ほとんどの人がそうであるように

俺には赤ん坊の頃の記憶がない

大きくなってから聞かされた話でしかそれを知らない




おっきい猫が家にいて喰われるかと心配した

…の様な有り得ない話から

あんまり目が大きい子だから「山トンボ」みたいな子だって言われた

…みたいなチッチキチー話

しかし俺の回りにはチッチキチーな話が多い

俺は生まれた時から頭には全く毛がなかったらしい

「ツルンとむいた芋の子(里芋)みたいだった」と

当時の生えなさっぷりをみんなは振り返る

この状態は俺が一歳になっても変わらず、心配したお婆ちゃんは

近所からおまじないを聞いて来て試した




その日の夕方、オフクロが家に帰ると家中がニンニク臭かった

ただいまと抱き上げた俺から強くニンニク臭は出ていた

見ると禿げた頭が真っ赤になっていて臭い

お婆ちゃんが試したおまじないは、おろしたニンニクを頭と足の裏に塗る…

というものだったらしい

ニンニクの強い刺激で頭と足の裏は赤く腫れ、しばらく病院に通ったらしい




まじないが効いたのか、生える時期だったのか

やがて生えて来た髪の毛

35際になった今もフサフサ生えている




俺が一歳三ヵ月の春

弟が生まれた

ただの弟じゃない

とんでもない弟が生まれたのだった




7人という大家族になり

どたばたコントみたいな毎日が始まった