浅い菓子鉢に薯蕷饅頭を盛り付ける。
つぶれないようにこんもりと。

お座敷で翔ちゃんが亭主としてお茶を点てるのは5人。あとの生徒さんたちはリビングの方で簡略化された茶会を楽しむ。と松本さんから事前に教えてもらった。


「雅紀くんにもお座敷でお客さまになっていただきたかったのですが、すいません。
そればかりか、お菓子の準備までしてもらって重ね重ね…」

松本さんに頭を下げられて僕は恐縮してしまった。

「いいえ、そんな気にしないでください。僕はキッチンにいるほうが楽ですし、
あ、そうだ。ええと、みやび野関係で来させてもらっているから、、、」

松本さんは一瞬ん?って顔をしてすぐに笑顔になった。


「そうですね。みやび野のご主人の名代ですから。
せっかくなのでリビングの生徒さんたちとお茶を。」

すっと手首をつかまれて
僕がかけていたカフェエプロンをするり、と外して
あれれれ、と考えるひまもなく
リビングの生徒さんたちの中に立たされた。


「今日のお菓子はみやび野さんの薯蕷饅頭です。息子さんが持ってきてくれました。」

「あら、やっぱり。」
「美味しいと思ったのよ。さすがみやび野さん。」
「ほんとに今日のお茶に合うわよね。息ぴったりって感じ。」

生徒さんたちは僕の顔と薯蕷饅頭をかわるがわる見てたくさん褒めてくれた。

「あ、ありがとうございます。」


僕がお礼を言うだけで精一杯であたふたしているのを松本さんは数歩下がってにこにこ頷いていた。