引っ越してから

朝、NO窪駅

S朗と同じ車両で出勤。

S宿まで15分

満員電車の中手を繋いだ

朝のデートが楽しかった。

互いの

1日の予定を確認して、

現場に向かう。



1日の終わりに

A坂で待ち合わせて

食事をして、二人で帰る。

いつものお店の

カウンター席に並んで座る。

溶けていく氷で

少しづつ薄まっていくお酒。

グラスをゆっくり回していると、

いつかのS宿が

頭の片隅に浮かんで

それから…ぼんやり打ち消す。


あの日、

グラスの水滴を

ただ眺めて

自分が

誰かを傷つけることに

胸を掴まれる思いで

振り切った。

S朗に背中を向けて

走って逃げた自分を

忘れた訳じゃない。


苦しいのは、

自分で選んだ罰だから。

S朗のせいじゃ…ない。