音楽から感じ取る情景というのは、どれぐらい個人差があるものなんだろう。
歌詞のある音楽であれば、それはその歌詞にどの程度の具体的描写があるかによって変わるのかも知れない。
ヒットした曲や好きな歌を聴いて想い描く情景、切なくなる感情は人によってまったく違うのだと思う。
それは、自分の感情や経験が、ある意味都合よく歌詞を解釈をして、自分の世界を描くからだと思う。
そして音楽だけではなく、小説でも同じことがいえると思う。
映画とか落語はちょっと違う。
その境界線は曖昧だけれど、それらは作り手が意識して情景を伝えることに重きをおいていると思うから。
学生の頃はTKブームで、僕も例に漏れずずっと聞いていた。
好きだったのが、globeの「Can't Stop Fallin' in Love」
“踊る君を見て恋がはじまって”
“あなたの髪に触れ 私ができること”
“なんだかわかった”
この「踊る君」。
僕の中ではずっと気品あるパーティでのバロックダンスを想像していた。
でも、今朝電車の中で聴いていた時、これはもしかするとクラブでの激しいダンスなのかも知れないと思った。
答えはきっとT小室にしかわからないのだろうけど、自分が勝手に想像していた世界を否定すれば、また違った印象に聴こえる。
僕の好きな曲の1つに、ZARDの「心を開いて」がある。
“ビルの隙間に二人座って”
“道行く人を ただ眺めていた”
“時間が過ぎるのが 悲しくて”
“あなたの肩に 寄りそった”
この「ビルの隙間」は、平日昼間の東京か横浜、人がせわしなく行き交う街の中の狭い路地。
二人はまだ二十歳そこそこで、男の方はラフな格好で挑発。
女性の方も地味な服装に薄めの顔。
僕的にはそれ以外あり得ないんだけど、とはいえ、歌詞全体を見て考えると絶対に違うような気がする。
だけど、どうしたって曲のその部分を聴く度に、その状況が浮かんでくる。
他人がある曲を聴いて、一体どんな情景が思い描くのかにとても興味がある。
どんな曲でもいい。
自分の世界との違いを知ってみたい。
だから誰かに訊きたいんだけど、大体、「何言ってるのこの人?」みたいな、ぱるる並みの塩対応。
「別に。」みたいな、沢尻エリカもいる。
「わざわざ情景なんて思い浮かべませんけど?」的な。
そんなものかなぁ
僕はどんな曲に対してでも、聴けば自分なりの世界を創ってしまうんだけど、みんなそうではないのかな。
僕もいつか、周囲から望まれない恋愛をして、
都会のビルの隙間に二人座って、道行く人をただ眺めていたい。
だけど残念ながらそんな歳でもないし、そんなことを一緒にしてくれる人なんてそうそういない。
そつなく踊る姿を見て恋に落ちたいけれど、一体どこに行けば君は踊っているのか。
小室Tはこの歌詞を描く時、実際に「踊る君」を想像していたのか。
世の中には色んな曲が溢れていて、よくそんなフレーズ思い付くなって思うものはたくさんある。
この「踊る君を見て 恋がはじまって」は、割と普通のフレーズのようで、実際はあり得ないというか、少なくとも自分の人生からは発想できない。
本当に、君はどこで踊っているの。