「僕の部屋に…」
ほとんど初めて触(ふ)れるまーの手は
温かくてたおやかで、力強かった。
ーぱた、ん
まーの部屋に入ってドアが閉まってすぐに
「…翔ちゃん」
まーは小さく呟いて
「おねがい、翔ちゃん。
今日じゃないともう、間に合わない」
ふわりとオレの前に来て
「翔ちゃん、僕を…僕を開いて」
オレの胸に顔をうずめた。
「それで、お姉さんは私になんの話が?
翔くんも禿(かむろ)たちも席を外させて」
「うふふ、大人の時間だからね。あの子たちにはまだ早いのよね。」
「…櫻井のお姉さん、はぐらかさないでください。」
「あら、ごめんなさい。
単刀直入に言うわ。みどりちゃんを翔にちょうだい。」
「え?」
「今すぐじゃなくても構わない。みどりちゃんの水揚げを翔に。」
「どうして翔くんに?どうしてお姉さんが?
それは過保護ってものじゃぁ……」
「分かってるくせに。
敢えてほんとの名前で呼ばせてもらうわ。
潤くん、あなたはみどりちゃんの水揚げはできないのよ。」
「……」
「みどりちゃんは本能みたいなもので翔とつながってる。
あなたはみどりちゃん、」
「実の弟とはできない。それは禁忌よ。籬でもハナマチでも今の時代でも」