24歳ぐらいの頃。
悲しいことに、もう8年近く前の話。

色々と勝手な言い訳を付けて、不都合な事態からすぐに逃げ出そうとしてた甘々の僕。
何から逃げ出したかったのかは忘れたけど、とにかく仕事に行きたくなかった。

当時の僕は猛烈にその状況の過酷さをアピールすると思うけど、十中八九、大したこと無い。
今なら歯牙にもかけないような理由で、鬱だ鬱だと叫んでいたに違いない。
今でこそ克服したが、その頃は強迫性障害というわけのわからん病気に苦しんで、少なくとも精神が安定していたとは言い難い。
まぁ、とにもかくにも、青二才のケツの青い青ひげ野郎だったわけさ。

その当時付き合っていた女の子がいたのだけれど、その子には求婚されるほど好かれていた。
申し訳ないが、僕はそんなに好きじゃなかった気がする。
とは言いながら、その子を自転車の後ろに乗せて、一時間弱かかる道程を送っていたのだから、僕の偽善と虚栄心も有刺鉄線入りだ。
しかも坂道。
さらに言うと、その子は下手したら60キロはあったのではないだろうか。
今となってはそのポンドを確かめる術は無いが。

その子に、何気なく仕事に行きたくない話をしたのさ。
そしたらその子はこう言った。
「病院行って、適応障害の診断書貰って辞めたらいいやん。」

Good idea!!

次の日、僕は仕事に行かず内科に行った。
内科に行き、適応障害の診断書をくれと言ったら、傲慢かつ肥満な医者に50分間説教された。
今思えば、あれが僕の人生で一番長い説教かも知れない。
何一つ覚えていないが。

50分間耐え抜いて診断書をゲットした僕は、仕事に行かなくなった。
行かなくなったのは良いが、金がない。
多分、一ヶ月も経たないうちに、また働き出したと思う。
馬鹿だ。

正直、その子にさっきの言葉を言われた時、僕は救われたと思う。
そんなことを言われると思っていないから。
普通は励まし、良くて同調、悪ければ非難の上、説教も覚悟する場面だ。
まさか、具体的なアドバイスをいただけるなんて。
よくよく聞くと、その子自身も仕事に疲れ、病院に行き、適応障害の診断書を貰って辞めた経緯があったらしい。
とは言え、適応障害の診断書を貰うために病院に行ったのでは無いと思うが。

あの時あの子と結婚していれば。
そんな妄想は良くするが、もしその子と結婚していたら…。
その子には申し訳ないが、僕はくだらないクズと成り果て、ド底辺の生活を送っていたに違いない。
パラレルなIFに100パーセントは無いが、まず間違いなく明るい未来は無かったと思う。

末っ子の僕は、甘やかされて育ってきたのだ。
こんな甘くない世界で、中途半端に甘やかされたら、勘違いしたまま、周囲に疎まれ、ロクな人生を歩まなかったに違いない。

馴れ合うことができるのは素晴らしいことだけれど、馴れ合って解決するような事は、端からどうでもいいのだ。
馴れ合いではなく、解決策を上から目線で叩きつけるような人の方が合っているのかも知れない。
そりゃあ、日銭に困らないのなら、甘やかされたまま死んでいきたいが。

元気にしているだろうか。
恐らくもう二度と会わことはないが、幸せな日々を送っていることを切に願う。