出来事をただ単に羅列したに過ぎなかった。なんじゃこれ?期待外れもいいとこだ。怒り心頭。

 

脚本が悪かったな。

いや、そもそも波乱万丈の男の一生を描くには2時間や3時間じゃ足りないよな。

あの尺なら、思い切って一つの出来事だけに絞って、それを徹底的に深く掘り下げる方がよかったんじゃないかな。

 

とはいえ、やはり名優だ。

ジョセフィーヌとの愛憎もつれる関係の見せ方は見事だった。自分に当てはまる所もあって、胸がえぐれるように痛かったりした。相手役の女優さんも上手かった。

 

まあなんだかんだ言って、これを機会にウィキペディアでナポレオンやジョセフィーヌについて調べたりして、これまで全く理解できていなかった(興味がなかった)欧州の歴史の一端を表面的であれ知ることができた。有難い。

 

そしてもう一つ。メキシコ在住の私にとって、とても大事な事があった。

 

それは、スペインからのメキシコ独立戦争(1810-1821)と絡めて映画を見たことで、ヨーロッパとの時系列的な関係がわかったことだ。

映画のどのシーンも、「これは独立戦争勃発の2年前だな」とか「独立戦争の真っただ中だな」とか「独立戦争が終わったころだな」と思いながら見ていた。

 

 

フランス革命勃発から約20年後にメキシコ(当時はヌエバ・エスパーニャ)独立戦争が起こった。欧州からアメリカ大陸まで民衆運動の波が届くまで、20年もかかったと見るか、長い歴史の時間軸からすれば同時に起こったと見るか。

 

それともう一つ。あの映画のとおりならば、今でもイギリス人とフランス人は仲が悪いんだろうなと思った。

 

そういえば、大大大好きな「名探偵ポワロ」にもその様子が描かれている。ベルギー人のポワロのことをフランス人だと勘違いするイギリス人が後を絶たないのだが、彼らは一人の例外もなくポワロを馬鹿にするのだ。それも「ふん、フランス人になんか・・・」と、超あからさまなのである。

なんでこんなにまで?と不思議に思っていたが、この映画を見て合点がいった。

 

そういうあれこれを考え、想像しながら余韻に浸るのが心地よくて、冬の夜長を有意義に過ごした。

 

※メキシコのスペイン語※

ナポレオン…Napoleón

ジョセフィーヌ…Josefina

グラディエーター…Gladiador

主演する…Protagonizar

ウィキペディアで調べる…Wikipediar (俗語)