スマホを取り出して
大事な人の番号をタップする

『あ、翔ちゃん………』










あのひとは
自分の夢をオレに語って
それから

ふうってため息をついて

それから


オレの懐に入るみたいに
すうっと寄り添って

「雅紀、これで最後だ、から」


あのひとらしくない声で

「上に部屋を…」








ふたりで一緒に暮らしていたときは
お互いが若くて
輝いているときで

オレはあのひとに選ばれた気がして
全部委ねることもできて
それが
あのひとへのアイだと思ってたから


っ、雅紀………

んっくっ…ヒ、デア…キ



10代の
アオイアオイ時間の中で
オレは十分満足だったから









なつかしい彼の
においとあたたかさとやわらかさと
ワインの香りが
オレにまとわりついて


オレは
そのカラダを引き寄せることに
何の躊躇も感じなかった