祖母の様態が急変した。すぐに何かがあるわけじゃなさそうだった。
病院へ行きたいけど行けない…
けんは仕事を休めない、と言う。
せめて体がラクならば、チビたちを抱えて行ける。
今の体では抱えられない。明日の昼まで行けない。
翌朝、どうにかチビたちを車に乗せた。
病院で伯母と待ち合わせている。
伯母は車までチビたちを迎えにきてくれた。
集中治療室へ1人で入る
「ついさっき、睡眠できる薬をいれたばかりなの」
「えっ…どれくらいで目が覚めますか?」
「目が覚めるとツラいの、このまま薬はきれないわ」
「お願いです。話したいんです。薬やめてください」
「おばあちゃん苦しがるわ。だから薬いれたのよ」
「ちょっとでいいんです、お願いします」
「意識はあるかも知れないわ、手を握って話しかけてみて」
おばあちゃんの手を握り締め
「ごめんね、夜くればよかった。ごめん…」
おばあちゃんの手に微かに力が入った。
「お願い、頑張って。ねぇ~頑張ってよ、おばあちゃん」
手を握り泣きながら、話しかけた。
手を握り締めてくれた。
チビたちがいる…15分ほどで病室を後にした。

翌日朝、すぐに病院へ来るようにと言われた。
離れて暮らす母に連絡をとり、チビたちを抱えて病院へむかった。
遅かった…
静かに息をひきとったそうだ。
葬儀の席で、知らないおばさんに声をかけられた。
「最後に話した時にね、孫に会いたいって言ってたけど、会えたのかしら」
「いいえ…」
「残念だったわね…」
「はい」
後日、けんに
「ごめん、俺がケガさせなければ…」
「別にいいよ…」
思いっきり心の中で泣いた。
ママがいなくなってからも、ずっとおばあちゃんは側にいた。
誰に叱られても無視できたが、
おばあちゃんの言葉だけは無視できなかった。
どんな時も、ななの味方だった。
厳しい幼少時代も、おばあちゃんは守ってくれた。
おばあちゃんと最後に意識のあるうちに会いたかった。
今でも、悔やむ。
けんを許せないことの1つになっている。
崩れた室内を片付け、旅行の用意を始めた

鈍い痛みが、足を伝わり走る。
翌日、引きずりながら旅行へ行く。
「ゴメンね、できる限り俺がやるから」
旅行はキャンセルだと思っていた。
しかし、ななも一緒に行くことになった。
みんなには階段から落ちたことにした。

殴られてから3日後
出勤前に病院へ連れていってくれるという…。
もちろん階段から落ちたことにした。診断は打撲。
歩くのもツラく、車の運転は考えられなかった。
そんな時に限って…
思い出すと悲しくて、
今でも悔やまれることが起きた。
けんは、相変わらず怪しい。
会社の同僚たちと、1泊2日で旅行へ行くという。
例のごとく、1人で参加すると言う。
同僚たちも数人は、ここ2年位の間に結婚した。
「おかしくない?なんで同僚と旅行でピン参加?」
「ななが出かける時に何にも言わないだ」
「まる1日いないなんて変だよ」
「いちいちウルサいんだよ、我慢してれば…」
胸元を引っ張り、投げつけられておさえられた。
チビ1は、起きて見ている。チビ2は別室で寝ている。
10kgはあるラックを、ふすまにむけて投げつけた。
その後、ななの背中を力任せに一発殴った…
「うっ…」
そのまま倒れ込む。呼吸ができない。
痛い?あれ?泣いちゃいそう?でも泣けない…
普通じゃない、ななの姿を見て、けんが焦る。
「ゴメン、大丈夫?息吸って、吐いて」
「うぅっ…」
「ゴメン、ゴメンね」
「あっ…ぅ」
「ママぁ~ねぇーママぁ」
チビ1の頭をなでた。
「息が…できなぃ…苦しい」
「ゴメン、ゴメンね」

その旅行は一緒に行くことになった。

「俺は、チビ1の前でチビ2をかわいがらないよ」

と、けんが言った。たしかに・・・

ななの目は、どうしてもチビ2へ行ってしまうから

パパもチビ2か・・・とチビ1幼い心を痛めるだろう。

けんもパパなんだ。

見事にチビ2は、3歳までパパになつかなかった。


けんの仕事が忙しくなり、不在なことも多くなった。

一緒の時間を過ごし、会話をしても

聞いているふりをして、流されている。


夜中に看護婦さんが現れ、何度か陣痛検査をする。
「うん、きてるね…」
「なんにも感じないんですよぉ」
けんとチビ1の時のことや、いろいろ話しをしながら眠る。
眠りが浅く、何度も目が覚める。
朝7時過ぎ、明らかに痛い!けんを起こす。
「あと2時間でうまれるかな?帝王切開ヤダぁ」

「今の調子なら大丈夫だよ」
痛みが増していく…
8時を過ぎた頃、バチっと音がして破水
「けん、破水した!って言って」
看護婦さんがやってきた。
「分娩室行ってみようか?」
痛いけど、チビ1を出産する時ほど痛みはない。
分娩台に座ると、看護婦さんがレモンティーをくれた。
2日ぶりの糖分だった、一気に飲み干した。

保育器がスタンバイしてあった。
どうか無事に生まれてきますよーに

「まだよー我慢ねー」
「大きく息を吸って~吐いて~」
分娩室に入って30分。

ぎゃぁぁぁ

チビ2が泣いた…生きてる。