おはようございます

なかなか記事をアップ出来なくて

すみません。

それでもアクセスして下さって

ほんとうに感謝・感謝です！

さて私たちがあんまりスローモーなので

チャイルドライン１期生の会員さんから

創作ストーリーが送られて来ました。

耳を澄まして聴くことの大切さを

テーマに書かれたそうです。

タイトルは

「ふんわりサンドイッチ」

なんだかおいしそうですね。

「コーヒーブレイク代わりにお読み下さい」

と作者からのメッセージです。

【みみをすます　第１話】

つぐみ

小さな町の、小さな公園に
小さなサンドイッチ屋さんがあります。

店主は

ピンクの蝶ネクタイが似合う男の人です。

そこに

白い帽子をかぶった

女のお客様がやって来ました。

卵と、ツナと、ハム、ひとつずつください。

いらっしゃいませ。お持ち帰りですか？

ここでいただくわ。さくらがきれいだから。

はい。花のいい香りがしていますね。

え、さくらって匂うんですか？

目をとじているとわかりますよ。 ……あれから、お子さんはどうしていますか？

あ、おぼえてくれてたんですか。

はい。いちどいらしたお客さまの声は。
　　先月の……春一番が吹いた日でしたね。

わぁ、すごい記憶力！　おかげさまで、あの子もしゃべるようになりました。少しですけど。

そうですか。よかったですね。

あの日はごめんなさい。子どものグチばかりいって。
　　でも、なぜかしら？　あなたの声を聞いていたら、胸にたまったモヤモヤがひとりでに口からあふれ出したみたいで……。

きっと、春風がそんな気にさせたんですよ。

さっきから、そうして下を向いて調理してるでしょ。でも、わたしの話をちゃんと聞いてくれてる、ってわかるの。
　　あの日もそうだった。うまくいえないけど……言葉がすーっと吸い込まれて行くような感じ　　がしたの。

わたしには、聞くことしかできませんから。

あの時はまだ、あの子が学校でいじめられてるなんて知らなかったの。

　　優太、あ、子どもの名前です。優太なんにも　いわないから……。

　　それで、だんだん口数が少なくなって、なにもしゃべらなくなった。
　　それなのに、わたしったら怒ってばかり。
　　なんでだまってるの？　返事は？　なにかいってよ、って自分の気持ちばかりぶつけて……だめなお母さんでした。

それは……たいへんでしたね。

でも、大切なことをあなたから教わった。

え、なにをですか？

きちんと話しを聞くこと。
　　手はふさがっていても、耳はあいている。そうですよね？

わたしは、ただ聞いていただけですよ。

そう。だから胸にたまった気持ちを外に出せたの。
　　あなたが、だまってても背中いっぱい耳になって「ちゃんと聞いてるよ。話してごらん」ってはげましてくれてたから。

ははは。エスパーみたいですね。
　　はい卵、ツナ、ハムサンドおまちどおさま。

ああ、わたしの魔法のサンドイッチ！

え？　パンも中身もふつうの材料ですが？

ええ……あの日も、グチを聞いてもらったらお腹がすいちゃって、そこのベンチで食べたの。おいしかった。

　　こころがふんわりサンドイッチされるみたいな、やさしい味だった。

初めてです、そんなふうにほめられたのは。

お声のせいもあるんでしょうね。なにをいってもふんわりと受けとめてくれるような……。

　　それでね、このふんわりサンドを食べてたら「ああそうか！」ってわかったの。
　　わたしは優太の声ばかり聞こうとして、ちっとも気持ちを聞こうとしなかったんだ……って。

　　だから、これからはどんなにいそがしくても、優太の気持ちを聞いてあげよう、こころをふんわりサンドイッチしてあげようと思ったの。

いいお母さんじゃないですか。

ありがとう。でも、どうすればあなたみたいに、こころをサンドイッチしてやれるのかわからなくて……。

　　ねえ、どんな魔法なの？

ははは。そんなものなにもありませんよ。

そうかしら。あなたは聞いているだけなのに……しぜんに話したくなる。
　　話しおわるまでだまっているのに……こころがふんわり包まれる。
　　これって、やっぱり魔法じゃない？

ただ耳をすましているだけですよ。

ただ耳をすますか……。
　　そうね……それが魔法かも……。
　　あら、鳥が鳴いてる。

ええ、さきほどから。ツグミかな？

あっ、こんなに近く。ほら、そこ。
　　さくらの枝にとまってる。

頭に白い縞模様が見えますか？

え？　あるある、眉みたいな線が。

やっぱり。
　　あまり鳴かない冬鳥で、口をつぐんでいるからツグミというんです。

へえ、くわしいんですね。ツグミか……。

でも、春になって北へ渡るころになると、ああしてよく鳴くんです。

あ、飛んだ、となりの木に。見て、あそこに。

………………。

え……………？

みなさん、目が見えると思ってるようです。

……ごめんなさい。気がつかなくて……。

また鳴いてますね。
　　「春がきたよ。渡りの時期だよ」って仲間に知らせてるんです。

優太も、外の世界に渡っていけるといいなぁ。

きっと飛べますよ、おかあさん！

うん。
　　 ……さくら…とてもきれいですよ。

ええ。春のやさしい匂いがしています。

小さな公園に、小さな風が吹いて
サンドイッチ屋さんの周りで

さくらの花びらが
ふんわりふんわり、おどっていました。

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