おくりうた#15
君に会うのに
足が鉛みたいだ
猫がお気楽に
鳴いてみせる
路地の影から
メンソールのため息
全てが孤独を
強くさせる
腫らした
瞼くらいじゃ
引き止められないこと
わかっていながらも
伝えに行く
君が待ってるんだ
この世界で
自分より
守りたいものが
どれほどあるだろう
「それ」を言える
自分はどれほど
幸せものなのだろう
坂道を越え
薄紅色の雪が
ひたすら背中を
押す気がする
もう少しなんだ
どんな顔すればいい?
明るく見送れるはずもない
気持ちの1ミリも
伝えきれて
ないんだって
地面の感覚が
なくなるまで
駆け続けたんだ
この街から
名前くらいしか
知らない場所へ
行ってしまう
遠い場所の
新しい君に
どれほどの僕がいるの?
いつも通り
いつものバッグに
いつもの笑顔の
君がいた
だから僕は
いつもと同じキスを
しようとしたけれど
いつも通り
同じ僕らでは
いられなくなって
しまうから
今日のキスは
また会える日まで
君が預かって
君に預かってほしい