次の日の目覚めは良かった。
不安も一切感じなかった。
薬の効果だ。
頓服薬のロラゼパムはいくつかある抗不安薬の中でも効果は強い。
半減期は約12時間、つまり12時間後に薬の効果が半分になり、それから徐々に効果が薄れていくのである。この日は出張先から自宅へ帰る日である。
バス、あるいは電車に乗り空港へ向かい飛行機に乗るのだ。
バスは初日の予期不安から却下、電車で空港に向かうことにした。何本か電車を乗り継ぎ空港に着いた。
搭乗手続きを済ませ出発ラウンジへと入った。
まだ登場時間まで時間があったため、ラウンジは閑散としていた。
その時はまだらリラックスしていた。
そして少しずつ出発の時間が近づく。
人がどんどん増えていく。そして、少しずつ不安がやってきた。
僕は頓服薬を急いで飲んだ。
出発まで1時間弱、早く効いてくれ!
しかし、これは発作ではなく予期不安だ。
薬は効かない。
飛行機の中で発作が起きたらどうしよう。
飛行機に乗れなかったらどうしよう。
帰れなくなったらどうしよう。
頭の中は、起きてもいないことでいっぱいだ。
それでも登場時間は近づいてくる。
バスと違って飛行機は一度乗ったら降りることはできない。
来るときはなんともなかったのに。
そしてとうとう搭乗の時間がきた。
みんな席を立ち並びはじめる。
大丈夫1時間ちょっとだ。
大丈夫。
自分にそう言い聞かせ席を立った。
そして前の人に続き飛行機の中へと歩いて行った。
不思議なことに不安は感じなかった。
数秒前まであんなに怯えていたのに。
何故?
どうして?
僕は何に怯えていたのか?
その後は一切不安を感じることなく飛行機は目的地へと着いた。
そして、僕は自宅へ戻ったのだった。
やっと家に着いた。
安心感でいっぱいだった。
次の日の朝がくるまでは......。