「なぁ、誰か女の子紹介してくれへん?」

「はぁ?」


はぁ?である。


もう五年は会っていない昔の友人からの突然の電話。


「はぁ?」には二つの意味がある。

一つは、突然電話をかけてきて、用件がそれであること。

だいたい、昔の友人と書いたが、もともと友人と呼べるほど仲が良かったわけではない。

二人で遊んだ記憶も一度しか無いし、価値観もまったく合わなかった。

僕は言わずもがなブラックネガティブな「陰」の人間だけど、彼は間違い無くハイパーポジティブな「陽」の人間だった。


二つ目の意味は、『なぜ、君に女の子を紹介しないといけないのか』ということ。

それは、仲が良いとか悪いとか、好きとか嫌いとかそういう問題では無く。


僕が知っている彼は、少なくとも女の子に困るような男では無かった。

「女の子なんか、クラブ行けば選びたい放題やろ?」

なんてほざいていたくらいなのだ。


実際、彼は綺麗な顔立ちをしていたし、背も高いし、女の子の前では気の利いた話もできる。

少し違うけど、チャラ男に近い。

当時連れていた女の子も、だいたい派手な感じの子が多かった。

朝までクラブで踊り明かすぜ!

みたいな感じ。


なので、仮に僕がその気になったとしても、紹介できるような女の子はいない。

だって「陰」なんだもん。

「陽」の女の子の知り合いなんていない。

そしてそれは、彼だって知っているはずだ。

それを踏まえての「はぁ?」である。


でもね、一応ね、聞いてみるわけさ。


「どんな女の子?」


一体僕に、どれくらいのレベルを求めているのかにも興味があった。


すると、である。



「なんでもいい。」



なんでもいい?

いやいやいやいや、何を仰るんですか。

あなたは昔、

「女の子なんて探さなくても見つかる。」

とか言ってたじゃないですか。



僕はね、ちょっとだけ興味が湧いてきて、少し話を聞いてみる気になっていた。

途中で鬱陶しくなったら、すぐに電話を切るつもりで。

もちろん、女の子を紹介する気なんて毛頭無い。


ただ、何となく面白そうなかほりがした。