フロントスタッフが
レストランヘルプから完全に離れたため
悦子が女性のフロントスタッフと
会う機会が全くといっていいほど
無くなった。
タイムカードを押すタイミングで
事務所に行くには行くのだが
朝勤務時間が終わってから
番長が出勤したり
週2シフトなので
タイミングが合わなかったり
番長が長話のお客様に捕まっていたり
フロントの電話対応中だったり
見事に数ヶ月すれ違い続けたそうだ。
暖かい季節になり
ちょっとお出かけのイベントの企画があり
特製弁当の相談のため
番長が調理場に顔を出した。
ハイキングの登山ルートの下見の時に
特製弁当の試作品を作って欲しいと。
番長の声を聞きつけて
ホールから調理場を覗きに来た悦子。
普段から『番長❤番長❤
』と
やたら慕っている悦子。
番長ダイスキすぎて
挨拶しようとしただけなのかと思ったが
そうでもなかったようで。
料理長との相談は数十秒で終了。
隣にいた私は挨拶すると
忙しそに挨拶を返して
番長はフロントに戻って行った。
すぐ後ろにずっと立って
料理長との打ち合わせを聞いていた悦子。
私と一緒に挨拶できるタイミングは
あったはずなのに
話をきくだけ聞いたら
無言でホールに戻って行った。
その後また、別件で番長が
レストランに来たのだが。
『番長、
お久しぶりですぅ!
』
デレデレの笑顔で
舌っ足らずの甘えた口調でご挨拶。
番長『あー、久しぶりやな奈美さん
』
『私ね、実は登山に目覚めたんですよ(*´ω｀*)』
番長『へぇー、急になんで？』
『イケメンの登山写真家がいて、それから気になりだしたんですぅ
あわよくば、彼に会えるかなって
』
番長『あー、そうなん？(笑)』
じゃあ、イベントに
参加してはいかがですか？
参加費数万払わなあかんけど。
イベント下見は遊びではないので
もちろん『一緒に行く？』と
誘われることもなく。
悦子的には、他多数の参加者がいる
イベント本番にも興味がないのだろう。
｢そのイベントはいつですか？私も参加したいです
｣とは言わなかった。
本来のレストランへの伝言を済ませ
番長はフロントに戻って行った。
数日後。
『こんどぉ、番長と山登りすることになったのぉ～
(*´ω｀*)』
私『あのイベントに参加するの？』
『ううん。今度のお休みの日に一緒に行くの
番長の山登り師匠と、先輩と私と4人で行くことになったのぉ～』
私『あーそうなの？楽しんできてね。
』
(なんか、
50目前のBBAのはしゃぎ方じゃねーな。
気持ち悪っ
)
と思いつつ。
あまり膨らませずにスルーしたかったが。
なんか色々喋り続ける悦子。
よほど嬉しいのか楽しみなのは分かるが。
仕事中やから、そろそろ
手を動かしてくれるかな？
なんでも、先日の
『登山に目覚めた』宣言のあと
事務所でさらに番長に
登山デビューしたいけど
｢1人じゃ無理ぽ｣と猛アピールをして
『じゃあ、連れてったるわ』の言葉を
引っ張り出したそうな。
番長の方でも、登山仲間ができたのが
嬉しかったのか
初心者でも楽しめるように
師匠や先輩と
打ち合わせをしてくれてるとか。
やってみたかった登山への
ワクワクよりも
『私のために番長がなんかしてくれてる』
の喜びの方が強烈に伝わってくる。
聞いてて疲れるなーー
(まともに聞かなくてもいいのに
聞いてイライラしてる自分が
アホなんだけどね)
で。
イベント間近に迫った勤務日。
『あっしたっは登っざん♪
あっしたっは登っざん♪』
なんかアピってくるな。
めんどくせー
『あー、楽しみだねーよかったねー、晴れたらいいねー
』
午前中勤務でその日は終わり
午後から買い物に出かけたら
雲行きが怪しくなり
帰宅直前にポツポツと降り始め
駐輪場に入った直後に大雨となった。
ゲリラ豪雨ではなく
翌日も普通に雨降りとなった。
しばらく悦子と会わなかったのだが
2週間ぶりに会った時は
『登山行けなかった』とか
『雨天決行でハードやった』とか
何も言って来ねえ。
それから、ホテルの方の
ハイキングイベントが決行された。
いい天気だったようで。
番長がフロントで
イベントの報告を総支配人と
話しているところに
たまたま通りかかったわし。
『自分の荷物10Kgに、お弁当と飲み物と
合わせて20kg背負って歩いた』
との言葉に目ん玉ひん剥いていたら
『重たかったでぇー(笑)
』
番長、強ぇー!!
素直に凄いと思った。
あ、そういえば。
『奈美さんは、そのイベント参加したんですか？山登りたい言ってましたけど』
番長『来てないで。別日に行こうと思ってたんやけど、雨降ったから流れたわ。』
あら、残念。
ハイキングイベント後に
悦子と出勤が被った日。
思い出したように
『登山雨でいけなかったー
』
急に報告してきた。
予定は流れたが
番長からはリベンジの提案はなく。
「この前流れて残念でしたね｣と
声をかけたら
｢あんた、結局行ってきたの？｣と
逆に聞かれ
｢未経験なのに、1人で行けるわけないじゃないですかぁ｣ということで。
リベンジ企画を自ら申し込んで
再度約束したらしいが。
それが決行されたのか、謎。
行ったかいかなかったか
私にはどうでもいい事で。
一応、いつ行くか聞いてた日は
いい天気だった。☀
本当に楽しかったら
何か言ってくると思うんだが。
多分、番長とプライベートで
ツルむことができれば
登山でもランチでもバンド活動でも
なんでもいいんじゃないかと思っている。
大きなサメにくっついてまわって
おこぼれを貰おうとしてる感が
否めない。