その昔、私は勇敢な少女でした。

家のあちこちを素早い動きで目の前を横切る奴を発見するや、新聞紙を丸め、


うぉりゃ~~~~っ!

と果敢にアタックしていました。

"""\(*`Д´)ノ///…


左手(ゆんで)に殺虫剤。
右手(めて)に丸めた新聞紙の二刀流で奴を部屋のコーナー追い詰める事も厭いません。

殺めた後はちゃんと亡骸をゴミ箱に自分で捨てる少女でした。


が。

その勇敢果敢な小童(こわっぱ)時期は短く、

今では奴と遭遇すると

別れた恋人同士が地元商店街で
運悪く無防備に遭遇し、
互いに顔色も声も失って、
ただただ、その場に立ち尽くす...

みたいな状況で、

非常に気まずい、
嫌な汗が背中を伝っても、
相手の一挙手一投足の動きを一瞬たりとも見逃し後手に回らぬように息を殺していました。

夜深く、
緊張の糸が冬の外気の様に厳しく怜悧に互いの視線の間に張り詰め、
奴と私は
どちらかが動いたら「負け」というゲームに強制的に参加していました。
永遠のような一瞬を共有する訳ですよ。

しかし私はゲームに勝ちたい気持ちは無く、ただただ奴と私の動線が重ならないように祈るばかりでした。


そんな弱気な私を作った事件。

ある秋の夜。
高校受験に向けて、机に向かい勉学に励む私は自分の背後で不穏な雰囲気を感じました。


奴がいる。

動物的な勘を発揮し
私は背後に全神経を集中し、

奴に気付かれないように
新聞紙の代わりとなる物に、
そおっと手を伸ばしました。


そして振り向き様に、壁高くで固まっていた奴にアターーーック!


の筈が。


しまった!
外したかっ!!?


チッ。


仕留め損ない舌打ちをした、その時。


奴は

飛行を始めました!





ヽ(;゚;Д;゚;; )  オイオイオイオイ


初めて見る奴の逆襲。

そして奴は最初から狙いを定めていたかのように最短距離の弧を描き、私の狭い額に着地。





ギャアアアアアアアーーーーーー。



勇猛果敢だった私が綺麗さっぱり消滅した瞬間でした。


悔しい事に奴の策略は最小限の力で最大限の効果を生みました。


以来、弱腰街道まっしぐらの私。


唯一の武器、殺虫スプレーを使い、
奴が私に飛びかかられない間合いを慎重に測っても、

少しでも奴が動こうものなら、
脱兎の如き勢いで逃げて行くようになる始末。
                                       ∩∩
(((((((((((((((((((((((((((((゚д゚;)//  コナイデーー



さて、奴の姿を殆んど見かける事無く、平穏安寧に過ごしていた令和元年の夏。


災害級の猛暑のせいか、
蚊も動けないのか、
家族で一番蚊に愛されている私ですら蚊に刺されず、

戸外で元気よく啼いていたカラスも見かけなくなり、

人間は日中どころか夜中ですらエアコン無しでは過ごせない日々。

元気なのは短い生を一生懸命謳歌しようと頑張っているセミ達だけでした。


そんな中、お盆期間に
台風が九州四国の間、豊後水道を通過しました。

台風が接近、通過している間、
それまで夜中でも32度を下らないうんざりした我が家の気温が30度近くまで下がりました。


いやー、
快適。快適。
やっと、ぐっすり夜眠れそう!
(*´ω`*)


と、快哉を叫んでいた夜。
リビングでテレビを見ていると

不穏な黒い物体が左から右へと瞬時に横切りました。


駄目だ。
見なかった事にするのだ。


本能的にそう判断しました。


見なかった事にしよう。
誰も幸せになれない。


そう自分に言い聞かせ、久しぶりに中途覚醒しない夜を楽しく過ごす気満々で床に就きました。


しかし、残念な事にお手洗いに行きたくなり目が覚めてしまった私。
こわごわ廊下を歩いていると。



わわわ。
いるじゃないですか!!!
奴が待ち構えているじゃないですか!!!





君子危うきに近付かず。


奴の強烈な視線を感じながらも、
ソロリソロリと和泉元彌なのか、
お笑い芸人チョコプラの物真似か、
もはや区別できないパニック状態で、

動かない奴を注視したまま勇気ある撤退を行いました。

しかし、胸の内には不穏な潮の満ち引きありました。



さらに
次の日の夜も涼しかったのです。

そして奴は現れました。
私以外の家族の前にも。

もちろん私の前にも。

夕飯時、台所にある食材を保管している引き出しを開けた瞬間、引き出しの中を移動する奴の姿が見えました。


ヽ(;゚;Д;゚;; )ノ  ギャァァァーーーー!





いかん。
このままでは。
秋を前に奴等は活発化するに違いない。
このままでは奴等の思うつぼ。


私は決意しました。
明日、速攻ドラッグストアに行く。
行く。
行かんといかーーん!!!



次の日。
私はドラッグストアで購入してきた新しい駆除剤を家の方々に設置しました。

今まで置いていた駆除剤とバトンタッチです。

古い駆除剤の1つに私は律儀に設置した日付けを書いていました。



「 2018.6 」


新たに購入してきた駆除剤の箱を見ると

「1年間効きます!」

の文言が大きく誇らしくドヤ顔で踊っていました。
!!!Σ( ̄□ ̄;)



比較して良いものか分かりませんが。

まるで神社仏閣でお受けしてきたお札のようではありませんか。
効力を発揮するのはきっかり1年間なんですね。




どうぞ奴から我が家をお守り下さい...。

祈るような気持ちで「 2019.8 」と油性マジックで記入して、私は最後の1個を設置したのでした。






今日もお立ち寄りいただきありがとうございました♡

明日もお立ち寄りの皆さまに素敵なことが起きますように(´▽` )☆

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