2016年末、Lillyが2種類の抗生物質Cefaclor・Vancocinの中国大陸地区における普及・販売権を亿腾医药に譲渡して以降、今日までに工場生産・物流管理に至るまで総合的な権利を亿腾が引き継いでいる。2019年4月23日に署名された協議条項によると、Lillyは手付金として7,500万USドルを受け取り、順調に引継ぎが終了した際には更に3億USドルを受け取ることとなる。

 

MNCの戦略調整と業務の剥離は最近始まったことではない。2016年以降、医薬品販売許可保有者制度を利用し、MNCが中国における製品の権利を販売するという状況が頻繁に発生している。Lillyの2製品の完全な剥離も、このような動向が、頻度においても程度においても強まっていることを示している。

 

国家医保折衝および4+7帯量購買により、MNCは中国において完全に目を覚ますこととなった。E&Yが先日発表した研究報告《中国医薬改革におけるMNCの対応戦略》によれば、MNCは中国で直面している状況に対応するため、組織の再構築を行い内部の効率を上げたり、特許期限の切れたオリジナル薬を剥離し、現在の重点分野に集約するなどしている。そして同時に、新薬を中国市場に上市し、広大な中国市場での拡大を図っている。

 

この先、どのような製品が売り出されるのだろうか? Lilly・Pfizer・AstraZeneca・Rocheなどはどのような分野を次の重点分野としているのだろうか? 国内の受け入れ企業はどのようなことを考えているのだろうか? このような動きが、中国医薬競争の構造にどのような変化を与えるのだろうか?

 

1.MNCによる製品Licensed-Out

 

Lillyは近年、次々と成熟製品を剥離している。今回売り出されたCefaclor・Vancocinは、どちらもLillyの製品ラインの中では古いものであり、中国に進出したのはそれぞれ1993年・1996年と、中国市場においても長く知れ渡る医薬品である。しかも、Lillyの抗生物質の中では承認されているのはこの二つのみである。

 

2018年11月、Lillyは中国地区における中枢神経分野の業務も売りに出す準備をしていると伝えられた。この分野ではFluoxetine・Olanzapineなど多くの製品が既に特許期限切れの状態であるが、Olanzapineは国家帯量購買の31品目リストに挙がっている。Lillyは成熟製品を剥離する一方で、抗癌剤など利益のより高い新薬開発分野に照準を合わせている。

 

2018年以降、他にも多くの大型MNCの製品権益が中国企業に移譲された。

 

2018年3月、Rocheはエリスロポエチン製品Recormonの中国大陸地区における普及販売権を、正式に亿腾医药に譲渡した。Recormonは1995年に中国大陸で販売承認を受け、2017年には国家医保リストに入っている。

 

続く11月、RocheはB型肝炎およびC型肝炎治療薬Pegasysの中国地区における独占販売権を歌礼制药に譲渡した。MNCの長期効果持続インターフェロンは、かつては中国市場において急速に成長していたが、国産長期効果持続インターフェロンの出現と、低価格での市場進出後は非常に圧力のかかった状態であった。これより以前にRocheと歌礼が提携したDanoprevirが既に成功していたこともあり、歌礼が肝炎治療薬の普及販売を行ったのは適切な選択であったと言える。

 

Rocheは2018年初旬、中国において組織の大きな調整を行った。特別医薬品事業部と普通医薬品事業部といった二つの事業部を設立したのだ。重点を置いている製品や研究開発中の新薬を見ると、Rocheは現在、乳癌・肺癌・血友病・多発性硬化症などの疾病分野に集中しており、2018年中国における業務増大もこれらの分野の製品が先導している。Rocheは中核業務以外の成熟製品の販売権を手放しているということだ。

 

かつて“金のなる木”であったNorvasc・Lipitorは、どちらも“4+7”帯量購買において主要都市で落選、Pfizerは成熟製品事業部upjohnを独立させ、辉瑞普强の傘下にしたとされる。後者はLipitor・Norvasc・Celebrex等を含む、心血管・精神病学などの治療分野に関係する特許期限切れのPfizerオリジナル薬を包括する。

 

明白な製品の剥離ではないが、LipitorとNorvascは既にPfizerの主要な部分ではなくなったということであり、この二つの製品の運営・販売はPfizerの戦略重点ではなくなったようだ。

 

2018年5月、绿叶制药は5.46億USドル(34.77億人民元)でAstraZenecaの抗精神病薬Seroquelを買い付けた。Seroquelは2001年に中国で販売開始され、以前はAstraZeneca傘下の売れ行き好調な医薬品であったが、特許期限切れに伴いその販売額は下降を続け、2017年の全世界販売額は55%減の3.23億USドルであった。绿叶が買い付けた、51の国家および地区におけるSeroquel関連製品販売総額は1.48億USドルである。

 

2018年中国におけるAstraZenecaの成長の要因は新製品であり、非小細胞肺癌治療薬のTagrissoや、中国で初承認を受けた卵巣癌治療薬PARP阻害剤Lynparzaを含む新薬の販売額は全体の11%以上を占めた。

 

2.国内製薬企業の“購入/Licensed-In”

 

製品の譲渡提携においては、これらの製品がどのような企業に“購入”されているかについても関心を持たれている。

 

主力となっているのは、Lilly・Roche等と提携している亿腾医药、AstraZenecaと提携している康哲医药といったCSO企業であろう。

 

兴业证券の研究報告によれば、現在CSO企業が行っているのは以前からの代行販売といったビジネスモデルとは異なる。主客転倒しており、製品についてのコントロール権が強く、実際には自身の製品に変えているのだ。権益を買い占め、製品の全面的なコントロールを実現することで、現実的な需要に即座に対応することができる。

 

亿腾は2001年に香港で設立された企業である。多くのMNCと提携を結び、20以上の医薬品の代理販売協議を成立させている。また近年は研究開発の方面へも業務拡大を図る。

 

康哲は1995年に成立、2010年に香港市場に上市した。康哲も最初は代理販売権を独占する形から始めたが、地域販売権の購入・株式提携・自主生産・OEM生産等の様々な方式を導入している。また、強大な販売ネットワークと優れた学術能力を備えているため、康哲は積極的にLicensed-In方式にて世界的に研究開発後期の新薬を導入している。

 

绿叶は前述した2社とは少し異なる。AstraZenecaのSeroquelを買収したことは、単に一種類の製品を購入することが目的ではないと考えられている。绿叶は一度の買収で中枢神経系薬物の全世界51の国家および地区の販売ルートや販売ネットワークを得たのだ。これは绿叶の国際化戦略の大きな助けとなる。さらに、中枢神経分野は绿叶が重点を置こうとしている分野の一つである。

 

また、Seroquelは世界的には低迷しているが、中国においては依然成長を続けており、2017年の成長率は33.27%、さらに値下げにより医保リスト入りを果たせば、Seroquelはさらに中国で成長が続くであろう。绿叶にとっては、35億人民元で一つの製品を買収したことは非常にいい買い物だったのである。
 

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