時影の魂魄を胸に抱いた朱顔

時影が目覚める

 

朱顔が誰かわからない時影

時影の魂魄が安定するまでの間は

時影は朱顔と出会う前の記憶しか持てない

 

朱顔を思い出せば

精神が揺らぎ

時影の魂魄は散ってしまう

 

朱顔は

世子の記憶しかない時影の世話をしながら

共に三日を過ごす

 

時影が完全に復活した後は

二度と時影を殺すことのないように

彼の傍を去って

二度と会わないと決めた朱顔

 

目覚めた時影は

苦悩を知らない無邪気で可愛い

世子のままであった

 

世話をする朱顔を召使とは思えず

過去に二人の間に何があっても

自分はそなたを責めない

共にいると心地よいと朱顔に言う

 

日一日と

朱顔への想いが募っていく時影

 

夕方になると眠り

朝方に起きる時影は

眠くなると朱顔の肩に

ほほを寄せて眠る

 

そのあどけない時影に

ますます愛しさが募っていく朱顔

 

朱顔はこの三日間を

これからの生きる力にしようと

神からの贈り物だと思うのだ

 

最後の一日

時影の魂魄が安定したのを見届けた朱顔は

初めて出会った繁星湖の岸で

その時踊った舞いを舞う

 

舞い終った朱顔に近づいた時影は

「以前にもこの舞いを見せたことがあるだろう?」

と問い

「二人は両想いだ

ここで共に生きよう」と言う

 

「いいか?」と聞く時影

「明日の朝お返事します」と朱顔

「約束だ」嬉しそうな時影

 

「ええ、約束よ」

涙がこみ上げる朱顔

 

二人並んで星を見ながら

時影は朱顔の肩に頭をのせて

眠ってしまう

 

心配しながらやってきた重明

後は俺に任せて

と時影を抱き

朱顔は一人去っていく

 

8度目の別れ

「時影を殺す」運命を背負った朱顔には

彼の傍を離れることでしか

その災厄を逃れられない

 

朱顔の覚悟だ