この物語は、創作物語です。
登場人物は、実在人物とは無関係です。
*写真が合うものが見つからなかったので
イメージでみてくださいね(*^-^*)
早いもので
もうすぐ母の１周忌
１年たっても悲しみは未だ癒えない
僕は法事のために
遠方へと帰省する
春休みは終わったというのに
何故か駅は
人でごったがえしていた
外人観光客はたぶん
桜🌸目当てだろう
長距離だから座りたかったけど
空いてるかな？
乗車して空席を探す
（あ、あった♪）
「すみません、ここよろしいですか？」
『はい、どうぞ！』
そう答えたのは
色白で整った顔立ちの
若い男性だった
無事に席を確保でき
ホッと一息を突くと
車窓から見える水色の空には
綿菓子のような雲が浮かんでした
そう思ったのは
駅中に新しくできた
綿菓子屋さんを見つけたからかな？
スマホを確認したあと
再度 外を見ると
建物ばかりだった景色は
いつの間にか
自然の風景に変わり
山や田畑の緑と
色鮮やかな春の花々が
目に飛び込んできた
（あ～やっぱり田舎は落ち着くな・・・）
そのうち
日ごろの疲れに
心地よい揺れが加わって
僕はいつの間にか
寝入っていた
ふと目を覚ますと
僕の頭は
隣の彼の肩を
枕代わりにしていた
「あ！ ご・ごめんなさい！」
ちらっ
慌てて涎（よだれ）がないか確かめる僕に
ぷっと吹き出して
『大丈夫ですよ(^^)』
と答える彼のその笑顔に
僕は 好感を覚えた
彼は窓の方へ向き直り
椅子に頭をもたれて
外の景色を眺める
僕はその隣で
膝に置いたバックに肘を置き
頬杖をついて景色を見ながら
彼の横顔をチラ見する
すっきりとした顎のライン
透き通るような色白の肌
女性なら誰もが見とれるような
美しく整った顔立ち
モデルかな？
何処に行くんだろう？
などと
チラ見どころか
いつの間にか
ガン見していた
ふいに電車がトンネルに入り
窓に映る彼の目と
その後ろに映る自分の目が
危うく合いそうになり
慌てて用事もなくスマホを触る
（見てたの 気づかれたかな？
怪しいやつと思われた？）
気まずく思っていたら
彼は降りる準備を始めた
（次で降りるのか・・・）
ちょっぴり残念に思いながら
彼の邪魔にならないように
立ち上がって通り道を空ける
彼は通路まで出ると
軽く会釈する
その時
まだ動いていた電車が大きく揺れ
彼はよろめいて
僕にすがりついた
僕は思わず
彼の体を支える
僕を見上げた彼
ほんの一瞬
二人の時が止まったかのように
見つめ合った
『ごめんなさい、ありがとうございます』
僕は去ってゆく彼の後ろ姿を見送りながら
またどこかで会えるといいなと思った
一周忌の法要
読経のあとの
ご住職のお話に
涙が頬を伝った
母に対して十分してあげられなかったことを
未だに後悔している僕は
その大好きだった母が仏様となり
痛みも苦しみもない世界にいるということが
せめてもの救いだった
帰りの電車は
余裕で席に座れた
この日の天気は
僕の母への気持ちの表れなのか
雨が降っていた
どんよりした空を眺める
母のいる世界は
晴れ渡っているんだろうな・・・
その時
『すみません、お隣よろしいですか？』
席は沢山空いてるのに
わざわざ僕の横を選ぶとは・・・
「どうぞ」
といって見上げると
そこに立っていたのは・・・
また会ったね！
