「朝からあまり感心しないなw」



先輩はずぶ濡れで、自転車のサドルのはみ出たかばんを片手に笑っている。



「おっ、おはようございます。先輩!」 


「かなりずぶ濡れですよ、しかもなんでサドルが…大丈夫ですか??」



先輩は会社の近くに住んでいるわけではないが自転車で通勤している。


毎日、自転車で通うことでバスケのために足腰を鍛えているのだ。


バスケの事となるとストイックなのだが…




「お~、途中までチャリで来たんだわ、でもこんな豪雨なると思わなくてさ~」


「ビショビショでかなり寒いし、もうすぐ会社だけど電車に切り替えたんだわ」


「そんでサドルはチャリ盗まれたくないから持ってきた!」


「チャリで一番大事なパーツはサドルだからな!」


「サドルがないチャリは可愛そうだから盗まれないし!いい考えっしょw」



体育会系のストイックさを見せつつ、かなりのお笑い気質…このキャラのギャップ。


僕もついついノリを合わせてしまう。




憧れの先輩ながらバスケも普段も僕とはいいコンビなのである。




「今、先輩のチャリ盗んだら立ちこぎ専用ですね!」


「そうだな、ずっと立ちこぎは意外ときついぞ~」


「渡部との1on1くらいきついわ…最近渡部のドライブ早いからな~」


「ってか、そうだ今日バスケの日だぞ!もちろん来るんだろ?」


「はい!行くに決まってるじゃないですか!」


「趣味、喧嘩とナンパですから!」


「でた渡部のそれ!趣味、喧嘩とナンパ!」


「嘘ですw趣味バスケですって!」


「知ってる!ってかその子ナンパしてる途中だったな、すまん!すまん」




僕と先輩のたわいもない会話の最中、さっきまで黙っていた彼女はクスクスと笑っていた。




(うわ!!笑った顔もいい!!!いいタイミングで先輩が来て、彼女の笑顔見れて、やっぱりこの流れ…)



「あっ、この子はさっき会ったばっかりなんですけど、今日からうちの会社に派遣で来る朴さん」


「韓国から来たんだけどもう6年くらい日本にいて、あと…あとはまだ聞いてないっす」




「はじめまして、今日からB.E.Mでお世話になります。朴と申します。」




「へ~うちの会社にくるんだ!渡部の先輩で小田切です!」




「あの~、話しを聞いていたら気になったんですが…」


「お二人ともバスケをしてらっしゃるのですか??」



彼女は笑顔で問いかける。



「私、バスケ大好きなんですよ!」





僕は正直驚いた、こんなことがあるなんて。





「やるな~さすが渡部!ナンパした子がうちの会社に派遣で来るなんてさ、しかもバスケ好き!」
「すごい偶然じゃん!」



先輩のフリはバスケの時のパスと同じく、鋭く、そして唐突である。





「先輩、偶然じゃないっす!きっと必然っすよ!」






そのパスを受け取るように、ついつい思っていたことを言ってしまった。


あせっていたわけじゃない、ぼくの思いは確信に変わっていた。





ちょうど、電車は僕らの降りる駅につく頃だった…




つづく