…知らなかった。


いいや、知っていたけど。
知ってることは氷山の一角で

松本とトウマ先生がこんなふうに将来を誓い合っているなんて。
そんな雰囲気はなかった。



「そんなに驚かれては…私の演技力は高いと行っても良さそうですね。うれしいハプニングだなぁ」

松本は指輪をす、となでてまたお茶を飲んだ。


「トウマがペアリングと言っていましたから、たぶん彼も同じものを持っているんでしょう。
誰もいないときにひとり笑っているなんてシュール過ぎますか。」

にこにこにこ。
松本の笑みが広がった。



これだけ近くにいて全然分からなかったふたりの付き合い。
松本は素っ気なく話をしているけれど、顔を見れば嬉しそうで。

オレたちもこんなふうにならなきゃいけないのかな。
周りに祝福されるように
それには時間が必要で
軽はずみなことはしないで
壊れないように


松本とトウマ先生みたいに。


「いいお手本とは言えないですけどね。私とトウマは。
明日になったらこの指輪を突き返しに行くかもしれない。」

「サイズが違うから調整しろ、と?」

「あはは、どうでしょうね。」




その後松本は雅紀とオレに
お菓子を頂いているから多くは作りませんねと軽い昼食を準備してくれた。

昼食のあとは雅紀はすぐに帰るといい、オレもそれに賛成して途中まで送っていった。
ハグもキスもなしで。