児童公園の入り口からパンダ遊具はよく見える。今日は天気がいいからちっちゃな子どもたちと、お家の人たちがたくさんいるみたい。
「ほらやっぱり。櫻井さん来てるじゃん。」
遊具のそばの木陰に立っている櫻井さんはかっこよくて。
カズくんがうれしそうに僕の肩を叩く。
「うん、思ったとおり。」
「え?」
「制服にメガネにスニーカー。
で、スマホじゃなくて本読んでる。」
「あ、ホントだ。」
「櫻井さんも、あの星占い絶対見てるな。
うんうん、OK」
何がOKなのかはわからないけれど、確かに櫻井さんは約束の10分前にそこにいた。
「じゃ、頑張ってね♡
報告楽しみにしてるから。」
カズくんはぱちん、とウインクをして立ち止まった。
『ねえねえ、あの子高校生よね。ステキじゃない。』
『だれかと待ち合わせかしら。』
『私が高校生だったらすぐにアタックするんだけど。』
お母さんたちの会話が聞こえる中を僕は櫻井さんに向かって歩いた。
…櫻井さんかっこいいからどんなひとも見ちゃうんだな。うーん、そっかぁ。
なぜかちょっぴり嬉しくなった。
「あ、相葉くん。」
「こんにちは、櫻井さん。お待たせしました。」
「いいや、待つなんて。」
本をぱたん、と閉じた櫻井さんは特上の笑顔を僕にくれた。
「さて、どこで打ち合わせしようか。」
「あ、ちょっとだけ歩きませんか。せっかくいい天気だし。」
「ああ、相葉くんのいい方で。」
はぁぁ、絶対かっこいい。
遠目からは制服に見えたけど、
ボタンダウンのシャツ
太すぎず細すぎないストレートのズボン。
きりっとしたメガネ。
どれもよく似合ってる。
「ん、相葉くんの服。いいね。
あ、もちろん着ている本人もだよ。」
「あ、これは…」
カズくんと選んだんです、と言おうとしてあわてて口を閉じた。
『オレと一緒に選んだとか言ったらダメだよ。
オレが櫻井さんににらまれちゃうからね。』
カズくんがそう言ってたのを思い出した。