▍10のパイロット都市で、診療所設置の制限が無くなる
先日、国家衛生健康委、国家発展改革委、財務部、労働力資源社会保障部および国家医保局が《診療所拡大促進パイロット地区に関する意見書》(以下《意見書》)を制定した。
《意見書》は合わせて5つの部分に分かれる。
【第一部分】
2年間で、北京・瀋陽・上海・南京・杭州・武漢・広州・深圳・成都・西安といった10の都市を診療所建設のパイロット地区とし、その経験に基づき診療所建設および管理政策を完全なものにする計画である。
【第二部分】
診療所の営業許可政策を最適化する。診療所参入の手続きを簡素化し、設置制限の計画を取り消し、営業許可制から報告制へと変更する。また診療所の要求基準を改訂し、設備施設などのハード面に重点を置いた審査から、医師の資質や能力の審査にシフトする。
▍医師が診療所を開設することを奨励
同時に、5年以上の経験を持ち、中級以上の資格を持つ医師が、専任または兼業で専門診療所を開設することを奨励する。
【第三部分】
診療所における医療サービスの向上。診療所が医療連合体へ参加することを奨励し、診療所の規模化・集団化による発展を支持、規範化・標準化された管理やサービスのモデルを形成する。政府は、条件に合致する診療所について、家庭医師契約を提供することができる医療機構へ参加させる。
基本医療衛生サービスを提供する診療所に対しては、人材育成面で政府が管理する基層医療衛生機構と同等の補助政策を適用し、基本医療衛生サービスを提供するための建設費や設備費に対しては、適切な支援を行う。診療所の専任医師にはより良い環境を提供し、価格・医療保険などについて診療所に有利な政策を提供する。
またこれ以外にも、業界の管理監督(第四部分)や保障実施(第五部分)についても強化する。
▍診療所のチェーン化が実現間近
《意見書》の中で、診療所の設置計画の制限を取り消し、診療所設置の審査を報告制の管理へと変更した。
診療所を開設したい者は、所在地の県(区)級衛生健康行政部門に報告し、《医療機構営業許可証》の申請処理を行うと、営業開始することができる。行政区域を跨いで営業するチェーン化・組織化された診療所は、一つ上の衛生健康行政部門へまとめて報告し、省級行政地区を跨いで営業する場合は、所在する省の衛生健康行政部門へ別々に報告する。
これらは診療所にとっては、非常に好都合な政策である。
また、条件に合致する医師が専任・兼業に関わらず、専門・総合診療所を開設することを奨励している。異なる専門の医師らが共同で医師組織を設立し、共同診療所を興すことも奨励している。社会組織がチェーン化・組織化された診療所を作ることも奨励している。診療所が医療連合体に参加し、その構成員と検査センター・画像センター・消毒供給センター・病理センターなどの機関を提携して設立、医療資源の享受を行うことを奨励している。
▍9月末までに、10都市で始動
これらを総括すると、審査の拡大、そしてより多くの医師の専任・兼業での診療所開設の奨励である。
《意見書》では、2019年6月末までに、各パイロット都市が所在する省級衛生健康行政部門が共同で、改革・財政・労働力資源社会保障および医保部門の発展を目指すことが要求されている。具体的な実施案が公布されたら、2019年9月末までに各試行地区でパイロット業務が始動される。
▍製薬企業が基層医療市場へ、更なる好材料か
以前から、三甲医院は製薬企業が必ず制したい市場であった。現在は80%の医薬品が公立病院市場で使用されているが、私立病院・公立病院の改革が最近の動向である。ある関係者は、基層医療市場の変化は医薬品市場や構造の抜本的な変化に繋がると言う。
今回の五部委の《意見書》により、診療所参入の条件が緩くなり、実力さえあればすぐにでも参入できるようになった。また条件に合った医師は兼業で診療所を開設したり、或いは優秀な医師を自分の診療所へ引き込むこともできるだろう。さらに注意すべきは、《意見書》では診療所が医療連合体に入ることを奨励している点だ。これにより、医薬品が基層医療市場浸透されるという、更なる好材料となるだろう。製薬企業にとっては、医療連合体の“中核病院”をとらえることで、より多くの医療機関へと放射状に広げられることとなる。