マスターが作ってくれた料理は美味しくて
翔さんが選んでくれたワインもよく合って

昼間の話をしながら心地良い時間が過ぎていく。


「わ、すごく美味しい。」とオレ。

「んふふ、カサゴのアクアパッツァです。」とマスター。

「南の島の釣果ですか?」と翔さん。


マスターも控えめに会話の中に入ったりして、オレはなんとなくうれしくて

食後のジェラートが来る頃にはふわふわした気分になっていた。








「翔さん、すごくいい気分です、もう少しだけ一緒にいてもらってもいいですかぁ?」

雅紀の瞳がとろんと潤んで、頬がほわっと赤くなって
言葉がこぼれる唇の色味も鮮やかになってる。


美味しい料理と美味しいワイン。
おまけに目の前の雅紀がほろほろ可愛らしく酔っている。

―くふふ、ん

ほろ酔い加減の天使ちゃんの笑みがオレを取り巻いていく。
…昼間の「本格的な」キス未遂の後だからものすごく意識する。
当の本人の雅紀は酔ってるのを気づいているのか、オレの手に触れてくる。


「しょ、うさん、オレ、翔さんが好きになったみたいです。」

お、おおお?


「今日、翔さんといてすごく楽しかった」

うん、うんうん


「けど、」

けど?


「翔さんとキスしたかったです。でもしてくれなくって……」

うるるんな瞳がオレを捉えて


「翔さん、してくれますか?オレに」


「……雅紀?」

「ここで。ここなら外から他から見られることないでしょう?」

ん、と目を閉じる雅紀
確かに他から見えにくい席ではあるけれどそれでも100%ではないから


「ここで?いいの、雅紀?
向こうのテーブル、お客さんいるよ。マスターだって…」

嘘じゃなくて本当に客がいるから
マスターもすぐ近くに

と、カウンターの方を見たらマスターとばっちり目が合った。

ーーにっこり。

マスターは笑って頷いた。


酔った天使ちゃんにねだられれば怖いものはないはずなのに
マスターだって応援?してくれてるし




―まさき、