純ちゃんはお母さんと二人暮し。
彼女が入院している間は、かつて5人で住んでいた大きな家におばさん一人になる。
ずっと出張が多かった純ちゃんは、「また海外出張にでも行っていると思って」とおばさんに言って病院へは一切来させない。
その代わり、なるべく家に帰るようにしている。

―― これは最近、知ったこと。
「パジャマ姿の娘の印象ばかりがお母さんの記憶に強く残ってしまったら、
わたしがいなくなったあとお母さんがつらくなるでしょう。
だから病院には来ないでもらって、なるべく自宅で普段どおりの自分の姿を見せてあげたいの」。――


自分が苦しんでいる姿を親に見せたくない。心配かけたくない。
ここまでだったら、想像はできた。
でも、そんなことまで考えられる人って、この世にどのくらいいるんだろう。


純ちゃんの愛は偉大。
名前の通り、純粋すぎるくらいに人を思いやれて、誰に対しても平等に接する。
それがあまりにできすぎているから、誤解もされる。嫉妬もされる。
「計算づくなんじゃないか」
そんな心無いことを言う人もいる。


ただでさえ、病魔に蝕まれ体は傷ついている。苦しんでいるの。
だから。

だから、もう誰も、純ちゃんの心まで傷つけないで。