※注意! 今日はガチです!『マイ・バック・ページ』 | 郷土愛バカ一代!

※注意! 今日はガチです!『マイ・バック・ページ』

皆様、おひさしぶりぶり~!ピストン隊長です。
ヤングドーナツ食べたり、よっちゃんイカ食べたり、金ちゃんヌードル食べたりして、
自分探ししている間にこんなに時間がたってしまいました。
二週間もご無沙汰していたら、自分のキャラを痛快なまでに忘れてしまったので、
そのほとぼりが冷めないうちに、書きたいことを書いてみようと思います。

朝日新聞の元・編集員であり、評論家として活躍する川本三郎の自伝的小説を、
気鋭の若手監督・山下敦弘が、妻夫木聡、松山ケンイチを競演に迎えて映画化した
『マイ・バック・ページ』。
四年に一度稼働するピストン隊長の千里眼が「絶対に見ろ!」と反応し、
カップルと家族連れで溢れかえる土曜のファボーレ富山を、「悪い子いねえがあ!」と
秋田ナマハゲの要領で蹴散らしながら鑑賞してきたしだいです。

郷土愛バカ一代!

ベトナム反戦運動、全共闘運動が激化していた60年代末から70年代初頭を背景に
過激派の学生活動家・梅山と、若手ジャーナリスト・沢田の出会いが引き起こす、
衝撃的事件の顛末が描かれていくのですが…。
わたくし、久しぶりに「え、えぐっえぐぅう!」とドブ色のあえぎ声をもらし、
ポップコーンをぶちまけながら号泣してしまいました。

1969年、学生政治団体・全共闘が、大学解体・国家権力の打倒をめざし、
東大安田講堂を占拠した“東大安田講堂事件”。この事件は警察側に陥落させられた
ことで終焉を迎え、安保闘争を発端とする全共闘運動は急速に失速していきます。
その代わりに台頭してきたのが、武力闘争に傾いた、内ゲバといわれる集団リンチも
起こすような過激派でした。物語はここから始まります。

かつて東大生として、安田講堂が陥落させられていくのを側で見ていた
新米編集者の沢田は、真のジャーナリストを目指すべく活動家の動向を追っていた。
そんな折、沢田の前に、革命のためなら暴力も辞さないという過激派の学生活動家の
梅山が現われる。「世界は変えられる」と革命に闘志を燃やす梅山のエネルギッシュな
姿に惹かれた沢田は、“思想犯”である彼に単独取材を申し込む。
立場は違えど、安田講堂に感化された同世代のふたりは奇妙な交流を深めていくが、
独善的に突き進む梅山の革命は、やがてひとつの悲劇的事件へと着地してしまう。

「世界を変えたい」と願い、権力に反旗をひるがえすピュアかつ危うい初期衝動。
「世界を変えられるわけがない」脆弱すぎる革命をヤケクソに貫き通そうとする信念。
空っぽのくせして、思想犯としてハッタリをかまし続ける逆ギレのテンション。
世界がどうこうとか国家権力がどうこうの大義名分を掲げながら、
何者でもない自分を全力で否定しようと躍起になる梅山は、
革命という名のオナニーに、シコシコ励むニキビ面の兄ちゃんにしかすぎません。
でもそんな近所のアンちゃんが、単なる時代の傍観者でいることを恐れ、
自分の存在証明を刻印せんともがく姿は、どうしようもなく痛く泣けてきます。
そして同世代の仲間が蜂起した革命を、ただ安全地帯から眺めているだけの自分に
苛立つ沢田自身も、梅山と同じようにもがき続けています。
革命ってなんだろう、思想ってなんだろう、本物ってなんだろう、自分は誰なんだろう。

狂騒的な高揚感や、現状を打破せんとする使命感。
何も成し遂げられてない焦燥感、払しょくできない閉塞感と空虚感。
そんなあらゆる憤りや感情が、物語の至る所に散らばり、それぞれがドクドク
と激しく脈打つ中で、ラストの沢田の慟哭が、一気にそれらを収束していきます。
ひとり言のようにつぶやく沢田のセリフには、沢田と梅山が犯したことへの罪深さと、
何かを信じようとした彼らの青春の残像を突きつけられた気がして、
涙が止まりませんでした。

私はあの時代の“怒れる若者たち”が主張する全共闘、民青、革マルだとかの各派の
イデオロギーもよく知らないし、彼らが心酔していた革命家に対しても
「毛沢東って、うちの町内会長の田中さんに顔似てるよね?」ぐらいのノリでしかない。
あの時代を肯定するでも、否定するでもないです。
それでもこの物語に描かれていたのは、私自身が今も抱え続けている青臭い憤りや、
一方ではすでに失くしたものへの憧憬だったり、何かを信じて裏切られたり、
裏切ったりしたものへの鎮魂歌だったりするわけです。
たやすく共感したとは言いたくないですが、客観的に事実として観れたわけでもなく、
思いっきり自分の極私的なものにリンクしてしまいました。
そしてこの作品を、山下敦弘監督、向井康介脚本、妻夫木聡、松山ケンイチという、
私と同世代のスタッフ&キャストが作ったということが、大きな衝撃でした。

郷土愛バカ一代!

松山ケンイチは相変わらず憑依型のスゴイ役者だったんですが、
妻ブッキーの演技はうまい下手とかではなく、熱く伝わるものがありました。
脇役の配役も抜群だったし、CCR「雨を見たかい」や、真心&民生によるディランの
カヴァー曲「マイ・バック・ページズ」も、すごくドストライクだった。
「♪ああ、あのころの僕より、今の方がずっと若いさ~」
なんて歌われたら泣くよ~。そりゃ泣いちゃうよ~!!!

自分は何を信じ、何のために生きるのだろう。
その答えのでない命題に、また取り組む勇気がわいてきました。
本当に素晴らしい作品でした。
『マイ・バック・ページ』、ファボーレ富山で、17日まで上映中です。
はい、ここテストに出るから絶対に見とくように。必須項目よ~! 急げ!
http://mbp-movie.com/