M.E.R.R.Y. (2007)


通算5枚目のアルバムにして、バンド史上最も前衛的な作品だ。V系ゴリ子の暴れ馬としては物足りないだろうが、メルヘンチックな雰囲気が漂う不思議の国のメリーと云ったところだ。 

傑作も多く、13曲中2曲を除いて、ほぼパーフェクトに近い。何よりも、全アルバム中異例の下手ギター曲が最も多く、上手ギターの存在が霞んでいる。元々細かい技術は上であるし、どこか凡庸な上手ギターを遂に超える時が来たのだ。 

『紅』を超える曲はないが、歌声喫茶モダン、ラストスノーは同レベルだ。しかも、片方はまさかのベース曲!一番つまらない変曲もベースだが、こんないい曲は2度と作れないだろう。

下手ギターも、勢い重視の特攻曲は作らない、作れなくなっていたようだが、それでも、これだけギタープレイに引き込まれるプレイヤーは他にいない。ギタリストとしては無名に近く、私もギターに興味が薄いというのに。 


しかし、この年が、バンドにとって大きなターニングポイントとなったのだ。恐らくトータルセールス的に良くなく、Victorとの契約は三年で打ち切りになったようだ。 

全盛期を感じていたであろう下手ギターにとっては、誰よりもショックが大きかったに違いない。彼は、非常に繊細で神経質で変態的なロマンチストだと思う。どこか遠い浮遊感のあるギタープレイもそんな特異さを表している。 

同期のPlastic TreeとかGazettEみたいな大御所クズバンドよりウケが悪いとか、貴様ら全員くたばればいいんだ。 


その後、バンドは逆行的なインディーズ路線へ進み、傷心の下手ギターは、徐々に存在感を薄めていった。
彼がアセンションするには、前衛的進化のメジャー路線しかなかったに違いない。 


SSS 


当時、打ちひしがれていた私は、これらを共有できそうな十代後半の少女に出会っていた。

客室乗務員になりたいバスケ愛の学生で、アリスの世界観が好きだと言っていた。 

下手ギターも元バスケ部だ。俺は大嫌いだが。

彼女と共に歩む人生は、最高にハッピーに成り得ただろう。満更一方的な片想いでも無く、私が早く立ち直っていれば、充分可能性はあったのではないか。 


ジュテーム?笑わせる。
愛による人類の救済を夢見る人間は多いが、愛とエゴと憎悪は同じものだ。馬鹿から陰謀論系、霊能系、支配者連中、救世主様に至るまで、アイアイアイアイハゲザルのように喚き散らしている。 

人は、愛では救われない。 

369メタトロンは、愛の概念は作ってはならないと言っていた。アダムとイヴが犯した原罪は、愛だと。 

数々の映画を見て思うのは、何かと諸悪の根源扱いされ易い白人は、実は最も愛情深い生物ではないかということ。あれほど自然に美しく、感動的に、愛の言葉をストレートに伝えられる人種は他にないのではないか。漏れなくハグにヨダレキスにナミダまでついてくる。

救いようのない現代文明の礎を築いたのは、聖書を引き継いだ白人だ。 

少なくとも日本語で直接愛は伝えにくい。気恥ずかしいというより、愛しているという語感のハマりが悪い気がする。事実、愛という字は、比較的新しい常用漢字だろう。元祖恋バナの源氏物語の訳にも滅多に出て来ない。 



死ぬしかねぇな。