野坂昭如原作、火垂るの墓を知らない人はいないだろう。戦争の悲惨さを伝える涙無くして語れないストーリーだ。
父は戦死し、母は空襲で無くなり、妹の節子も死んでしまい、浮浪児となってしまう。

この様な浮浪者生活を行う戦災孤児達は、当然、生きる為に、食べる為に、犯罪行為に走ってしまう為、治安悪化の一因とされていた。

ここで、成立したのが、児童福祉法である。つまり、児童福祉法は、治安悪化の原因となる浮浪児達を街から一掃する目的であった。子供達を想い、助ける為というよりは、街をキレイにする為という思惑から成立した、犯罪者収容の匂いがする制度である。

そういった、浮浪児達を収容する施設が、児童相談所の一時保護所の前身であり、収容する為の法律が元となっているのが、児童福祉法第33条の一時保護である。この様な背景がある制度の為、児童の人権保護が疎かになっている。

浮浪児収容施設に空きができたので、その穴埋めに使われたのが、児童虐待である。つまり、虐待を受けた児童を施設に強制収容できる様にしようとなったのだ。

児童福祉法第33条が不自然に強権である理由、一時保護所が刑務所以下である理由は、こういった歴史背景があるからである。

火垂るの墓で涙する事があれば、ぜひとも、児相の一時保護所に収監されている子供達の事を思い出して欲しい。保護所内では、死刑囚よりもひどい権利しかないのだ。
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