NO窪にあったお店は

活気があって

いつも賑わっていた。

そこから二人で帰る。

S朗さんちを通り過ぎた。


「いいの?」


「いいよ。」


それから

もう少しだけ

二人きりの時間が続くように

M由の家に向かう小道。

12時少し前だけど

手を繋げないのは、

M由の罪悪感。

距離をとりたいのに

いつの間にか

恋人の距離に

並んでしまうのが

余計に寂しくなった。


(次の角を曲がったら

 S朗さんを見送ろう。)


って思う。


「そこでいいよ。」


って…、言えたのは

そこから先は

M由の家が見えてしまう。

そこから先は

S朗さんを《入れてはいけない》

そんな気がした。


「もう少しだけ。」


(もう少しだけ…)


(それが悲しいから

 『もう少しだけ』はここでいいの。)


「遅いから…。」


「お家まで送るよ。」


好きだから、

だから

『ここで帰って。』

って…言ったんだよ。

胸が《キュ》って言ったみたいに


(頭で考えても

 心って思うように聞いてはくれない。)


もう一度言う。


「ここでいい。」


「嫌だ。」


「本当にここでいい。

 もう遅いから。」


「送りたい。」


S朗さんは折れない時

こういう時。


「うん。」


意志が弱いのはM由。

好きだから…。


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