「となり。いいですか?」
「え?」
彼女は驚いた様子だった。
当然だろう。僕はさっきまで彼女の目の前に座っていた。
席に不自由することなく。
彼女からしてみればまるで意味が分からない、怪しい人間に見えるだろう。
沈黙が2分程続いた…
「あの…」
「あの…」
「!?」
「い、いや、どうぞ!」
驚くしかなかった。
こんな怪しい僕に彼女は話しかけてきた。
しかも僕と同じタイミングで声をかけてきたのだ。
慌てた僕はとりあえず「どうぞ」と言うしかなかった。
「あの…もしかしてB.E.Mの方ですか…?」
「は…はい…」
(株)B.E.Mは僕が勤める会社の名前だ。
しかし彼女が何故…?
僕は首から会社のID証をぶらさげていることにやっと気づいた。
「はじめまして。私、今日から派遣でお世話になります。朴 陽姫(パク ヤンヒ)と申します。」
「あ…あぁ…そうなんだ。…はじめまして。渡部 高男と申します。」
(ラッキーー!!!)
心の中でガッツポーズをとった!
まさか僕の会社に派遣で来るとは!
「仕事で分からないことがあったら何でも聞いてください。」
「はい・・・ありがとうございます。」
・ ・ ・ ・ ・
「朴さんは韓国の人?」
「はい。でももう日本に来て6年になります。」
「そっか・・・」
・ ・ ・ ・ ・
また沈黙が続く・・・
(このままじゃだめだ!)
僕はとにかく話しかけた。
というか質問をし続けた。
「なんで日本に来たの?」
「父の仕事の関係で・・・」
「韓国はどんなところ?」
「とても素敵なところですよ。」
「ウチの会社を選んだのは何故?」
「条件がよかったから・・・」
「歳はいくつ?」
「・・・」
「どこの部署に入るの」
「・・・」
彼女は黙りこくってしまった。
朝からこんな質問攻めにあっては、当然だろう。
しかし、僕は質問を止めなかった。
止めたくなかった。
すこしでも彼女のことを知りたかった。
「朝からあまり感心しないな。」
「あ・・・」
そこにいたのは会社のあこがれの先輩で、僕を自分のバスケチームに誘ってくれた
小田切 丈二(オダギリ ジョージ) (29)
だった・・・
つづく