☆ブログ版☆ 「東京ホームレス」 村上知奈美 -222ページ目

支援物資の箱

          支援物資  


週末の代々木公園… いつも同じ男性から届けられる、という

支援物資の箱の周りに おっちゃんたちが集まっていました。

箱は2つあり、1つは洋服が入ったもの、もう一つは、主に薬でした。


マスクや うがい薬、胃腸薬に絆創膏、石鹸…

薬局で売られているような薬が何種類も入った箱は、大人気。


どれもこれも未開封のものばかりで…

純粋に薬が手に入って喜んでいる人もいれば、

「これは100円で売れるぞ」などと、収入源にしようとしている人も

いて… かなり盛り上がっていました。

 

「誰が こんなにもってきてくれるんだろうなあ…。」

「いつも同じ男の人が持ってきて、おいてってくれるんだよ。」

こんな会話が交わされたりして…。

 

皆、とてもうれしそうでした。


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私の誕生日⑦最終話

みっちゃんが泣き始めると、I さんは こう続けました。


I:「でもよ、何時間待ってでも、結局会えたんだからいいじゃないか。

  会えてよかったなぁ…ちなみちゃん。

  みっちゃん!待っててくれる人間がいて、お前、よかったなぁ…。

  そう思わないか?」


:「……うん、そうだね。」


I:「ちなみちゃんもよぉ、こうして、結局会えてよかったなぁ、って

  楽しくいかないと…せっかくのお前の誕生日が台無しだぞ。

  せっかく会えたのに、これっきりになったら寂しいだろ?」


:「そうですね…。」


I:「俺なんかさぁ、気楽でいいけどよ、気楽でいいんだぞ…でもなぁ、

  待っててくれる人間がいたらなーって、時々は 思うね。」


:「じゃあ、今度は I さんのお誕生日に集まろうよ!」


I:「生きてりゃいいことあんのかな、そのうち…。

  とりあえず、俺は、もう少ししたらいいことあるぞ!

  アパートに入れっからさ~!もうちょっとだ!!

  で、今度さぁ、みんなで奥多摩にバーベキューしに行かねえか?

  バーベキューはいいぞー。自然の中で食う肉はうめぇぞー。」


Iさんが 場の空気を変えてくれました。

それから、私たちは、ちょっぴり気まずい雰囲気の中、皆でわいわい

おしゃべりをし、

いつしか、いつものように笑い合って、楽しく時を過ごしました。


そして、気づけば夜・・・

別れ際、寝てる振りをしながら薄目を開けて、私をみていた I さん…

「またな。」 と言って 手を振ってくれました。



:「駅まで送ってくよ、危ないから。」


みっちゃんが送ってくれるというので、駅までの道のり、一緒に歩きました。

その時、話をして分かったことがもう一つ。

遅れてきたみっちゃんは、私とIさんが楽しそうに話しているのを見て、

その輪の中に自分からは入ってこられなかったようなのです。

(…そんなこと、全く想像がつきませんでした。)


駅に着き、私たちは、仲直りの握手をしました。


:「みっちゃん、今日は、強く言っちゃってごめんね。」


:「私も、すみませんでした…。ごめんなさい。」


:「また遊ぼうね。」


:「また来てください。」


いつもお酒を飲み、冗談ばっかり言って楽しませてくれる Iさんは、

きっと、過去、いっぱい傷つく経験をしたりして…

人を信じられないけど、信じたいんだ…今日の出来事で、

Iさんの発する言葉から、「孤独感」や「やさしさ」が、

痛いほど伝わってきました。


そして、やっぱり人との付き合いが下手で不器用なみっちゃん…。


二人から、私は、とても大きな何かを学んだように思います。

私にとって、今年の誕生日は、忘れられない日となりました。


          2005.6.19(みっちゃんと)


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私の誕生日⑥

pm5:30すぎ… 

「あれ!あそこ!みっちゃんじゃない?」…近くにいた人が教えてくれました。


あ!本当だ!みっちゃん!!!

思わず、駆け寄りました。


:「みっちゃーーん!どうしたの?待ってたんだよー!」


:「今日はもういい!帰ってちょーだい!!明日にして!帰って!!!」


…思いがけない反応が返ってきました。


・・・・・・。


:「みっちゃん、今日約束してたの 忘れたの?」


:「覚えてた!でも、もういい、もう寝るんだから帰ってよ!疲れた!」


・・・・・・・・・・・・・。


:「分かった、帰る。でも、その前に、一つだけ聞いてもいい?

  どうして みっちゃんは約束してて、覚えてたのに、そういうことを言うの?

  悪いな、とか思いませんか?

  何かあったなら話してくれてもいいよ。今日は何してたの?

  Iさんも 私も、ずっと みっちゃんのこと待ってたんだよ…。」


:「いい!! 知らない!疲れてる!!帰って!!」


:「分かった… じゃあね。みっちゃんとは、もう約束しないかも。

  そんなこと言うなら、もう来ないかもしれないから…バイバイ。」


すると、みっちゃんは、急に笑い始め、「あはははは。ごめんなさい。」

と言いながら、私のあとを追いかけてきました。


:「みっちゃん、なんで急に謝るの?さっきまで帰れって怒ってたのに。

   疲れてるならもういいよ。怒ってるみっちゃん、おかしいと思う。

   謝るなら Iさんにも謝ったら?」


:「悪かったよー。だから謝ってるでしょ!悪かったと思ってる。

   ごめんなさい。」


:「何がごめんなさいなの?」


:「私、覚えてた。プレゼント買うよ。今から買うから。」


:「プレゼントはいいの。いらない。でも、約束したなら、それは守ろうよ。

   もし守れなくなったら電話してくれたらいいじゃん、みっちゃん。

   みっちゃんは、そうやってお仕事も休むの?

   お仕事は、一度も休んだことないって言ってたよね?

   ちなみさんとの約束は、そんな風に破ってもいいって思ったの?」


:「私、覚えてた。覚えてたけど、待ち合わせに早く着きすぎたんだよー。

   早く着きすぎたからさー、電話したの。Nさんに…。

   Nさんって、ホームヘルパーの男の人で、○○に住んでるの。

   だいぶ前、道で声かけてきたの。

   今日、アパートに来てもいいっていうから、そこに行ってた。

   仕事の人は怒るから行くけど、ちなみさんは怒らないと思った。」


:「分かった、Nさんの所に行きたくなったことはいいよ。怒らない。

   でも、予定が変わったなら、せめて電話して。それを言ってるの。

   いつも、みっちゃんは、よく電話してくれるじゃない?


:「Nさんと話してたからさあ…。だから、ごめんなさい!!

   でも、いいじゃないのよ!Iさんがケーキ買ってくれたんでしょ?

   Iさんがいたんだから いいじゃないのよ!!」


みっちゃんが投げやりになって、言いました。

…この言葉に、私は、大人気なく 腹が立ち、少し悲しくなってしまいました。


そのときです。今まで黙って聞いていたIさんが、口を開きました。


I:「ちなみちゃん! 俺なんて、10代の頃からそうやって裏切られっぱなしだよ。

  もう、いちいち腹立てんな。仕方ないだろ?みっちゃんの気が変わったんだ。

  誰も、誰かの気持ちをコントロールできねえってもんだよ。

  でも、俺も○○駅には行けなかったんだし、なら、俺のことも怒っていいぞ。

  期待して信用すっから、そうやって怒らなきゃいけないんだよー。

  あんたはマジメなんだなあ。マジメなとこが大きいんだ。」


:「……。でも、みっちゃんは、約束破った上に、こんなに怒ったりする

  人だとは思わなかったから…。」


I:「甘いなあ。甘い! 人なんか、信用できねぇぞ。」


この会話を聞いて、みっちゃんが泣き始めてしまいました。(つづく)


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私の誕生日⑤

Iさんと 雑談をしながら、みっちゃんを待つこと30分…。


:「まだ来ないですねー。どうしちゃったんだろ、みっちゃん…。」

(落ち込みモードな私)


I:「そのうち ひょこっと顔出すよー。さっき俺に言いに来たんだから。

  それよりさー、俺、喉渇いたなぁ。何か飲みもん買ってきてよ。」

(1000円札を差し出すIさん)


:「えー。イヤです。みっちゃん来るかもしれないし…

   ここで待ってますよー。Iさん、自分で行って来てくださいよ。」


I:「マジメだなぁ。マジメ、マジメ!!!

  いいよ、じゃあ俺一人で行ってくるわ。じゃあな!」


:「やっぱり私も一緒に行きます!!」


コンビニに買い出しに行くことに…。


I:「誕生日なんだから、好きなもん選びな!」


:「いいよ、いいよー。自分で買うから…。」


I:「いいって言ってんだよ!ケーキも買うか…よし!コレとコレとコレな。」


          Iさんからのプレゼント


…ロールケーキと フルーツがいっぱい入ったババロアと ジュースを

買ってもらいました。


I:「ちゃんとしたプレゼントはよぉ、ちょっと待ってくれよな。

  7月の第一週になったら給料が入るんだよ。その時でいいか?

  フェラガモの靴、買ってやるよ!オシャレは足元からって言うだろ?」

(なぜか、いつも "フェラガモの靴" を買ってあげる、と言ってくれる Iさん…)


:「本当にいらない!!プレゼントはいいの!今日忘れずに来てくれた

   だけで十分だってば!!それに、ケーキも買ってもらったし。」


…涙が出そうでした。(理由は上手く説明できません。)


元の場所に戻り、再びみっちゃんを待つことに。

Iさんと色々とお話をしつつも、時々、探しに 席を外したりしながら…。


:「みっちゃん、見かけませんでしたか?」 

みっちゃんがいそうな場所に行っては、色んな人に聞いてみました。


皆、"1時ごろに見かけたよ…" と、話は一致しているのですが、

手がかりは 何もありません。


:「見かけたら、○○へ来るように伝えてください。お願いします!」

みっちゃんを知る人に お願いしておきました。


そして、それから約2時間後、pm5:30すぎ、やっとみっちゃんに会うことに

なるですが…。 (つづく)


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私の誕生日④

いつも集まって話している その場所に到着したのは、pm3:10すぎでした。

そこに みっちゃんの姿はなく、タオルをかぶって横になっている人が

目に入ってきました。(もしかして…Iさん?)


近くに脱ぎ捨てられていた靴に見覚えがあり、Iさんかな?という気がして、

声をかけてみようと思ったのですが… 

"いびき" が聞こえてきたので、とりあえず やめました。


そこで、ちょっと 散歩でもしながら 時間をつぶそうかなあ…と

歩いていたら、Iさんのことをよく知る Rさん に会いました。


:「Rさん、あのベンチで寝てるのって、Iさんかなぁ?

  今日ね、2時に○○駅で待ち合わせしてたんだけど、会えなくて…。」


R:「あー、そうそう、あれ Iさん だから!起こしてみな!!

  Rさんが起こしていいって言ったって言えばいいからさー。

  あの人、珍しく、今日来てんだよねー。

  ここんとこ、ずっと仕事があって、ホテルに泊まったりしてるから、

  ちっとも顔出さないんだよー。ここには、昼すぎに来たばっかだよ。」


:「え?そうなんですか?平日って、最近ここに来てないんですか?

  先週も、先々週も、土曜とか日曜日、ここで話したりしたんだけどなー。」


R:「そうそう、なんかねぇ、土日になると来るんだよねー。」


色々と話を聞いて分かったのは、Iさんは、今日はおそらく、わざわざ出てきて

くれたのだということ…。(じゃあ、ひょっとして約束忘れてなかったのかな?)

はっきりしたことは分からないながらも、Rさんと話して 少しホッとしました。


そして、もう一度、その場所に戻ると… Iさんは 起きていました。


I:「よぉ!来たか!!」 …私の姿を確認するなり、Iさんが声をかけてきました。


:「よぉ!じゃないですよ~!

   Iさん、なんで 待ち合わせ場所に ちゃんといてくれないんですか?


I:「俺、すっげー体調悪くてさー。あんな遠くまで歩けねーや、と思って。

  ここにいりゃ、あんたのことだから、来っかなあと思って待ってたんだよ。」


:「Iさん、それ調子よすぎですよ~。本当は忘れてたんじゃないですか?」


I:「そんなことねぇよ~!約束なかったら、俺、こんなとこに用はねぇから~。

  ずっと覚えてたよ、ずっと!!先週も言ったろ?俺忘れてねぇよ。

  あ、そういや、さっき、みっちゃんにも会ったぞ。みっちゃん、どうした?

  ちなみさんが来るからって、確認に来たぞ。」


:「え?だって、待ってたけど、みっちゃんも駅前にいなかったんですよ!」


I:「じゃあ、ここで待ってたら来るだろ、そのうち!」


そんな訳で、一緒に みっちゃんのことを待つことに…。(つづく)



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