The Changing Face of Survival in Rett Syndrome and MECP2-Related Disorders.
Tarquinio D C et al., Pediatric Neurol. (2015) vol. 53, pp. 402-411


<結果>(つづき)
 典型的、及び非典型的レット症候群患者で、心電図データのある合計613名についてQT間隔の補正値であるQTcは、以下のとおりだった。


ボーダーライン(451~470未満) 18%
異常     (470以上)    10%


 ボーダーライン又は異常値を示した者の割合は、調査期間終了時点で生存していた患者群の中では約29%であるのに対し、調査期間中に死亡した患者群の中では、21%だった。


 調査期間中(満了時)における生存/死亡と補正QTc値との間に有意差は認められなかった。


(感想)
 レット症候群患者は突然死により死亡するリスクが一般人よりも顕著に高いこと、QT延長症候群を呈する者の割合が有意に高いことから、両者を結び付けてQT延長がTdTなどの不整脈の原因となり、突然死をもたらす可能性があると指摘されている。


 しかしながら、今回の調査の結果だけを見ると、調査期間中の死亡例ではむしろQT延長傾向を示した患者の割合が(調査終了時点で存命であるQT延長傾向を示した患者の割合より)低めであるということになるので、前記仮説とは直接結びつかない結果と言えるかも知れない。


 そうは言っても、この結果はQT延長がレット症候群患者の突然死と関係ないことを意味するものではない。


 実際にQT延長を認める患者においては、当たり前ではあるけれど、それがレット者であるか否かを問わず、注意が必要であるということ。そして、注意を要する者の割合は、レット症候群患者集団の中の方が、一般集団の中よりもはるかに高いということもまた疑いのないところだ。


 うちのなの子の場合はQTc値がボーダーラインといったところなので、QT延長症候群という診断名がつく程ではないレベル。気になるけれど、経過観察以上のことは何もしていない。


 なお、本論文ではQTcが451とか470とかいう値で示されているので、QT間隔を秒単位ではなくミリ秒単位で扱っている。一般には秒単位で扱い、QTc値も0.451とか0.470などと示されるケースが多いように思う。


 QT間隔の補正式は本論文に示されていない。QT時間の実測値をRRの1/2乗で割るBazettの式か、1/3乗で割るFredericiaの式のいずれかであろうが、どちらかははっきりしない。


 頻脈の場合は補正によってQTc値が大きめに出てしまうので、心拍数に影響を受けにくいFredericiaの式で補正するのが適切と言われている(年少の児童は一般に頻脈)。日本小児循環器学会は、心拍数の早い小児でのQT時間補正に同式の採用を推奨している。